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イブ
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兼光はうんうんと一人でしきりにうなずいてから、結に言った。
「結さん。貴女はお母さまの人形使いの血を受け継いでいます。一つその力で我々を助けてくれませんか?」
結は不思議そうにうなずいた。危険な目にあい、保護されている身の結が、兼光たちの役に立てる事とは一体なんだろうか。
結は兼光と幸士郎に案内され、別な部屋に入った。そこは小さな和室だった。最初に目に入ったのが人形だった。その人形は、とても美しかった。金色の髪、金色の瞳、白い肌にバラ色のくちびる。結は思わずため息をついた。
「なんて綺麗なの。まるで生きているよう」
結の後ろに立った兼光が人形の説明をした。
「この人形は箕輪一心という人形師が最後に手がけた人形なのです」
「最後?」
「ええ。一心はこの人形とついになるもう一体の人形を作り、その後亡くなっています」
結の横に立った幸士郎が口を開いた。
「桜姫も一心の作だ。だからこの人形、イブは桜姫の妹になる」
「桜姫の妹」
結はもう一度、イブと呼ばれた人形を見つめた。確かに美しく優しげな表情は桜姫に似ているかもしれない。
桜姫の身長は五十センチくらいだ。しかしイブの身長は、今はイスに腰かけているが、立ち上がれば一メートルぐらいあるのではないか。それくらいに大きな人形だった。
兼光は結の耳元で言った。
「結さん。イブは傷ついて心を閉じています。どうかイブの心を開いて、イブの気持ちを聞いてやってくれませんか?」
結はうなずいてゴクリとツバを飲み込んだ。イブの前まで近づくと、結は微笑んで言った。
「イブ、私は結。貴女の力になりたいの。貴女の気持ちを教えて?」
結は人形といつも話すように声をかけた。イブの憂いをふくんだ瞳を見つめる。するとこれまで感じた事のないものを感じた。それは一じんの風のようだった。だが凍えるような寒さの風ではなく、春の風のような温かな風だった。
風と共に、結の心の中に、イブの気持ちが流れ込んできた。イブという人形の優しさ、憂い、悲しみ。結はあまりの感情の嵐に涙ぐみながら言った。
「イブ、貴女は大切なひとと離れ離れにされて悲しんでいるのね?お願い、貴女の力になりたいの。もっとお話しを聞かせて?」
結はイブの足元にしゃがみこむと、彼女の白くしなやかな手を握りしめた。イブはゆっくりと身体を傾け、結の目をしっかり見つめた。
まるで結の真意を見さだめようとしているような動作だった。イブは微笑んだ。ように見えた。それきりイブは姿勢を元に戻すと、動かなくなった。
結は不思議に思った。結が人形使いの能力を使うと、人形は自分のしたい事をするために動きだすはずなのに。イブは動く事をやめてしまった。
結はもう一度イブに話しかけようとすると、兼光がそれを止めた。
「結さん、ありがとう。イブは貴女の言葉に耳を傾けてくれました。こらからゆっくり会話をしてあげてください」
結はイブともっと話しをしたかったのだが、兼光がそう言うのであれば中止せざるおえなかった。
「結さん。貴女はお母さまの人形使いの血を受け継いでいます。一つその力で我々を助けてくれませんか?」
結は不思議そうにうなずいた。危険な目にあい、保護されている身の結が、兼光たちの役に立てる事とは一体なんだろうか。
結は兼光と幸士郎に案内され、別な部屋に入った。そこは小さな和室だった。最初に目に入ったのが人形だった。その人形は、とても美しかった。金色の髪、金色の瞳、白い肌にバラ色のくちびる。結は思わずため息をついた。
「なんて綺麗なの。まるで生きているよう」
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「この人形は箕輪一心という人形師が最後に手がけた人形なのです」
「最後?」
「ええ。一心はこの人形とついになるもう一体の人形を作り、その後亡くなっています」
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「桜姫も一心の作だ。だからこの人形、イブは桜姫の妹になる」
「桜姫の妹」
結はもう一度、イブと呼ばれた人形を見つめた。確かに美しく優しげな表情は桜姫に似ているかもしれない。
桜姫の身長は五十センチくらいだ。しかしイブの身長は、今はイスに腰かけているが、立ち上がれば一メートルぐらいあるのではないか。それくらいに大きな人形だった。
兼光は結の耳元で言った。
「結さん。イブは傷ついて心を閉じています。どうかイブの心を開いて、イブの気持ちを聞いてやってくれませんか?」
結はうなずいてゴクリとツバを飲み込んだ。イブの前まで近づくと、結は微笑んで言った。
「イブ、私は結。貴女の力になりたいの。貴女の気持ちを教えて?」
結は人形といつも話すように声をかけた。イブの憂いをふくんだ瞳を見つめる。するとこれまで感じた事のないものを感じた。それは一じんの風のようだった。だが凍えるような寒さの風ではなく、春の風のような温かな風だった。
風と共に、結の心の中に、イブの気持ちが流れ込んできた。イブという人形の優しさ、憂い、悲しみ。結はあまりの感情の嵐に涙ぐみながら言った。
「イブ、貴女は大切なひとと離れ離れにされて悲しんでいるのね?お願い、貴女の力になりたいの。もっとお話しを聞かせて?」
結はイブの足元にしゃがみこむと、彼女の白くしなやかな手を握りしめた。イブはゆっくりと身体を傾け、結の目をしっかり見つめた。
まるで結の真意を見さだめようとしているような動作だった。イブは微笑んだ。ように見えた。それきりイブは姿勢を元に戻すと、動かなくなった。
結は不思議に思った。結が人形使いの能力を使うと、人形は自分のしたい事をするために動きだすはずなのに。イブは動く事をやめてしまった。
結はもう一度イブに話しかけようとすると、兼光がそれを止めた。
「結さん、ありがとう。イブは貴女の言葉に耳を傾けてくれました。こらからゆっくり会話をしてあげてください」
結はイブともっと話しをしたかったのだが、兼光がそう言うのであれば中止せざるおえなかった。
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