28 / 64
トーマスとエッラ
しおりを挟む
エッラの父である族長は、ガンドル国人から受けた恩を返さねばならないといった。エッラとドーグは、トーノマの使者と共にガンドル人の居住地に向かった。
エッラたちを助けてくれたのは、領主の妻と子供だったのだ。女性の名はクレール、息子はトーマスといった。トーノマの使者は、領主に織物と銀細工を贈った。領主はとても喜んでくれた。
エッラとドーグは、クレールに手まねきされてお茶をごちそうになった。エッラたちがこれまで食べた事のない美味しいお菓子を食べさせてもらった。
クレールは微笑んで言った。
「あなたたち、よかったらトーマスのお友達になってくれない?」
エッラは、クレールの後ろに隠れて恥ずかしそうにしているトーマスと目が合った。エッラとドーグはトーマスと友達になった。
それからというもの、エッラとドーグはヒマを見つけてはトーマスの所に遊びに行った。そのたびにクレールは美味しいお菓子でもてなしてくれた。エッラは次第にクレールにも懐くようになった。
優しくて美しいクレールは、どこかエッラの母を思い出させた。だがしばらくして、クレールは病にかかり亡くなってしまった。
エッラはとても悲しかった。だがそれ以上に、トーマスの嘆きは激しかった。トーマスは母親の死を受け入れる事ができないようだった。
エッラも母を亡くした悲しみを知っている。エッラはどうしてもトーマスに元気になってほしかった。
エッラの励ましのかいもあり、トーマスはようやく元気を取り戻した。その頃には、エッラとトーマスは何でも話せる親友になっていた。
エッラはトーマスにトーノマの文化を教えて、反対にトーマスがガンドルの文化を教えてくれた。二人はますます自分たちの文化が好きになり、相手の文化を尊敬するようになった。
ある時エッラはトーマスに言った。自分はもうすぐいとこのモンスと結婚して族長になるため勉強をするのだと。するとトーマスの顔がくもった。そして、トーマスは思いつめたように言った。
「エッラはモンスが好きなの?」
「好き?ええ、兄のように慕っているわ。でも私は族長の娘なの。好きなんて気持ちは無用だわ」
「・・・。それは変だよ。好きあってもいないのに結婚するなんて」
トーマスの言葉にエッラは怒りがわいた。トーノマの神聖な伝統をバカにされたように感じたからだ。エッラは少し声をあらげて言った。
「あなたは族長という存在がどんな意味を持っているか知らないからそんな事を言うんだわ」
「違うよ、エッラ。トーノマの文化を否定したいわけじゃないんだ。ただ、その、エッラの夫になるのはエッラの事を一番に愛し大切にする人でなきゃいけないって事を言いたかったんだ」
トーマスはいつになく歯ぎれの悪い言い方をした後、エッラの両手をギュッと握って叫ぶように言った。
「エッラ、僕と結婚してくれないか?!」
「えっ?」
エッラはポカンと口を開けてしまった。それほど驚いたからだ。トーマスは親友だ。それは彼も同じ気持ちでいると確信している。トーマスは今、何と言ったのだろうか。エッラに結婚してほしいと言ったのではないか。
エッラは突然顔が真っ赤になった。しどろもどろになりながら言い訳のような事を言った。
「そんな、急に、その。私の夫になるなら銀細工ができないとだめなのよ?」
「それは知ってる!だからドーグにこっそり教わったんだ」
トーマスはポケットから何かを取り出し、エッラの手のひらに乗せた。エッラが顔を近づけて見ると、銀製の彫刻物だった。らんざつに彫りが入れられていて、何を作ったのかわからなかった。エッラはまじまじと見入ってから言った。
「・・・、虫?」
「違うよ!花だよ!アネモネの花!」
エッラの顔がまた赤くなった。赤いアネモネの花言葉は、君を愛する。だったからだ。
エッラはうわずった声で返した。
「こ、こんなんじゃダメね!もっと練習しなさいよ」
エッラの言葉に、トーマスは目を大きく見開いて言った。
「じゃ、じゃあプロポーズを受けてくれるんだね!ありがとう、エッラ!」
トーマスは感極まったというように、エッラを強く抱きしめた。エッラはそこで初めて気づいたのだ。トーマスを愛しているという事に。
エッラたちを助けてくれたのは、領主の妻と子供だったのだ。女性の名はクレール、息子はトーマスといった。トーノマの使者は、領主に織物と銀細工を贈った。領主はとても喜んでくれた。
エッラとドーグは、クレールに手まねきされてお茶をごちそうになった。エッラたちがこれまで食べた事のない美味しいお菓子を食べさせてもらった。
クレールは微笑んで言った。
「あなたたち、よかったらトーマスのお友達になってくれない?」
エッラは、クレールの後ろに隠れて恥ずかしそうにしているトーマスと目が合った。エッラとドーグはトーマスと友達になった。
それからというもの、エッラとドーグはヒマを見つけてはトーマスの所に遊びに行った。そのたびにクレールは美味しいお菓子でもてなしてくれた。エッラは次第にクレールにも懐くようになった。
優しくて美しいクレールは、どこかエッラの母を思い出させた。だがしばらくして、クレールは病にかかり亡くなってしまった。
エッラはとても悲しかった。だがそれ以上に、トーマスの嘆きは激しかった。トーマスは母親の死を受け入れる事ができないようだった。
エッラも母を亡くした悲しみを知っている。エッラはどうしてもトーマスに元気になってほしかった。
エッラの励ましのかいもあり、トーマスはようやく元気を取り戻した。その頃には、エッラとトーマスは何でも話せる親友になっていた。
エッラはトーマスにトーノマの文化を教えて、反対にトーマスがガンドルの文化を教えてくれた。二人はますます自分たちの文化が好きになり、相手の文化を尊敬するようになった。
ある時エッラはトーマスに言った。自分はもうすぐいとこのモンスと結婚して族長になるため勉強をするのだと。するとトーマスの顔がくもった。そして、トーマスは思いつめたように言った。
「エッラはモンスが好きなの?」
「好き?ええ、兄のように慕っているわ。でも私は族長の娘なの。好きなんて気持ちは無用だわ」
「・・・。それは変だよ。好きあってもいないのに結婚するなんて」
トーマスの言葉にエッラは怒りがわいた。トーノマの神聖な伝統をバカにされたように感じたからだ。エッラは少し声をあらげて言った。
「あなたは族長という存在がどんな意味を持っているか知らないからそんな事を言うんだわ」
「違うよ、エッラ。トーノマの文化を否定したいわけじゃないんだ。ただ、その、エッラの夫になるのはエッラの事を一番に愛し大切にする人でなきゃいけないって事を言いたかったんだ」
トーマスはいつになく歯ぎれの悪い言い方をした後、エッラの両手をギュッと握って叫ぶように言った。
「エッラ、僕と結婚してくれないか?!」
「えっ?」
エッラはポカンと口を開けてしまった。それほど驚いたからだ。トーマスは親友だ。それは彼も同じ気持ちでいると確信している。トーマスは今、何と言ったのだろうか。エッラに結婚してほしいと言ったのではないか。
エッラは突然顔が真っ赤になった。しどろもどろになりながら言い訳のような事を言った。
「そんな、急に、その。私の夫になるなら銀細工ができないとだめなのよ?」
「それは知ってる!だからドーグにこっそり教わったんだ」
トーマスはポケットから何かを取り出し、エッラの手のひらに乗せた。エッラが顔を近づけて見ると、銀製の彫刻物だった。らんざつに彫りが入れられていて、何を作ったのかわからなかった。エッラはまじまじと見入ってから言った。
「・・・、虫?」
「違うよ!花だよ!アネモネの花!」
エッラの顔がまた赤くなった。赤いアネモネの花言葉は、君を愛する。だったからだ。
エッラはうわずった声で返した。
「こ、こんなんじゃダメね!もっと練習しなさいよ」
エッラの言葉に、トーマスは目を大きく見開いて言った。
「じゃ、じゃあプロポーズを受けてくれるんだね!ありがとう、エッラ!」
トーマスは感極まったというように、エッラを強く抱きしめた。エッラはそこで初めて気づいたのだ。トーマスを愛しているという事に。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに
千石
ファンタジー
【第17回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞】
魔法学園4年生のグレイ・ズーは平凡な平民であるが、『他人の寿命が視える』という他の人にはない特殊な能力を持っていた。
ある日、学園一の美令嬢とすれ違った時、グレイは彼女の余命が本日までということを知ってしまう。
グレイは自分の特殊能力によって過去に周りから気味悪がられ、迫害されるということを経験していたためひたすら隠してきたのだが、
「・・・知ったからには黙っていられないよな」
と何とかしようと行動を開始する。
そのことが切っ掛けでグレイの生活が一変していくのであった。
他の投稿サイトでも掲載してます。
※表紙の絵はAIが生成したものであり、著作権に関する最終的な責任は負いかねます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】
~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~
ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。
学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。
何か実力を隠す特別な理由があるのか。
いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。
そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。
貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。
オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。
世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな!
※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。
勇者パーティーを追放されたので、張り切ってスローライフをしたら魔王に世界が滅ぼされてました
まりあんぬさま
ファンタジー
かつて、世界を救う希望と称えられた“勇者パーティー”。
その中で地味に、黙々と補助・回復・結界を張り続けていたおっさん――バニッシュ=クラウゼン(38歳)は、ある日、突然追放を言い渡された。
理由は「お荷物」「地味すぎる」「若返くないから」。
……笑えない。
人付き合いに疲れ果てたバニッシュは、「もう人とは関わらん」と北西の“魔の森”に引きこもり、誰も入って来られない結界を張って一人スローライフを開始……したはずだった。
だがその結界、なぜか“迷える者”だけは入れてしまう仕様だった!?
気づけば――
記憶喪失の魔王の娘
迫害された獣人一家
古代魔法を使うエルフの美少女
天然ドジな女神
理想を追いすぎて仲間を失った情熱ドワーフ
などなど、“迷える者たち”がどんどん集まってくる異種族スローライフ村が爆誕!
ところが世界では、バニッシュの支援を失った勇者たちがボロボロに……
魔王軍の侵攻は止まらず、世界滅亡のカウントダウンが始まっていた。
「もう面倒ごとはごめんだ。でも、目の前の誰かを見捨てるのも――もっとごめんだ」
これは、追放された“地味なおっさん”が、
異種族たちとスローライフしながら、
世界を救ってしまう(予定)のお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる