究極妹属性のぼっち少女が神さまから授かった胸キュンアニマルズが最強だった

盛平

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マイラの気持ち2

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 マイラはベッドの横にイスを引き寄せてこしかけ、パティの寝顔を見つめた。

 パティは規則正しく寝息をたてていた。その呼吸は穏やかで、マイラを安心させた。

 マイラはぼんやりとパティと出会ってから今までの事を思い出していた。

 マイラは長く冒険者協会の受付をやっているので、人を見る目を養う事ができた。これまでも将来有望で、心の綺麗な若い冒険者を見つけては、なにくれと世話を焼いていた。

 パティはその中の一人だった。だがパティは、マイラのお気に入りの中でも特別だった。

 見た目が美しいだけではない、心もとびきり綺麗で、そしてひどく心に傷を負っていた。

 マイラはパティを一目見て、力になってあげたい。パティを笑顔にしてあげたいと強く思ったのだ。これはまるで神から受けた啓示のようなものだった。

 マイラはデイジーと張り合って、パティを妹にしてしまった。パティは戸惑いながらも、マイラをお姉ちゃんと呼んでくれたのだ。

 その時の嬉しさと言ったら。マイラは天にも昇るような心持ちになった。マイラは美しくて可愛らしいパティの虜になってしまったのだ。

 マイラがジッとパティを見続けてると、ギィとドアが開いた。

「まだパティを見ているの?早く寝なさいよ、マイラ」

 マイラは首を後ろに捻って、風呂からあがったデイジーをにらみながら答えた。

「本来なら私はパティとたくさんおしゃべりしてから眠るつもりだったのよ」
「はいはい、申し訳ありませんでした。朝起きたら、朝食食べてるパティにたくさん話しかけてうざがられればいいじゃない」
「何よ。そんな事するわけないじゃない私はパティに嫌われたくないよ」

 デイジーはため息をついてマイラの横に立って言った。

「そんなわけない。あたしたちの妹のパティが、そんな事でマイラを嫌いになるわけないじゃない」
「・・・。うん」

 マイラは何となく気恥ずかしくなって、デイジーに話しかけた。

「ねぇ、パティは杖っていう武器を使えるようになったの?」
「ええ。まだまだたどたどしいけど、すごくがんばっているわ」
「・・・、そう」
「?。どうしたの?マイラ」
「ううん。ちょっとだけ、デイジーとパティがうらやましいなって」
「?。何が」
「デイジーとパティは冒険者で、色んな所に旅に出て、自分の力で未来をきりひらいて。あーあ、私も《ボイス》なんて魔法じゃなくって、もっと強い魔法を授かって、冒険者になればよかった」

 マイラはこれまで冒険者になりたいなどと一度も思った事はなかった。冒険者とは地味で汚くて、毎日お風呂にも入れないような仕事だからだ。

 だがパティを見ていると、冒険者とは希望と幸福に満ちた輝かしいものに見えたのだ。

「何言ってんのよ、マイラ。マイラは《ボイス》であたし達の仕事をサポートしてくれているじゃない。マイラはあたし達の大切な仲間、マイラもあたし達と一緒に旅してるんだよ?」

 デイジーの突然の発言に、マイラは驚いて横のデイジーを見上げた。デイジーは照れ臭いのか、ふいとマイラから顔を背けてソファに寝っ転がってしまった。

 デイジーのくせに、たまにはいい事言うじゃないの。マイラはニヤニヤと、毛布にくるまっているデイジーの背中に笑いかけた。

 マイラはパティのサラサラの黒髪をひと撫でしてから、パティの横のベッドに潜り込んだ。
 
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