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冒険者

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 それからというもの、カイルは森でひたすら魔法と剣術の訓練をした。カイルはこれから百人の人間を助けるにあたって、ある名案を思いついた。

 それは冒険者になる事だ。冒険者とは、この国の冒険者協会で冒険者登録をした者の事だ。冒険者になれば、沢山の依頼を受ける事ができる。そうなれば命の危険にさらされている人物と出会う機会も増えるだろうと考えたのだ。

 冒険者の資格は、十五歳になれば誰でも取得する事ができるのだ。カイルは今現在十歳なので、五年間みっちりと修行をして、両親が安心するような冒険者にならなければいけない。

 月日はあっという間に過ぎて、カイルは十五歳になっていた。カイルには弟のトランができていた。トランはヤンチャざかりでカイルにもとても懐いていた。

 今では両親とトランは、カイルにとってかけがえのない存在になっていた。このまま家族と平穏に暮らしていきたいとの思いもあったが、カイルは天界の審判の最中なのだ。

 カイルはこの世界で百人の人間の命を助けなければいけないのだ。カイルが冒険者になるために家を出る時、両親は泣きながら見送ってくれた。母親はカイルの頬に雨のようにキスを降らせた。父親は、今では父親とカイルの身長は同じくらいになっていた。父親はカイルをしっかりと抱きしめてくれた。カイルは足元にじゃれつく弟のトランを抱き上げて言った。

「トラン。俺の留守の間、父さんと母さんの事を頼んだぞ?」

 弟のトランはおひさまのような笑顔で笑った。


 カイルは生まれ育った村を出て、王都に向かった。ガンドル国は広大な土地を有していた。カイルの育った村は、王都から遠く離れた場所にあった。徒歩で王都に着くには、早くて二十日はかかるだろう。

 カイルは村からだいぶ離れてから、自身に風魔法をまとわせた。カイルの身体はフワリと宙に浮いた。そして風のように空を飛んだ。となりには純白の翼を広げたリリアーヌが飛んでいる。リリアーヌはカイルの飛ぶ速度が速いと文句を言った。カイルは笑ってもっと速度を上げた。

 日も暮れて来たのでカイルは地面に着地した。遅れてリリアーヌが着地する。リリアーヌはゼイゼイと荒い息をしながら恨みがましそうに言った。

「何で天使の私が、人間のアンタに飛行で負けるのよ!」

 カイルは笑って答えた。

「俺は風のエレメントの力を借りて空を飛んでいるんだ。リリアーヌは羽ばたいているから遅いんだよ」
「!。何よ、失礼しちゃう!」

 リリアーヌは不機嫌になってしまったようで、頬をふくらませて怒っている。その姿は、普通の少女のようにも見えて可愛らしかった。

 カイルが火を焚いて、土植物魔法で作った野菜のスープと干し肉で簡単な夕食をとった。そろそろ就寝しようと準備をしていると、何かの気配を感じだ。

 カイルは腰の剣に手をそえて、いつでも抜けるように構えた。気配を探ると、肉食の野生動物ではなく、どうやら人間のようだ。人数は二人で、呼吸が荒く、何かから逃げて来たようだ。

「た、助けてくれ!」

 林の中から二人の血だらけの男が飛び出して来た。カイルは驚いて二人の男たちの側に駆け寄った。二人の男たちは、背中にひどい傷があった。まるで大型の肉食動物に引っかかれたような傷あとだった。

 カイルは治癒魔法で二人の男の傷を治してやった。男たちはカイルを見て、驚いた声で言った。

「あ、あんた魔法が使えるのか?!」
「?。ああ、そうだ」
「お願いだ!俺たちの村を助けてくれ!」

 

 
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