122 / 212
パティの武器3
しおりを挟む
「俺はパティの約束打ち込みを見て思ったんだ。最初は運動神経が悪いから、剣をけさがけにふりおろせないのかと思っていた。だが違った。剣が下手ならばそれだけ努力すればいいだけだ。パティは無意識に人を傷つける事をさけているんだ」
エラルドの言葉に、パティはギクリと身体が震えた。エラルドの言う通りだったからだ。
パティはエラルドに剣を習いたい、強くなりたいと言ったくせに、本当は剣などちっとも扱えるようになりたくはないのだ。
だが大切なマックスたちに危機が及んだ時、何もできないのはもっと嫌だ。パティはジレンマの中、まとまらない気持ちで剣の練習をしていた。
これでは真剣にパティを鍛えようとしてくれているエラルドとロレーナに失礼だと思いながら。
パティが黙ってしまうと、エラルドはしばらく休けいと言い、パティをその場に座らせ、自身もとなりに座った。
パティはエラルドに自分の本心を話さなければと思った。パティの気持ちが定まらなければ、いくら剣や杖を学んでも実戦では役に立たないだろう。
「エラルド、私ね。マックスたちを守りたいって気持ちは本当。だけどね、暴力を振るいたくない気持ちも本当なの。私ね、小さい頃からドミノ村の人たちからたくさんの暴力を受けていたの。ひどい言葉、何もしてないのに叩かれたり足をひっかけられたり、子供たちは私に石を投げたわ。背中は五点、腹は三点、頭は十点って、私に暴力を振るう事がゲームになっていたの。私ね、村の人たちから受ける暴力も怖かったけど、それよりも怖かったのはね、村の人たちの顔に浮かんだいびつな笑顔だったの、」
話しているうちに、パティの背中がゾクリと冷たくなった。ドミノ村の人たちの顔を思い出してしまったからだ。
パティはドミノ村を出て、冒険者になり、たくさんの人たちと出会った。パティを優しく受け入れてくれる人たちもいた。
パティはそこで気づいてしまったのだ。ドミノ村の人たちの悪意に。ドミノ村の人たちはパティを悪と決めつけ暴力を振るい喜びを得ていたのだ。
パティはドミノ村の人たちがおぞましいと感じた。
パティの身体がブルブルと震え出した。小さい頃の恐ろしい記憶がよまがえって、怖くて怖くて仕方なくなってしまったのだ。
早く震えを止めなければ、エラルドに何か言わなければ。パティが急に震えて黙ったらエラルドは変に思うだろう。
パティが焦れば焦るほど状況は悪化していった。震えはさらにひどくなり、呼吸が荒くなり、息を吸ったり吐いたりする事が難しくなってしまった。
パティはヒュッヒュッと短い呼吸を繰り返した。息がうまく吸えない。焦れば焦るほど、それはひどくなった。
ふと膝に温かみを感じた。パティが視線を向けると、マックスが前脚をかけていた。
エラルドの言葉に、パティはギクリと身体が震えた。エラルドの言う通りだったからだ。
パティはエラルドに剣を習いたい、強くなりたいと言ったくせに、本当は剣などちっとも扱えるようになりたくはないのだ。
だが大切なマックスたちに危機が及んだ時、何もできないのはもっと嫌だ。パティはジレンマの中、まとまらない気持ちで剣の練習をしていた。
これでは真剣にパティを鍛えようとしてくれているエラルドとロレーナに失礼だと思いながら。
パティが黙ってしまうと、エラルドはしばらく休けいと言い、パティをその場に座らせ、自身もとなりに座った。
パティはエラルドに自分の本心を話さなければと思った。パティの気持ちが定まらなければ、いくら剣や杖を学んでも実戦では役に立たないだろう。
「エラルド、私ね。マックスたちを守りたいって気持ちは本当。だけどね、暴力を振るいたくない気持ちも本当なの。私ね、小さい頃からドミノ村の人たちからたくさんの暴力を受けていたの。ひどい言葉、何もしてないのに叩かれたり足をひっかけられたり、子供たちは私に石を投げたわ。背中は五点、腹は三点、頭は十点って、私に暴力を振るう事がゲームになっていたの。私ね、村の人たちから受ける暴力も怖かったけど、それよりも怖かったのはね、村の人たちの顔に浮かんだいびつな笑顔だったの、」
話しているうちに、パティの背中がゾクリと冷たくなった。ドミノ村の人たちの顔を思い出してしまったからだ。
パティはドミノ村を出て、冒険者になり、たくさんの人たちと出会った。パティを優しく受け入れてくれる人たちもいた。
パティはそこで気づいてしまったのだ。ドミノ村の人たちの悪意に。ドミノ村の人たちはパティを悪と決めつけ暴力を振るい喜びを得ていたのだ。
パティはドミノ村の人たちがおぞましいと感じた。
パティの身体がブルブルと震え出した。小さい頃の恐ろしい記憶がよまがえって、怖くて怖くて仕方なくなってしまったのだ。
早く震えを止めなければ、エラルドに何か言わなければ。パティが急に震えて黙ったらエラルドは変に思うだろう。
パティが焦れば焦るほど状況は悪化していった。震えはさらにひどくなり、呼吸が荒くなり、息を吸ったり吐いたりする事が難しくなってしまった。
パティはヒュッヒュッと短い呼吸を繰り返した。息がうまく吸えない。焦れば焦るほど、それはひどくなった。
ふと膝に温かみを感じた。パティが視線を向けると、マックスが前脚をかけていた。
72
あなたにおすすめの小説
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
【完結】神スキル拡大解釈で底辺パーティから成り上がります!
まにゅまにゅ
ファンタジー
平均レベルの低い底辺パーティ『龍炎光牙《りゅうえんこうが》』はオーク一匹倒すのにも命懸けで注目もされていないどこにでもでもいる冒険者たちのチームだった。
そんなある日ようやく資金も貯まり、神殿でお金を払って恩恵《ギフト》を授かるとその恩恵《ギフト》スキルは『拡大解釈』というもの。
その効果は魔法やスキルの内容を拡大解釈し、別の効果を引き起こせる、という神スキルだった。その拡大解釈により色んなものを回復《ヒール》で治したり強化《ブースト》で獲得経験値を増やしたりととんでもない効果を発揮する!
底辺パーティ『龍炎光牙』の大躍進が始まる!
第16回ファンタジー大賞奨励賞受賞作です。
能力『ゴミ箱』と言われ追放された僕はゴミ捨て町から自由に暮らすことにしました
御峰。
ファンタジー
十歳の時、貰えるギフトで能力『ゴミ箱』を授かったので、名門ハイリンス家から追放された僕は、ゴミの集まる町、ヴァレンに捨てられる。
でも本当に良かった!毎日勉強ばっかだった家より、このヴァレン町で僕は自由に生きるんだ!
これは、ゴミ扱いされる能力を授かった僕が、ゴミ捨て町から幸せを掴む為、成り上がる物語だ――――。
異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
最上級のパーティで最底辺の扱いを受けていたDランク錬金術師は新パーティで成り上がるようです(完)
みかん畑
ファンタジー
最上級のパーティで『荷物持ち』と嘲笑されていた僕は、パーティからクビを宣告されて抜けることにした。
在籍中は僕が色々肩代わりしてたけど、僕を荷物持ち扱いするくらい優秀な仲間たちなので、抜けても問題はないと思ってます。
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる