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絶望
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火の魔法は出現しなかった。魔法が発動する時の高揚感もまるで感じなかった。
「何故だ?!何故魔法が出ないんだ?!」
「言ったでしょ?マフサ。命だけは助けてあげるって。マフサ、貴方は自分の魔法をファイヤーハンドと言ったわね。つまり神さまはマフサの手に魔法を授けたのよ。貴方の魔法は足元に転がってる両手に付与されていたのよ」
パティはまるで感情のこもらない声で言い放った。
「パティ、テメェ!俺を騙したな?!早くこの落ちている手を俺にくっつけろ!さもないと殺すぞ!」
「命を助けてあげた私たちを殺そうとしたくせに。マックスたちの魔法は時間を巻き戻す魔法。取れた手をくっつけるなんてできないわ」
「なら俺をすぐさまジョナサンのジジイのところに連れて行け!手をぶった斬って、この手をくっつける!」
「確かに神父さまなら切り落とされた手をすぐにくっつける事はできるかもしれない。だけど、それは切断された手が腐敗しない状態であればの話しよ。ここからドミノ村まで時間がかかるわ。その間に切り落とされた手が腐敗していたら、そんな手をくっつけたらそれこそ死んでしまうわ」
マフサはブルブルと身体を震わせて叫んだ。
「ふざけんな!俺は選ばれた人間なんだ。この俺が何で魔法を失わなければいけないんだ?!」
「マフサ、貴方って本当にどうしようもない人間なのね。貴方が特別なわけないじゃない。乱暴でごう慢で、人の命を何とも思わない。しいて言えばこの世界にいる全ての人全員が特別で大切な人なのよ。貴方が暴力で奪った犯罪者さんの命だって特別だったわ」
「ふざけんな!忌子のくせに何俺に説教たれてんだ!殺すぞ!」
「私は忌子なんかじゃないわ。忌子だったのはドミノ村のような小さな世界だけの話しよ。大きな世界に出れば人は外見なんかで差別されないの。私を殺したければ殺しにくればいいわ。魔法の持たないマフサにできればね」
パティはそれきりマフサをいない者のように扱った。トマに偉そうに指示をして、気絶している捕縛した犯罪者を冒険者協会に連れて行くようにとこの場から追い払った。
パティはクソ犬に大きくなるように言うと、背中に乗ってどこかに行った。火剣の掃除屋の姿はもうどこにもなかった。
マフサは回らない頭で必死に考えた。最優先にする事は何か。それは憎らしいパティと火剣の掃除屋の殺害だ。
いや、パティを殺すだけでは飽きたらない。そうだ、パティの愛する者をパティの目の前で殺そう。パティが悲しみにくれているところをなぶり殺しにしてやろう。
魔法を失ったマフサをささえているものは、復讐心だけだった。マフサはふと地面に落ちた二つの手を見つめた。
おかしな感覚だった。これまで十五年間共に成長してきた手だけが切り離されてしまったのだ。
マフサはぼんやりと、これまでの手に
新しい手で触れてみた。まだ温かい。マフサは途端にこれは現実なのだと確信した。マフサは腹の底から雄叫びのような慟哭をあげた。
「何故だ?!何故魔法が出ないんだ?!」
「言ったでしょ?マフサ。命だけは助けてあげるって。マフサ、貴方は自分の魔法をファイヤーハンドと言ったわね。つまり神さまはマフサの手に魔法を授けたのよ。貴方の魔法は足元に転がってる両手に付与されていたのよ」
パティはまるで感情のこもらない声で言い放った。
「パティ、テメェ!俺を騙したな?!早くこの落ちている手を俺にくっつけろ!さもないと殺すぞ!」
「命を助けてあげた私たちを殺そうとしたくせに。マックスたちの魔法は時間を巻き戻す魔法。取れた手をくっつけるなんてできないわ」
「なら俺をすぐさまジョナサンのジジイのところに連れて行け!手をぶった斬って、この手をくっつける!」
「確かに神父さまなら切り落とされた手をすぐにくっつける事はできるかもしれない。だけど、それは切断された手が腐敗しない状態であればの話しよ。ここからドミノ村まで時間がかかるわ。その間に切り落とされた手が腐敗していたら、そんな手をくっつけたらそれこそ死んでしまうわ」
マフサはブルブルと身体を震わせて叫んだ。
「ふざけんな!俺は選ばれた人間なんだ。この俺が何で魔法を失わなければいけないんだ?!」
「マフサ、貴方って本当にどうしようもない人間なのね。貴方が特別なわけないじゃない。乱暴でごう慢で、人の命を何とも思わない。しいて言えばこの世界にいる全ての人全員が特別で大切な人なのよ。貴方が暴力で奪った犯罪者さんの命だって特別だったわ」
「ふざけんな!忌子のくせに何俺に説教たれてんだ!殺すぞ!」
「私は忌子なんかじゃないわ。忌子だったのはドミノ村のような小さな世界だけの話しよ。大きな世界に出れば人は外見なんかで差別されないの。私を殺したければ殺しにくればいいわ。魔法の持たないマフサにできればね」
パティはそれきりマフサをいない者のように扱った。トマに偉そうに指示をして、気絶している捕縛した犯罪者を冒険者協会に連れて行くようにとこの場から追い払った。
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いや、パティを殺すだけでは飽きたらない。そうだ、パティの愛する者をパティの目の前で殺そう。パティが悲しみにくれているところをなぶり殺しにしてやろう。
魔法を失ったマフサをささえているものは、復讐心だけだった。マフサはふと地面に落ちた二つの手を見つめた。
おかしな感覚だった。これまで十五年間共に成長してきた手だけが切り離されてしまったのだ。
マフサはぼんやりと、これまでの手に
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