恐竜世界に転移した俺に懐いたちっちゃ可愛いドラゴンたちが最強だった

盛平

文字の大きさ
45 / 45

ファミリア対ボルケーノ2

しおりを挟む
 二回戦はケロンだ。ケロンは俺の胸ポケットの中で震えていた。

「ケロン、大丈夫か?」
『ボク、戦うの怖い』
  
 心配する俺に、ケロンはつぶらな瞳で見上げて言った。

 ケロンが怖がるなら無理にダイナソーバトルに参加させたくない。だが俺はケロンのがんばりをずっと見てきた。

 今回の魔法の特訓は、ケロンとジュエルに魔法に慣れてもらう事が目的だった。

 ジュエルはチャキチャキした性格で、魔法の覚えが早かった。

 ケロンはおっとりした性格で、魔法の習得には時間がかかった。だがケロンはどんなに時間がかかっても特訓を続けた。

「ケロン。もしケロンが危なくなったら、俺が責任を持って試合を止める。だから、試合に勝つんじゃなくて、試合を楽しんでほしいんだ」
『試合って楽しいの?』
「ああ、もちろんだ。ケロンは魔法の特訓、楽しくなかったか?」
『とっても楽しかった!おにごっこ好き!』
「だろ?ダイナソーバトルも同じだ。ケロンはあのおじちゃんと鬼ごっこして遊ぶんだ。できるか?」
『うん!やる』

 ケロンは嬉しそうにうなずいた。俺もうなずいてケロンを胸ポケットから出し、腕のリボンを外した。

 俺の手のひらに乗るくらいだったケロンの身体がぐんぐん大きくなり、元の五メートルの大きさになった。

 ケロンは水魔法で自身の身体を包み、ふわりと空中に浮き上がった。

 ケロンの対戦相手はモササウルス。体長十六メートルはあるだろうか。

 モササウルスも自身の身体の周りに水魔法をまとって空中に浮いている。

『ふん!チビめ。お前なんざすぐにけちらしてやる』
『そうはならないよぉだ!ボクはおにごっこ得意なんだもんね!』
『む!チビ!おにごっことは何だ?!』
『教えてあげないよぉだ』

 ケロンはそう言うと、キャァと笑い声をあげて、闘技場内を飛び回った。モササウルスが慌ててケロンの後を追いかける。

 おいかけっこは小さなケロンが有利で、モササウルスは巨大な身体で四苦八苦しながら追いかけている。

 変わらない状況に、しびれをきらしたモササウルスが水攻撃魔法をケロンに放った。鋭い激流は、一直線にケロンに向かって襲いかかった。

「ケロン!水防御ドーム!」
『はーい』

 ケロンはトップとスカーとの鬼ごっこ通り、素早く防御魔法で身を守った。

 モササウルスは頭に血がのぼったらしく、グキャァと奇声をあげながら血まなこになってケロンを追いかけてきた。

「ケロン!水竜巻!」
『わかった!いっくよぉ!』

 ケロンはモササウルスに向けて水攻撃魔法を放った。ケロンの編み出した強力な攻撃魔法だ。水の竜巻を作り出して、相手を上空までふっ飛ばしてしまう。

 スカーはケロンの水竜巻に当たり、空中に投げ出されてしまった。ジュエルが風浮遊魔法でキャッチしてくれなければ危ないところだった。

 ケロンの強力な水竜巻は、モササウルスを巻き込んだ。モササウルスはグルグルと回転し、上空高くに打ち上げられてしまった。

 モササウルスは気絶してしまったのだろうか。身体をおおう水魔法は解除されている。このまま地面に激突すれば危険だ。

「ケロン。あのおじちゃんがケガしないように受け止めて!」
『はぁい』

 ケロンは水魔法で巨大な水のかたまりを出現させた。モササウルスは水のかたまりにドボンと着水した。

 ケロンが水のかたまりを解除する。モササウルスは気絶したまま闘技場のど真ん中で伸びていた。

 先ほどジュエルが倒したケツァルコアトルスが風浮遊魔法でモササウルスを運んでいく。

 ボルケーノの連中は嫌な奴らだが、仲間の事は大切にするようだ。

 レフェリーが大声でケロンの勝利を宣言した。
 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

宍戸亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

ハズレスキル【地図化(マッピング)】で追放された俺、実は未踏破ダンジョンの隠し通路やギミックを全て見通せる世界で唯一の『攻略神』でした

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ちだったユキナガは、戦闘に役立たない【地図化】スキルを理由に「無能」と罵られ、追放された。 しかし、孤独の中で己のスキルと向き合った彼は、その真価に覚醒する。彼の脳内に広がるのは、モンスター、トラップ、隠し通路に至るまで、ダンジョンの全てを完璧に映し出す三次元マップだった。これは最強の『攻略神』の眼だ――。 彼はその圧倒的な情報力を武器に、同じく不遇なスキルを持つ仲間たちの才能を見出し、不可能と言われたダンジョンを次々と制覇していく。知略と分析で全てを先読みし、完璧な指示で仲間を導く『指揮官』の成り上がり譚。 一方、彼を失った勇者パーティは迷走を始める……。爽快なダンジョン攻略とカタルシス溢れる英雄譚が、今、始まる!

男女比1対5000世界で俺はどうすれバインダー…

アルファカッター
ファンタジー
ひょんな事から男女比1対5000の世界に移動した学生の忠野タケル。 そこで生活していく内に色々なトラブルや問題に巻き込まれながら生活していくものがたりである!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...