恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

救助

「待ってください！どうしてトリケラトプスを捕まえるんですか？！」

　俺はトリケラトプスを背後にかばうようにして立ちながら叫んだ。目の前の男たちは皆屈強でガラが悪そうだった。

「ああ、ガキ。どっから出てきた？邪魔だ、どけ」
　　
　男がにらみをきかせる。ガキと言われても俺は二十歳を超えている。俺は恐怖心を悟られないようににらみ返した。

「おい、ガキ！早く失せろ！早くしないとツノリュウが魔法を、」

　別な男が焦った声をだす。魔法、といったのか。だが何をされようとも、俺はトリケラトプスの側を離れるつもりはなかった。

　俺はひたすらトリケラトプスを捕獲しようとする男たちをにらみ続けた。突然俺の足元から、ニョキニョキと植物のツタが生え出してきた。

　その数は無数で、ツタはまるで意識があるように伸び、男たちと馬をからめとった。俺はぼう然とツタの猛攻を見ていた。

『お前、おいらの背中に乗れ！』

　俺の背後で声がした。子供のような可愛らしい声だ。振り向くと、トリケラトプスがキラキラと綺麗な瞳で俺を見つめていた。

「えっ？今の声、君がしゃべったのか？」
『そうだぞ！早く！おいらの背中に乗れ！』

　トリケラトプスは首をブルンと振るうと、ツノにひっかかっていた縄を振り落とし、俺の前にしゃがみ込んだ。

　俺は言われるがまま、あたふたとトリケラトプスの背中にまたがった。

『しっかりつかまってろよ？！』

　言うが早いか、トリケラトプスはもうぜんと走り出した。あまりの速さに俺は振り落とされそうになり、必死になって頭部のフリルをつかんだ。

　トリケラトプスは、俺を背中に乗せたまま、森の中に飛び込み、ものすごい速さで走った。今にも大木に直撃しそうで、俺は恐ろしさのあまりきつく目をつむっていた。

『もう、いいぞ？』

　可愛い声に、俺はゆっくりと目をひらいた。身体が恐怖にブルブル震えている。俺は崩れ落ちるようにトリケラトプスの背中から降りた。

『ありがとな！お前、おいらの事助けてくれたんだな！』
「いや、当然の事をしただけだよ」
『うふふ。兄ちゃんの言う通りだ。ヒト族にもいい奴はいるんだな。おいらトップって言うんだ。お前はなんて名前だ？』
「俺、俺は友坂英二」
『トォモシャエジ？長い名前だな？』
「エイジ、エイジって呼んでくれ！」
『おう！エイジ！よろしくな！』

　トリケラトプスのトップは嬉しそうに言った。

　この時になって、俺は今の現状を実感できるようになっていた。

　俺は、憧れのトリケラトプスの背中に乗って、自己紹介してる。俺は嬉しさのあまりちょっと泣いた。