26 / 64
いさかい
しおりを挟む
トーマスはサイラスに事のてんまつを説明した。
「僕の父はこの土地一帯を治めている領主です。トーノマ自治区も領土内ですが、自治権はトーノマ族にあります。八十年前、当時のガンドル国王が領土を広げ、僕の祖父がこの領地の領主になりました。当時はまだ畑も住む場所もなく、開拓するのが大変でした。開拓にあたり、トーノマ族の人々にも手助けしてもらった事もありました」
トーマスはそこで言葉を切り、顔をゆがめた。そして、意を決したように口を開いた。
「我々ガンドル国民と、トーノマ族の人々には、暗黙の決まり事がありました。それは、トーノマ族の文化を決しておかさないという事です。つまり、トーノマ族とガンドル国民の結婚を許さないと言う事です。ですが、僕らは恋に落ち、一緒になりたいと願いました。だけど、僕の父とエッラの父上は認めてくれなかった。それどころか、八十年それなりに仲良く暮らしていたこの土地で、争いが起きそうなのです。トーノマ族の人たちは、武器を持ち話し合いに応じなければ戦闘もじさない考えのようです。この事態に、領主である父は心配し、冒険者教会から腕の立つ冒険者を二十人雇い入れました」
カイルはジッとトーマスの話しを聞いていたが、そこで口をはさんだ。
「なぁ、トーマス。争いの火種はどうやら、お前とエッラのようだ。それならお前たちを外国に逃すのはどうだ?お前たちが逃げてしまえば無益な争いも起きないのではないか?」
カイルの言葉に、サイラスの手を叩いてうなずいた。
「そうだな、師匠。ホセに頼めばいいじゃん」
カイルたちの意見に、トーマスとエッラは見つめ合い、そして手をつなぎ合って答えた。
「冒険者どの。僕たちはこの土地から逃げたくはないのです。僕らはトーノマの人々も、このガンドルの土地の大好きなのです。僕たちはこの土地で皆に認められて結婚したいのです」
トーマスとエッラの意志は固く、カイルはううむとうなったが、仕方なくうなずいた。トーマスとエッラは嬉しそうに感謝の言葉を言った。
トーマスは再び窓から出て、領主の館に帰っていった。エッラは棚を戻すと、カイルたちにお茶をごちそうすると言って、弟のドーグと共に部屋を出た。
部屋の中にはカイルとサイラス、レッドアイだけになった。それまで姿を隠していた天使のリリアーヌが現れて、カイルに言った。
「カイル。もうすぐトーマスが死ぬわ」
「!。何だって?!トーマスは殺されるのか?!」
カイルは驚きのあまり、叫んでしまった。カイルの目の前にいるサイラスがびっくりした顔をしている。無理もない、リリアーヌはサイラスには見えないのだ。サイラスには、カイルが突然大声を出したように思えただろう。
リリアーヌはため息をついてからカイルの耳元で言った。
「もうすぐこの土地で争いが起こる。トーマスはトーノマ族の若い男に殺されるわ」
カイルはアゴに手を置いて考えこんだ。サイラスは口やかましくカイルにせっついた。
「何だよ師匠。急に叫んじゃってさぁ。何でトーマスが死ぬってわかんだよ?」
カイルは仕方なくサイラスに言った。
「・・・。サイラス、これは俺の直感だがな。トーマスという男はとても正義感と意志が強い、もしトーノマ族と冒険者たちの争いが起きれば止めに入るだろう。そうなればトーマスは殺されてしまうかもしれない」
「なぁんだ、そういう事か。トーマスって奴弱そうだもんな」
カイルの説明に、単純なサイラスは納得してくたようだ。カイルはサイラスに気づかれないようにため息をついてから言った。
「サイラス。俺はこの争いで、トーマスだけじゃない、誰一人として死なせない」
「おう!当たり前じゃねぇか。俺と師匠と犬っころがいるんだぜ?絶対にやり遂げてやろうじゃねぇか」
サイラスののん気な返事に、カイルは思わず微笑んだ。
「僕の父はこの土地一帯を治めている領主です。トーノマ自治区も領土内ですが、自治権はトーノマ族にあります。八十年前、当時のガンドル国王が領土を広げ、僕の祖父がこの領地の領主になりました。当時はまだ畑も住む場所もなく、開拓するのが大変でした。開拓にあたり、トーノマ族の人々にも手助けしてもらった事もありました」
トーマスはそこで言葉を切り、顔をゆがめた。そして、意を決したように口を開いた。
「我々ガンドル国民と、トーノマ族の人々には、暗黙の決まり事がありました。それは、トーノマ族の文化を決しておかさないという事です。つまり、トーノマ族とガンドル国民の結婚を許さないと言う事です。ですが、僕らは恋に落ち、一緒になりたいと願いました。だけど、僕の父とエッラの父上は認めてくれなかった。それどころか、八十年それなりに仲良く暮らしていたこの土地で、争いが起きそうなのです。トーノマ族の人たちは、武器を持ち話し合いに応じなければ戦闘もじさない考えのようです。この事態に、領主である父は心配し、冒険者教会から腕の立つ冒険者を二十人雇い入れました」
カイルはジッとトーマスの話しを聞いていたが、そこで口をはさんだ。
「なぁ、トーマス。争いの火種はどうやら、お前とエッラのようだ。それならお前たちを外国に逃すのはどうだ?お前たちが逃げてしまえば無益な争いも起きないのではないか?」
カイルの言葉に、サイラスの手を叩いてうなずいた。
「そうだな、師匠。ホセに頼めばいいじゃん」
カイルたちの意見に、トーマスとエッラは見つめ合い、そして手をつなぎ合って答えた。
「冒険者どの。僕たちはこの土地から逃げたくはないのです。僕らはトーノマの人々も、このガンドルの土地の大好きなのです。僕たちはこの土地で皆に認められて結婚したいのです」
トーマスとエッラの意志は固く、カイルはううむとうなったが、仕方なくうなずいた。トーマスとエッラは嬉しそうに感謝の言葉を言った。
トーマスは再び窓から出て、領主の館に帰っていった。エッラは棚を戻すと、カイルたちにお茶をごちそうすると言って、弟のドーグと共に部屋を出た。
部屋の中にはカイルとサイラス、レッドアイだけになった。それまで姿を隠していた天使のリリアーヌが現れて、カイルに言った。
「カイル。もうすぐトーマスが死ぬわ」
「!。何だって?!トーマスは殺されるのか?!」
カイルは驚きのあまり、叫んでしまった。カイルの目の前にいるサイラスがびっくりした顔をしている。無理もない、リリアーヌはサイラスには見えないのだ。サイラスには、カイルが突然大声を出したように思えただろう。
リリアーヌはため息をついてからカイルの耳元で言った。
「もうすぐこの土地で争いが起こる。トーマスはトーノマ族の若い男に殺されるわ」
カイルはアゴに手を置いて考えこんだ。サイラスは口やかましくカイルにせっついた。
「何だよ師匠。急に叫んじゃってさぁ。何でトーマスが死ぬってわかんだよ?」
カイルは仕方なくサイラスに言った。
「・・・。サイラス、これは俺の直感だがな。トーマスという男はとても正義感と意志が強い、もしトーノマ族と冒険者たちの争いが起きれば止めに入るだろう。そうなればトーマスは殺されてしまうかもしれない」
「なぁんだ、そういう事か。トーマスって奴弱そうだもんな」
カイルの説明に、単純なサイラスは納得してくたようだ。カイルはサイラスに気づかれないようにため息をついてから言った。
「サイラス。俺はこの争いで、トーマスだけじゃない、誰一人として死なせない」
「おう!当たり前じゃねぇか。俺と師匠と犬っころがいるんだぜ?絶対にやり遂げてやろうじゃねぇか」
サイラスののん気な返事に、カイルは思わず微笑んだ。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
10
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる