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未来を予言するという事
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カイルたちはエッラの体調が安定するまで、治癒魔法をかけ続けた。カイルたちの魔法のかいあって、エッラの腹にできた無惨な傷あとはずいぶんと薄くなった。
カイルたちトーノマ自治区を去る事にした。エッラの父親である族長は、トーマスとエッラの結婚は認めたが、トーマスを族長にする事は断言しなかった。トーノマ族内での反対意見も多いのだろう。それなら弟のドーグを族長にすればいいのではないかと、カイルは無責任に思った。
ドーグはまだ子供だが、正義感が強く広い心と優しさを持っている。それに銀細工の腕はこれからもきっと上達するだろう。
エッラの元婚約者だったモンスは、トーノマ自治区を去る事になった。エッラとトーマスはしきりに自治区に残る事をすすめたが、モンスの決意は固かった。モンスはガンドル国の外にあるトーノマ族の村に旅立って行った。
カイルたちはエッラとトーマス、族長とドーグに見送られながら王都へと向かった。
道すがら、サイラスの機嫌が悪かった。カイルが何故かと聞くと、子供のように口をまげて答えた。
「エッラには、俺たちが必ずトーマスを守ると言っておいたのに、何で飛び出てきちまったんだろう。俺たちの事、信用してなかったのかなぁ?」
サイラスはエッラに信用されなかったのではないかと思い落ち込んでいるようだ。カイルたちは、トーノマ族と冒険者たちの争いが起きる日に、エッラに言ったのだ。必ずトーマスを守るから家でジッとしていてくれと。
だがエッラは、トーマスを守るためモンスの剣の前に飛び出て、刺されてしまった。あと少し治癒魔法が遅れていたら、エッラは助からなかっただろう。
カイルはため息をついて言った。
「いいや、エッラは俺たちを信用していなかったわけじゃない。悪いのは俺だ、多分エッラは俺たちの話しを聞いてしまったんだろう。トーマスが死んでしまうと。だからエッラはトーマスを助けるために飛び出してしまったんだろう」
単純なサイラスは、すぐに機嫌をなおし、元気よく歩き出した。カイルは深いため息をついた。
夜になり野宿をした。火の番はカイルだった。サイラスは眠っている。カイルは、リリアーヌと呼んだ。美しい天使はカイルの側に現れて言った。
「おめでとうカイル。この争いをおさめた事により、三十一人の死を回避できたわ」
「・・・。俺は何もしていない。トーノマ族とガンドル国の争いを止めたのは、トーマスとエッラだ」
「そうね。でもカイルのおかげでもあるわ」
カイルはしばらく沈黙してから、リリアーヌに言った。
「リリアーヌが言っていた未来とは違う結果になった。死ぬ運命にあったのはエッラだ。俺の不用意な発言で未来が変わったんだな」
「・・・。それは私の責任でもあるわ。サイラスのいる前で、カイルに話しかけてしまったから」
「いいや、リリアーヌのせいじゃない。俺のいたらなさがエッラを危険な目にあわせた」
カイルは悔しさのあまりくちびるを噛みしめた。リリアーヌはそんなカイルをジッと見つめてから言った。
「未来はね、蝶の羽ばたきなの」
「?」
「未来はね、とても小さな事で変化してしまうの。だから私の見た未来が変わってしまった」
「それなら、これからはもっと厳重にしないとな」
カイルの決心の言葉に、リリアーヌも無言でうなずいた。
カイルたちトーノマ自治区を去る事にした。エッラの父親である族長は、トーマスとエッラの結婚は認めたが、トーマスを族長にする事は断言しなかった。トーノマ族内での反対意見も多いのだろう。それなら弟のドーグを族長にすればいいのではないかと、カイルは無責任に思った。
ドーグはまだ子供だが、正義感が強く広い心と優しさを持っている。それに銀細工の腕はこれからもきっと上達するだろう。
エッラの元婚約者だったモンスは、トーノマ自治区を去る事になった。エッラとトーマスはしきりに自治区に残る事をすすめたが、モンスの決意は固かった。モンスはガンドル国の外にあるトーノマ族の村に旅立って行った。
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「エッラには、俺たちが必ずトーマスを守ると言っておいたのに、何で飛び出てきちまったんだろう。俺たちの事、信用してなかったのかなぁ?」
サイラスはエッラに信用されなかったのではないかと思い落ち込んでいるようだ。カイルたちは、トーノマ族と冒険者たちの争いが起きる日に、エッラに言ったのだ。必ずトーマスを守るから家でジッとしていてくれと。
だがエッラは、トーマスを守るためモンスの剣の前に飛び出て、刺されてしまった。あと少し治癒魔法が遅れていたら、エッラは助からなかっただろう。
カイルはため息をついて言った。
「いいや、エッラは俺たちを信用していなかったわけじゃない。悪いのは俺だ、多分エッラは俺たちの話しを聞いてしまったんだろう。トーマスが死んでしまうと。だからエッラはトーマスを助けるために飛び出してしまったんだろう」
単純なサイラスは、すぐに機嫌をなおし、元気よく歩き出した。カイルは深いため息をついた。
夜になり野宿をした。火の番はカイルだった。サイラスは眠っている。カイルは、リリアーヌと呼んだ。美しい天使はカイルの側に現れて言った。
「おめでとうカイル。この争いをおさめた事により、三十一人の死を回避できたわ」
「・・・。俺は何もしていない。トーノマ族とガンドル国の争いを止めたのは、トーマスとエッラだ」
「そうね。でもカイルのおかげでもあるわ」
カイルはしばらく沈黙してから、リリアーヌに言った。
「リリアーヌが言っていた未来とは違う結果になった。死ぬ運命にあったのはエッラだ。俺の不用意な発言で未来が変わったんだな」
「・・・。それは私の責任でもあるわ。サイラスのいる前で、カイルに話しかけてしまったから」
「いいや、リリアーヌのせいじゃない。俺のいたらなさがエッラを危険な目にあわせた」
カイルは悔しさのあまりくちびるを噛みしめた。リリアーヌはそんなカイルをジッと見つめてから言った。
「未来はね、蝶の羽ばたきなの」
「?」
「未来はね、とても小さな事で変化してしまうの。だから私の見た未来が変わってしまった」
「それなら、これからはもっと厳重にしないとな」
カイルの決心の言葉に、リリアーヌも無言でうなずいた。
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