前世で百人殺した殺し屋の俺は地獄行きを回避するため現世で百人助けます

盛平

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文化の継続

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 カイルたちの騒動に気づいたトーノマ族と冒険者たちが、カイルたちのところに集まって来た。皆、何故エッラが倒れているのかわからず慌てていた。

 サイラスが周りの者たちに説明をした。トーマスを殺そうとしたモンスの剣にエッラが刺された。それを自分とカイルで治癒魔法で治療したと。

 それを聞いた冒険者たちはトーノマ族を激しくののしった。最初は族長の娘の安否に動揺していたトーノマ族たちは次第にげきごうし出した。これではまた争いに発展してしまいそうだ。

 カイルはだんだん腹が立って来た。カイルは大声で叫んだ。

「静かにしろ!お前たち、何故トーマスとエッラが二人だけで逃げなかったのか考えた事はないのか?二人は土地も国も捨てて逃げてしまえば幸せになれたんだ」

 トーノマ族たちは思いいたらなかったらしく、不安そうに顔を見合わせた。カイルは言葉をやわらげて続けた。

「トーマスとエッラはなぁ、ガンドル国の領地も、トーノマ族の自治区も大切なんだ。あんたたちの事が大好きなんだ。だから駆け落ちしないで、皆に祝福されたかったんだ。たとえ命をかけてもな」

 トーノマ族と冒険者たちは、カイルの言葉をだまって聞いていた。カイルはゆっくりと話し続けた。

「トーノマ族の伝統をたがえる事は不安かもしれない。だがあんたたちはガンドル国の自治区になってわずか八十年で、ガンドル国の便利な文化を吸収していったじゃないか。ガンドル国の文字や言葉、生活用品。それに、昨日馳走になった紅茶は、ガンドル国の北部名産のソラン茶だった。だから、あんたたちなら外国人であるトーマスを受け入れたって、必ずトーノマの伝統文化を継続し続けていけると俺は思う。俺の言いたい事はそれだけだ」

 カイルはそれだけ言うと、仔犬のレッドアイに大きくなるように頼んだ。そして泣き続けているトーマスに、エッラを抱き上げるように言った。トーマスは目を真っ赤にしながら、青ざめた顔のエッラを抱き上げ、レッドアイの背中にまたがった。

 カイルはサイラスとトーノマ族をうながして、トーノマ自治区に向かった。領主への言づては冒険者たちに任せた。


 トーノマ自治区へ到着すると、トーマスに抱き上げられたエッラは自分のベッドに寝かされた。エッラのただ事でない様子に、族長である父親と弟のドーグは慌てふためいた。

 しばらくするとエッラが目を覚ました。エッラのベッドの側には、愛するトーマスと父親、弟がいた。エッラは彼らに弱々しく微笑んで言った。

「お父さま」
「何だ、エッラ」

 族長は目に涙を浮かべながら、愛娘の顔を覗き込んだ。エッラはかんまんな動作で、服の胸ポケットから小さな麻袋を取り出した。麻袋からは真ん中がくり抜かれた、銀細工が出てきた。族長はしげしげと眺めて虫か、と聞いた。

 エッラは微笑んで答えた。

「いいえ、お父さま。花です、アネモネの花をかたどった指輪です。トーマスが私に贈ってくれたのです。ガンドル人は、添い遂げる女性に指輪を贈るのだそうです」

 族長は不恰好な指輪をつまみ上げて、仔細に眺めた。エッラはしばらくしてから話しを続けた。

「トーマスの銀細工の技術はまだまだ未熟です。でも、トーノマ族の文化を継承しようと真摯に腕を磨いています。お父さま、どうかトーマスとの結婚をお許しください」

 愛娘の言葉に、族長はぼうだの涙を流しながらうなずいた。トーマスとエッラの結婚が認められたのだ。

 

 

 

 
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