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伊織の依頼
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哲太が朝起きると、伊織が荷造りをしていた。哲太は寝ぼけまなこで伊織にたずねた。
「どこか行くのか?」
「依頼だ、数日戻らん。勝司さまにたてついちまったからなぁ」
「花雪とコングをつれて行くんだろ?」
「花雪だけだよ。大阪だぞ?コングは無理」
「えぇ!花雪だけ?!コングを仲間はずれにするなんて可哀想だろ!」
「新幹線で行くからだめ!冷凍庫にカレーとビーフシチューあるから適当に食え。じゃあな」
「よし!俺が車出す!」
哲太の提案に、伊織は顔をしかめた。
結局哲太のごり押しで、伊織と戦人形の花雪とコングは、哲太のワゴン車で依頼先の大阪に出発した。
助手席の伊織は自身の立てた予定が狂ったため、機嫌が悪かった。
「あーあ、新幹線で駅弁食べたかったのに」
「ぐちぐちうるせえなぁ!次のサービスエリアでアメリカンドッグ買ってやるから」
「アメリカンドッグなんてどこでも食べれるだろ!」
哲太と伊織が言い争いをしていると、後部座席のコングと花雪が、心配そうにこちらを見ている。顔をしかめていた伊織は、花雪たちを見て微笑んで言った。
「大丈夫だ。ケンカしてない」
伊織の穏やかな言葉に、コングと花雪は安心したようだ。伊織の態度が軟化したのを見極めてから、哲太は質問した。
「今回の依頼は何なんだ?」
「本来だったら他人に依頼内容を話しちゃいけないんだがな。哲太、お前どうせついてくるつもりだろう」
「ああ。花雪とコングの戦いをこの目で見るんだ!」
「・・・。哲太がいるとすごく邪魔なんだがなぁ」
伊織は仕方ないとため息をついて言葉を続けた。
「今回の依頼、早い話しがヤクザの助っ人だ。組員を殺された報復に、相手の組に殴り込みに行くんだと」
「や、やくざ?殴り込み?それってすごく危ねぇんじゃねぇの?」
「ああ、危ないぜ?流れ弾が飛んでくるかもしれねぇし。だから哲太、お前は依頼主の所で待ってろ。できるだけコングと花雪の動画を撮ってきてやるから」
「・・・。天賀家ってさぁ、何か危ない依頼が多くない?」
「ああ、天賀家は金払いのいい依頼しか受けないからな。自然、危険な依頼になる。天賀家はだいぶまずい事に首突っ込んでんだよ」
哲太が恐怖で頭の中がグルグルしていると、伊織はしばらく寝ると言って目を閉じてしまった。
哲太はまっすぐな道路を見つめながら、見るともなく眠っている伊織を見つめた。もしかしらた死ぬかもしれない依頼に行くのに、伊織はスースーと寝息を立てている。肝が座っているのだ。
哲太はぼんやり考えた。伊織はおそらく天賀家一の人形使いだろう。伊織なら哲太の作った戦人形を操ってくれるはずだ。
だが伊織一代で、もう哲太の人形を操る者がいなくなるのは悲しい。そうだ、伊織が子供を作ればいいのだ。優秀な人形使いの子供はきっと優秀な人形使いになるだろう。
天賀家の当主勝司は、松永結という人形使いの娘を嫁にしようとやっきになっている。哲太はあまり勝司と会う機会は無いが、ごくたまに見かける勝司の印象は悪い。
松永結は勝司と結婚するより、伊織と結婚した方が幸せなのではなかろうか。伊織は、哲太には厳しいが、人形たちには優しい。それに、勝司よりもハンサムだ。伊織と結の年齢は、十歳ほど離れてはいるが、そんな夫婦だってよくある。
哲太は一人納得して、大阪へと車を走らせた。
「どこか行くのか?」
「依頼だ、数日戻らん。勝司さまにたてついちまったからなぁ」
「花雪とコングをつれて行くんだろ?」
「花雪だけだよ。大阪だぞ?コングは無理」
「えぇ!花雪だけ?!コングを仲間はずれにするなんて可哀想だろ!」
「新幹線で行くからだめ!冷凍庫にカレーとビーフシチューあるから適当に食え。じゃあな」
「よし!俺が車出す!」
哲太の提案に、伊織は顔をしかめた。
結局哲太のごり押しで、伊織と戦人形の花雪とコングは、哲太のワゴン車で依頼先の大阪に出発した。
助手席の伊織は自身の立てた予定が狂ったため、機嫌が悪かった。
「あーあ、新幹線で駅弁食べたかったのに」
「ぐちぐちうるせえなぁ!次のサービスエリアでアメリカンドッグ買ってやるから」
「アメリカンドッグなんてどこでも食べれるだろ!」
哲太と伊織が言い争いをしていると、後部座席のコングと花雪が、心配そうにこちらを見ている。顔をしかめていた伊織は、花雪たちを見て微笑んで言った。
「大丈夫だ。ケンカしてない」
伊織の穏やかな言葉に、コングと花雪は安心したようだ。伊織の態度が軟化したのを見極めてから、哲太は質問した。
「今回の依頼は何なんだ?」
「本来だったら他人に依頼内容を話しちゃいけないんだがな。哲太、お前どうせついてくるつもりだろう」
「ああ。花雪とコングの戦いをこの目で見るんだ!」
「・・・。哲太がいるとすごく邪魔なんだがなぁ」
伊織は仕方ないとため息をついて言葉を続けた。
「今回の依頼、早い話しがヤクザの助っ人だ。組員を殺された報復に、相手の組に殴り込みに行くんだと」
「や、やくざ?殴り込み?それってすごく危ねぇんじゃねぇの?」
「ああ、危ないぜ?流れ弾が飛んでくるかもしれねぇし。だから哲太、お前は依頼主の所で待ってろ。できるだけコングと花雪の動画を撮ってきてやるから」
「・・・。天賀家ってさぁ、何か危ない依頼が多くない?」
「ああ、天賀家は金払いのいい依頼しか受けないからな。自然、危険な依頼になる。天賀家はだいぶまずい事に首突っ込んでんだよ」
哲太が恐怖で頭の中がグルグルしていると、伊織はしばらく寝ると言って目を閉じてしまった。
哲太はまっすぐな道路を見つめながら、見るともなく眠っている伊織を見つめた。もしかしらた死ぬかもしれない依頼に行くのに、伊織はスースーと寝息を立てている。肝が座っているのだ。
哲太はぼんやり考えた。伊織はおそらく天賀家一の人形使いだろう。伊織なら哲太の作った戦人形を操ってくれるはずだ。
だが伊織一代で、もう哲太の人形を操る者がいなくなるのは悲しい。そうだ、伊織が子供を作ればいいのだ。優秀な人形使いの子供はきっと優秀な人形使いになるだろう。
天賀家の当主勝司は、松永結という人形使いの娘を嫁にしようとやっきになっている。哲太はあまり勝司と会う機会は無いが、ごくたまに見かける勝司の印象は悪い。
松永結は勝司と結婚するより、伊織と結婚した方が幸せなのではなかろうか。伊織は、哲太には厳しいが、人形たちには優しい。それに、勝司よりもハンサムだ。伊織と結の年齢は、十歳ほど離れてはいるが、そんな夫婦だってよくある。
哲太は一人納得して、大阪へと車を走らせた。
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