究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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パティの魔法

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「パティ。戻っておいで」

 ジョナサンの声に、パティははっとして席に戻って言った。

「神父さまの魔法、いつ見ても素敵!あれだけ泣いていたキトリが笑顔になってしまうんですもの」

 はしゃぐパティを、ジョナサンは少し悲しそうに見つめて微笑んだ。

「パティ、別にお前は隠れる事などないのだぞ?」

 パティは黙ってうつむいた。もしパティがあのままテーブルにいれば、村人はパティをにらむだろう。気味の悪い忌子として。パティはその目で見られる事がとても怖かった。

 ジョナサンはゆっくりした動作で、火にかけているスープをかき混ぜた。

「パティ、スープの皿を出しなさい。冷めてしまったから、スープを足そう」

 パティは黙ってジョナサンに皿を渡した。ジョナサンは湯気の出るスープを入れてパティの前に置いてくれた。

 さっきまで食べていたスープはとても美味しかったのに、今食べたスープは少し美味しくなかった。パティはそれが何故だかわかっていた。

 パティが落ち込んでいるからだ。パティは黙って口にスープを運んだ。ジョナサンは穏やかな声で言った。

「なぁ、パティ。神さまにお願いする魔法は決まったかな?」
「いいえ、まだ」
「そうか。もし決めかねているのなら、私と同じ治癒魔法はどうだろうか?」
「・・・。はい、考えてみます」
「まぁ、無理にとは言わないが、私はもう歳だ。いずれこの世を去る」

 パティはビクリと身体を震わせた。神父のジョナサンが亡くなってしまう。パティを守ってくれる唯一の存在がいなくなってしまうという事だ。ジョナサンは優しい笑顔でパティに続けた。

「もしパティが治癒の魔法を授かれば、村の者たちは皆パティを頼ってくれるだろう」
 
 ジョナサンは自分が死んだ後のパティの事を心配しているのだ。パティはジョナサンの死が、自分の今後が恐ろしくて仕方なかった。

 パティが通っている学校でもクラスメイトたちは、神さまから授かる魔法の話題で持ちきりだった。

「ねぇねぇ、もう魔法を何にするか決めた?」
「私はねぇ、絶世の美人になれる魔法!」
「えっ?!本当に?お父さん許してくれたの?」
「ううん。お父さんは植物魔法にしなさいって」
「だよねぇ。うちの親もそう。農家なんだから、植物魔法にしなさいって」

 パティは友達がいないので、クラスメイトの誰とも会話をする事はなかったが、彼らの話しに聞き耳をたてていた。

 クラスメイトのほとんどが親の職業に関係する魔法を選ぶように言われているらしい。

 農業をやっている家の子供たちは、植物魔法を授かるように。鍛冶屋をやっている家の子供たちは鉄生成魔法を授かるように。だが例外ももちろんいる。

「マフサは決めたのか?」
「当たり前だろう!俺は火の魔法にする!なんたって火魔法は魔法の中で一番強力だからな!」
「そんな事言って、親父さん怒らないのか?」
「関係ねぇ!俺は農家なんてしみったれた仕事はしねぇんだよ!冒険者になって大金を稼ぐんだ!トマお前も植物魔法なんかやめにして、飛行魔法にしろ。それて俺を運ぶための移動手段になれ!」
「チェッ、自分勝手なんだから」

 パティはマフサとトマの会話を聞いてゾォッとした。マフサはクラスで一番の乱暴者で、身体も大きい。パティをいじめている筆頭がマフサだ。もしマフサが火魔法を手に入れたら、パティはもっといじめられるだろう。

 マフサはパティに石をぶつけてきたり。わざとぶつかってきてはパティに難くせをつけてひっぱたいたりしていた。

 マフサの暴力はクラスメイトも教師も見て見ぬ振りだった。マフサが火魔法を手に入れたら、パティは大やけどを負わされ、悪くすると死んでしまうかもしれない。

 恐ろしいマフサの発言だったが、一つ心に残るものがあった。それは、冒険者になる事。冒険者は十五歳以上の者なら誰でもなれる職業だ。国中を旅して、依頼をこなす。

 これまでパティは冒険者になりたいなどと一度も考えた事はなかった。だがパティが村から出ていけば、神父のジョナサンは以前のように村人から支援を受ける事ができるだろう。

 教会が貧しいのは、お前のせいなのだ。と、村の大人に言われた事がある。それまで村の教会には村人が食べ物や品物を寄付してくれていた。だがジョナサンが、忌子であるパティを引き取ってから、村人はよっぽどでもない限り、教会に近寄らなかった。

 冒険者になる。それはこの村を飛び出して、旅をする事。パティは少しだけ胸がドキドキした。

 
 

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