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トランド国王
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あかりたちは宰相のガロアにうながされ、城内の奥に進んだ。案内されたのは何と王の玉座だった。王の間には、沢山の兵士が整列していて、その奥には玉座があった。その玉座にゆうぜんと座っているのは、この国の王クリフォード国王だった。
あかりはゴクリとツバを飲み込んだ。この強大なトランド国を治める王に拝謁するのだ。あかりたちは宰相のガロアの後から王の前まで歩き、そして膝をついた。クリフォード国王がアスランとあかりに声をかけた。おごそかで暖かい声だった。
「冒険者アスラン、そしてメリッサ。先ほどの戦い、見事であった」
王の言葉にあかりは驚いた。クリフォード国王はどこであかりたちの戦いを見ていたのだろうか。あかりの顔に疑問の表情が出ていたのだろう。
「あの闘技場を作ったのは余だぞ?お主たちに気づかれずに見物ができるのじゃ。アスラン、お主の剣技実に見事であった。そしてメリッサ、お主も若いのに優秀なテイマーじゃ」
クリフォード国王は目をキラキラさせて子供のようにはしゃいでいた。宰相のガロアは国王の立ち振る舞いを苦々しい顔で見ていた。どうやらクリフォード国王は、剣と魔法が大好きなようだ。コホンという宰相のせきに、クリフォード国王はハッとしたように居ずまいを正し、いげんのある言葉であかりたちに言葉を述べた。
「そなたたち冒険者を呼んだのは他でもない、このトランド国の遠い東の地区が何やら騒がしくなっているようなのだ。そなたたちには、東の地区周辺におもむいて情報を集めてきてほしいのだ。やってくれるか?」
クリフォード国王の言葉にアスランは緊張の面持ちで答える。
「は、必ずや国王陛下のご期待にそえられるものを持ってまいります」
緊張の国王との謁見が終わり、あかりとアスランはホッと息をついた。宰相のガロアから潤沢な資金を受け取り、調査の旅に出発した。あかりは自分の村を出たのが今回が初めてなので、自分が住んでいるトランド国がどんなに広い国土を持っているのかよく知らなかった。それを聞いたアスランは、食堂に入り遅い昼食をとりながら説明してくれた。
アスランは自分のカバンから地図を取り出した。あかりはこの世界の地図を初めて見た。この世界は、大きく分けると五つの大陸に分けられ、その一番大きな大陸にトランド国があった。国と国とは国境の線がひかれているが、トランド国は一番大きかった。あかりは驚きの声をあげてしまった。
「トランド国ってこんなに大きいの?!」
アスランは笑顔で答える。
「ああそうだよ。クリフォード国王が有能で慈悲深いお方だから近隣諸国との関係も良好だよ」
アスランはトランド国の近隣の国の名前も教えてくれた。近隣諸国の国土は、トランド国よりもはるかに小さかった。アスランは地図を指差しながら説明する。
「僕たちがこれから調べに行く土地は、王都からはるか東にある。ここは五十年前には魔の森といって恐れられていたが、五十年前クリフォード国王が即位されてから開墾が開始され、今ではよく作物が育つ肥よくな土地になった。僕らはこの東にある村や町の住人たちに村の状況を聞きに行くんだ」
「でも王さまの依頼って何かばくぜんとしていたわね?東の土地が何やら不穏って」
あかりの質問に、アスランはしばらく考えてからゆっくり答えた。
「メリッサ、僕の話は参考程度に聞いてくれるかい?この東の土地はさっき魔の森と言ったけれど、以前は本当に魔物がいたんだ。その魔物がトランド国に攻めて来たから勇者さまたちが魔王討伐に乗り出したんだ。だが魔王を倒しても、魔の森が側にあるのでは安心できないので、苦心して魔の森を開墾して人間の住める土地にしたんだ。もしかすると東の土地の異変とは、魔物が関係しているかもしれない」
あかりはにわかに不安になった。王さまの依頼内容を聞いて、あまり危険がなさそうに感じていたが、アスランの言う通り魔物が関係していたら、とても危険な任務になるだろう。アスランは、黙り込んでしまったあかりを心配して、つとめて明るく話しを変えた。
「それにしてもクリフォード国王は勇ましいお方だったね。さすが魔王を倒した元勇者さまだよね?」
アスランの言葉にあかりは口をポカンと開けてから大声で言った。
「ええっ!クリフォード国王さまって、あの勇者クリフなの?!」
アスランはこともなげにうなずく。あかりは母が寝物語として話してくれた、魔王を倒した勇者のお話をもう一度思い出していた。勇者クリフは勇敢で優しくて、剣と魔法の使い手で、弟のトランの一番のお気に入りだった。あかりはアスランに詰め寄って聞いた。
「じゃあ、伝説のヒーラー、ユリアさまと、大戦士ドグマさまは?!私ユリアさまのお話大好きなの!」
弟のトランは男の子なので強くてカッコいい勇者クリフが大好きだが、あかりは治癒魔法の使い手ユリアが大好きだった。美しくて強くて優しい女性だ。アスランは困ったように笑ってから答えてくれた。
「大戦士ドグマさまは十年前に亡くなられた。国葬で国王みずから弔われたんだ。ユリアさまが亡くなられたのは三年前だ」
あかりはショックを受けた。召喚士ゼノと勇者クリフに会えたから、当然ヒーラーのユリアと大戦士ドグマも元気なのだろうと思ったからだ。アスランは何も話さないあかりに、黙ってうなずいてから話しを続けた。
「ユリアさまは魔王を倒した後、ゼノさまと結婚された。しばらくは国も落ち着かなかったのでゼノさまもユリアさまもドグマさまも、新しく王になったクリフさまを助けたんだ。だが魔の森が切り拓かれて国が安定すると、ゼノさまとユリアさまは森に居をかまえ、静かに暮らされたと聞いていた。ユリアさまが亡くなられた事はトランド国内に知れ渡ったが、ご本人たっての希望で国葬にはならず近親者だけの弔いだったそうだ」
あかりの脳裏に顔をくしゃくしゃにして笑うゼノの顔が浮かんだ。ゼノは大切な仲間であり、最愛の伴侶を失っていたのだ。あかりは強く思った。この王の依頼、ゼノのためにも必ずやり遂げなければいけないと。
あかりはゴクリとツバを飲み込んだ。この強大なトランド国を治める王に拝謁するのだ。あかりたちは宰相のガロアの後から王の前まで歩き、そして膝をついた。クリフォード国王がアスランとあかりに声をかけた。おごそかで暖かい声だった。
「冒険者アスラン、そしてメリッサ。先ほどの戦い、見事であった」
王の言葉にあかりは驚いた。クリフォード国王はどこであかりたちの戦いを見ていたのだろうか。あかりの顔に疑問の表情が出ていたのだろう。
「あの闘技場を作ったのは余だぞ?お主たちに気づかれずに見物ができるのじゃ。アスラン、お主の剣技実に見事であった。そしてメリッサ、お主も若いのに優秀なテイマーじゃ」
クリフォード国王は目をキラキラさせて子供のようにはしゃいでいた。宰相のガロアは国王の立ち振る舞いを苦々しい顔で見ていた。どうやらクリフォード国王は、剣と魔法が大好きなようだ。コホンという宰相のせきに、クリフォード国王はハッとしたように居ずまいを正し、いげんのある言葉であかりたちに言葉を述べた。
「そなたたち冒険者を呼んだのは他でもない、このトランド国の遠い東の地区が何やら騒がしくなっているようなのだ。そなたたちには、東の地区周辺におもむいて情報を集めてきてほしいのだ。やってくれるか?」
クリフォード国王の言葉にアスランは緊張の面持ちで答える。
「は、必ずや国王陛下のご期待にそえられるものを持ってまいります」
緊張の国王との謁見が終わり、あかりとアスランはホッと息をついた。宰相のガロアから潤沢な資金を受け取り、調査の旅に出発した。あかりは自分の村を出たのが今回が初めてなので、自分が住んでいるトランド国がどんなに広い国土を持っているのかよく知らなかった。それを聞いたアスランは、食堂に入り遅い昼食をとりながら説明してくれた。
アスランは自分のカバンから地図を取り出した。あかりはこの世界の地図を初めて見た。この世界は、大きく分けると五つの大陸に分けられ、その一番大きな大陸にトランド国があった。国と国とは国境の線がひかれているが、トランド国は一番大きかった。あかりは驚きの声をあげてしまった。
「トランド国ってこんなに大きいの?!」
アスランは笑顔で答える。
「ああそうだよ。クリフォード国王が有能で慈悲深いお方だから近隣諸国との関係も良好だよ」
アスランはトランド国の近隣の国の名前も教えてくれた。近隣諸国の国土は、トランド国よりもはるかに小さかった。アスランは地図を指差しながら説明する。
「僕たちがこれから調べに行く土地は、王都からはるか東にある。ここは五十年前には魔の森といって恐れられていたが、五十年前クリフォード国王が即位されてから開墾が開始され、今ではよく作物が育つ肥よくな土地になった。僕らはこの東にある村や町の住人たちに村の状況を聞きに行くんだ」
「でも王さまの依頼って何かばくぜんとしていたわね?東の土地が何やら不穏って」
あかりの質問に、アスランはしばらく考えてからゆっくり答えた。
「メリッサ、僕の話は参考程度に聞いてくれるかい?この東の土地はさっき魔の森と言ったけれど、以前は本当に魔物がいたんだ。その魔物がトランド国に攻めて来たから勇者さまたちが魔王討伐に乗り出したんだ。だが魔王を倒しても、魔の森が側にあるのでは安心できないので、苦心して魔の森を開墾して人間の住める土地にしたんだ。もしかすると東の土地の異変とは、魔物が関係しているかもしれない」
あかりはにわかに不安になった。王さまの依頼内容を聞いて、あまり危険がなさそうに感じていたが、アスランの言う通り魔物が関係していたら、とても危険な任務になるだろう。アスランは、黙り込んでしまったあかりを心配して、つとめて明るく話しを変えた。
「それにしてもクリフォード国王は勇ましいお方だったね。さすが魔王を倒した元勇者さまだよね?」
アスランの言葉にあかりは口をポカンと開けてから大声で言った。
「ええっ!クリフォード国王さまって、あの勇者クリフなの?!」
アスランはこともなげにうなずく。あかりは母が寝物語として話してくれた、魔王を倒した勇者のお話をもう一度思い出していた。勇者クリフは勇敢で優しくて、剣と魔法の使い手で、弟のトランの一番のお気に入りだった。あかりはアスランに詰め寄って聞いた。
「じゃあ、伝説のヒーラー、ユリアさまと、大戦士ドグマさまは?!私ユリアさまのお話大好きなの!」
弟のトランは男の子なので強くてカッコいい勇者クリフが大好きだが、あかりは治癒魔法の使い手ユリアが大好きだった。美しくて強くて優しい女性だ。アスランは困ったように笑ってから答えてくれた。
「大戦士ドグマさまは十年前に亡くなられた。国葬で国王みずから弔われたんだ。ユリアさまが亡くなられたのは三年前だ」
あかりはショックを受けた。召喚士ゼノと勇者クリフに会えたから、当然ヒーラーのユリアと大戦士ドグマも元気なのだろうと思ったからだ。アスランは何も話さないあかりに、黙ってうなずいてから話しを続けた。
「ユリアさまは魔王を倒した後、ゼノさまと結婚された。しばらくは国も落ち着かなかったのでゼノさまもユリアさまもドグマさまも、新しく王になったクリフさまを助けたんだ。だが魔の森が切り拓かれて国が安定すると、ゼノさまとユリアさまは森に居をかまえ、静かに暮らされたと聞いていた。ユリアさまが亡くなられた事はトランド国内に知れ渡ったが、ご本人たっての希望で国葬にはならず近親者だけの弔いだったそうだ」
あかりの脳裏に顔をくしゃくしゃにして笑うゼノの顔が浮かんだ。ゼノは大切な仲間であり、最愛の伴侶を失っていたのだ。あかりは強く思った。この王の依頼、ゼノのためにも必ずやり遂げなければいけないと。
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