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トーノマ自治区
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カイルたちは大所帯でトーノマ自治区に向かう事にした。カイルが風魔法で空を飛んで行こうと提案したが、空に浮かべたエッラとドーグが怖がったため、大きくなったレッドアイに乗って行く事にした。
大きくなったオオカミのレッドアイを見たエッラは失神しかけたが、弟のドーグは嬉しそうだった。レッドアイの背中には、先頭にカイルが乗り、エッラ、ドーグ、最後にサイラスが乗った。
レッドアイは最初ゆっくりと歩いていたが、次第にエッラとドーグが慣れてくると、速度を早め、風のように走った。カイルたちはその日の夜にトーノマ自治区に到着する事ができた。
エッラは闇夜に隠れるようにして、カイルたちを自室に案内した。エッラに雇われたカイルたちは、決してエッラの父や兄に見つかってはいけないからだ。
エッラは恐縮しながらカイルたちに自室のイスをすすめてくれた。族長の娘だけあって、エッラの部屋は大きかった。エッラの部屋に入って、カイルが最初にいだいた感想は、室内の家具が、ガンドル国のものと大差がない事だ。テーブルがあり、イスがある。そして壁には見事なタペストリーが飾られていた。動物や人間が細密に織り込まれていた。何とエッラが織ったのだという。トーノマ族の女性ははた織りにたけていて、幼い頃からはた織りを習うのだという。
エッラの話しでは、トーノマ族は独自の文化を大切にしていると言っていたが、カイルから見ると多分にガンドルの文化が混ざり合っているように思えた。ただ、エッラが身につけている銀細工の宝飾品は目を引くものがあった。
カイルがエッラに細かなネックレスとブレスレットの細工を褒めると、彼女はアクセサリーを外し、カイルの手に乗せた。よく見てくれというのだ。トーノマ族の男は銀の細工ができるのだ。トーノマの男は、銀細工のアクセサリーを、家族の女性に贈るのがならわしなのだそうだ。エッラが身につけているネックレスも、彼女の父親である族長が亡き妻に贈った物だ。
カイルはブレスレットをクルクル回しながらながめた。このブレスレットは弟のドーグが手がけた物だ。植物が絡みあった見事なデザインだ。ドーグは幼いながら銀細工の才があるのだ。
カイルはネックレスを手のひらに乗せ、しげしげとながめた。ひざに乗っている仔犬のレッドアイもくんくんと鼻でにおいをかいでいる。ネックレスは植物や花の細かな銀細工が連ねてあった。カイルは感心してネックレスをエッラに返すと、彼女は微笑んで言った。
「トーノマの男子は手先がとても器用なんです。この銀細工はトーノマ族の独自の技術なんです。八十年前に、トーノマの自治区を認めてくれたガンドル国王も、この銀細工を献上したから、トーノマの文化を伝え続けるようにと言ってくださったのです」
エッラは嬉しそうに言った。横で聞いている弟のドーグも得意げだ。カイルはトーノマ族の技術の高さに素直に驚いた。
カイルは前世で、教養のため養父に沢山の宝飾品や美術品を見せられた。トーノマ族のタペストリーや銀細工はそれ以上の品物だった。
カイルたちがトーノマの文化について話しを聞いていると、窓ガラスを誰かがノックした。カイルがふしんげに窓に視線を移すと、エッラとドーグは心得たように部屋のドアに棚を置いた。部屋に誰も入れないためのようだ。エッラはドアを開かなくしてから、窓に近づき開けた。
窓からは金髪の男性が飛び込んで来た。彼がエッラの言う、トーマスなのだろう。金髪の男はエッラの手を取って言った。
「エッラ、大丈夫だったかい?」
「ええ、大丈夫よ。トーマス。聞いてちょうだい、冒険者の方たちに来てもらったの。これでお父さまと、トーマスのお父さまのいさかいを止められるかもしれないわ」
金髪の男トーマスは、そこで初めてカイルとサイラスに気づいたようだ。サイラスに近づくと手を差し出してあいさつをした。
「冒険者どの、よろしくお願いします」
サイラスはあいまいにうなずいてからカイルを見た。カイルは黙ってうなずき、そのまま話しを聞けとうながす。
カイルだとて、初めてサイラスと少年のカイルを見れば、どちらがリーダーかすぐに見当をつけるだろう。
大きくなったオオカミのレッドアイを見たエッラは失神しかけたが、弟のドーグは嬉しそうだった。レッドアイの背中には、先頭にカイルが乗り、エッラ、ドーグ、最後にサイラスが乗った。
レッドアイは最初ゆっくりと歩いていたが、次第にエッラとドーグが慣れてくると、速度を早め、風のように走った。カイルたちはその日の夜にトーノマ自治区に到着する事ができた。
エッラは闇夜に隠れるようにして、カイルたちを自室に案内した。エッラに雇われたカイルたちは、決してエッラの父や兄に見つかってはいけないからだ。
エッラは恐縮しながらカイルたちに自室のイスをすすめてくれた。族長の娘だけあって、エッラの部屋は大きかった。エッラの部屋に入って、カイルが最初にいだいた感想は、室内の家具が、ガンドル国のものと大差がない事だ。テーブルがあり、イスがある。そして壁には見事なタペストリーが飾られていた。動物や人間が細密に織り込まれていた。何とエッラが織ったのだという。トーノマ族の女性ははた織りにたけていて、幼い頃からはた織りを習うのだという。
エッラの話しでは、トーノマ族は独自の文化を大切にしていると言っていたが、カイルから見ると多分にガンドルの文化が混ざり合っているように思えた。ただ、エッラが身につけている銀細工の宝飾品は目を引くものがあった。
カイルがエッラに細かなネックレスとブレスレットの細工を褒めると、彼女はアクセサリーを外し、カイルの手に乗せた。よく見てくれというのだ。トーノマ族の男は銀の細工ができるのだ。トーノマの男は、銀細工のアクセサリーを、家族の女性に贈るのがならわしなのだそうだ。エッラが身につけているネックレスも、彼女の父親である族長が亡き妻に贈った物だ。
カイルはブレスレットをクルクル回しながらながめた。このブレスレットは弟のドーグが手がけた物だ。植物が絡みあった見事なデザインだ。ドーグは幼いながら銀細工の才があるのだ。
カイルはネックレスを手のひらに乗せ、しげしげとながめた。ひざに乗っている仔犬のレッドアイもくんくんと鼻でにおいをかいでいる。ネックレスは植物や花の細かな銀細工が連ねてあった。カイルは感心してネックレスをエッラに返すと、彼女は微笑んで言った。
「トーノマの男子は手先がとても器用なんです。この銀細工はトーノマ族の独自の技術なんです。八十年前に、トーノマの自治区を認めてくれたガンドル国王も、この銀細工を献上したから、トーノマの文化を伝え続けるようにと言ってくださったのです」
エッラは嬉しそうに言った。横で聞いている弟のドーグも得意げだ。カイルはトーノマ族の技術の高さに素直に驚いた。
カイルは前世で、教養のため養父に沢山の宝飾品や美術品を見せられた。トーノマ族のタペストリーや銀細工はそれ以上の品物だった。
カイルたちがトーノマの文化について話しを聞いていると、窓ガラスを誰かがノックした。カイルがふしんげに窓に視線を移すと、エッラとドーグは心得たように部屋のドアに棚を置いた。部屋に誰も入れないためのようだ。エッラはドアを開かなくしてから、窓に近づき開けた。
窓からは金髪の男性が飛び込んで来た。彼がエッラの言う、トーマスなのだろう。金髪の男はエッラの手を取って言った。
「エッラ、大丈夫だったかい?」
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