見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平

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ゼノの志し

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 ゼノはあかりたちを自分の家まで案内した。ゼノの家は深い森の中にあるらしく、いくら歩いても着かなかった。ゼノは高齢にもかかわらず、しっかりした足取りで、森の中をスタスタ歩いて行く。鍛えているアスランと飛んでいるティグリスとグラキエース、馬のアポロンはいいが、あかりは完全にバテていた。

 見かねたアスランがあかりをアポロンに乗せてくれた。あかりがアポロンに乗って、だいぶ経ってから、ゼノの家に到着した。ゼノの家は木造の丸太小屋で、その横に大きな馬舎のような木造の建物が建っていた。ゼノは家には入らず、馬舎のような所にあかりたちを案内した。ゼノは馬舎のドアに声をかける。すると中から二十代とおぼしき女性が現れた。

「おじいちゃんどこに行ってたの?また男爵のお屋敷の周りをウロウロしていたんでしょ?また怒られるわよ?」
「あんなろくでなしに男爵の爵位なんていらん!」

 どうやら彼女はゼノの孫娘のようだ。彼女は大所帯のあかりたちに気づき、にこやかに挨拶してくれた。

「こんにちわ、おじいちゃんがご迷惑をかけたみたいですね?私は孫のエイミーです」

 エイミーは優しい笑顔であいさつをしてくれた。あかりたちもエイミーにあいさつをする。あかりは気になってエイミーに質問した、エイミーも召喚士なのかと。エイミーはうなずいて答えてくれた。

「ええ、私も召喚士よ」

 エイミーは素早く呪文を唱える。突如エイミーの足元に、モフモフのうさぎが出現した。だがただのうさぎではない、うさぎのおでこには小さなツノが生えていた、うさぎの霊獣だ。エイミーはしゃがみこんでうさぎの背中を優しくなでた。

「この子はピピ、私の相棒よ。ほらピピ皆さんにごあいさつして?」
『ぼく、ピピ。よろしくね』

「わぁ可愛い!よろしくね、ピピ」

 あかりはピピのあまりの可愛らしさに、はしゃいでしまった。それを見た子虎の霊獣ティグリスが悔しそうに言う。

『なんだ俺よりチビじゃないか。メリッサ、俺の方がモフモフで可愛いんだぞ』

 ティグリスの言葉を聞いたピピは気分を害したようだ。ピピの身体が突然ムクムク大きくなり、巨大な馬くらいの大きさになった。ピピはティグリスに怒って言う。

『ぼくはチビじゃない!チビはお前だ!』

 ティグリスは何だと、と言って大きな虎の姿になった。ティグリスとピピの一触即発の状況に、あかりは焦ってオロオロしてしまった。その緊張状態を壊したのは、エイミーの大きな笑い声だった。

「あはは!そうね、ピピは大きくてとてもかっこいいわ!そして子虎ちゃんもとってもカッコいい!』
『エイミーほんと!?』
『俺カッコいい?』
「ええ、本当よ。二人共とってもカッコいいわ」

 そう言ってエイミーは大きなピピに抱きついてほおずりをし、ティグリスののどを撫でた。ティグリスは嬉しそうにグルグルと鳴いた。エイミーはヒョイと顔をあげると、あかりにウィンクをした。あかりはホッと胸を撫でおろした。エイミーがピピとティグリスのケンカを止めてくれたのだ。

 エイミーは祖父のゼノに代わり、この馬舎の説明をしてくれた。この馬舎には沢山の霊獣や動物がいた。皆、人間にケガをさせられてここに保護されているというのだ。ここにいる霊獣と動物は、ケガが治ったら自然に帰すのだ。

 あかりは驚いて聞いた、そのような大変な事をゼノとエイミー二人だけでやっているのかと思ったからだ。エイミーは笑って首をふった。ゼノとエイミーに共感してくれる同士たちが共にこの活動を支えてくれているのだそうだ。エイミーの話を聞いて、あかりはホッとしたと共に、悲しい気持ちにもなった。ここにいる霊獣や動物は皆人間に危害を加えられているのだ。あかりたちが深刻な表情を浮かべていると、どこかに行っていたゼノがあかりたちに声をかけた。茶にしよう、と。

 あかりたちは簡易なイスに座り、ゼノが入れてくれた煎じ茶を飲んだ。お茶の色は真っ黒で、味は苦いのではないかと心配になったが、案外飲みやすく美味しかった。ティグリスとグラキエースとアポロンはゼノに水を飲ませてもらっていた。アスランがゼノに言う。

「ゼノ殿、私たちはどのような事をお手伝いさせてもらえますか?」

 ゼノはお茶を一口飲んでから口を開いた。

「一つ聞くが、アスランお主の冒険者レベルはいくつじゃ?」
「はい、32です」
「なんじゃと?!それほどの剣技と魔法を使えながら32じゃと!アスラン、お主依頼をえり好みしているな」

 アスランはギクリとして黙ってしまった。きっと図星なのだろう。アスランはなるべく誰も傷つけない依頼ばかりを選ぶので冒険者レベルが一向に上がらない。冒険者レベルが上がらなければ危険なランクの依頼は受けられない。例えば国王からの依頼などだ。ちなみにあかりはこの間のウーヨ退治で冒険者レベルが3になった。お話にならないので黙っている。ゼノは苦虫を噛みつぶしたような顔をしてから言った。

「まぁよいわ。アスラン、お主の実力はこの目で見せてもらった。じゃからお主たちにある仕事の手伝いを依頼したい」
「可哀想な霊獣を助けるの?」

 突然割りこんできたあかりに、ゼノは笑顔で言った。

「いいや、霊獣の救助はわしの仲間が日夜行っておる。お主たちに頼みたいのは強硬派の霊獣たちを説得しに行く共をしてほしいのじゃ」
「強硬派の霊獣とはどういう事ですか?」

 アスランの質問に、ゼノのため息をついて答えた。

「近ごろ人間による霊獣捕獲が多発しておる。その事に怒った一部の霊獣たちが徒党を組んで人間に復讐しようとしているのだ。わしとその霊獣たちは共に心は同じじゃ。わしはその霊獣たちと手を組みたいのじゃ。さもないと、」

 ゼノが口ごもった。アスランが言葉を続ける。

「霊獣の強硬派が人間を襲えば、人間は霊獣を恐れ、倒そうとする」
「いかにも。霊獣は本来穏やかで、美しく慈悲深い生き物じゃ。だが霊獣と人間の争いが決定的になれば、多くの血が流れる事じゃろう」

 ゼノの言葉にあかりは声をあげる。

「なら霊獣の強硬派と話し合って仲間になってもらえればいいのね?」

 ゼノはあかりを驚いたように見てから、眉根を寄せて苦しそうに笑って言った。

「そうじゃのうメリッサ、お主の言う通りじゃ。話し合って仲間になるのじゃ」

 ゼノの言葉は、あかりに言ったというより、自身に言い聞かせているようだった。アスランとあかりはゼノの依頼に協力する事にした。だが、ゼノはこの依頼を冒険者協会に提出しているので、依頼申請の書きかえが必要になる。ゼノはエイミーにある人物を呼びに行かせた。

 しばらくして若い青年がやって来た。青年はバートといった。彼はテイマーなのだ。ゼノはバートに頼み事をした。冒険者協会の依頼書を書きかえるむねを伝える手紙を出してもらうためだ。バートは鋭い声でフィル、と呼んだ。バートの腕に、一羽のタカがとまった。バートはフィルの顔を愛おしげに指で撫でた。バートはフィルの足にゼノの手紙を入れた筒をくくりつけ、そして窓から放した。フィルは風に乗って勢いよく飛んで行った。ゼノがあかりたちに言った。

「バートは若いが優秀なテイマーなのじゃ。わしらがケガをした霊獣を保護する時、霊獣は気が立っていて、危険な場合がある。バートはその霊獣を一瞬でテイムしてくれるのじゃ」

 あかりは胸がドキドキした。あかりがなりたかった職業、テイマーが今あかりの目の前にいるのだ。モジモジしているあかりに気づいたアスランがバートに声をかけてくれた。

「やぁバート、ここにいるメリッサはテイマーになるのが夢なんだ。何かアドバイスをくれないだろうか?」

 バートはあかりを見てから微笑んでうなずいてくれた。



 
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