64 / 118
ノックスとグリフ
しおりを挟む
霊獣ノックスは、満月が美しい夜空を駆けていた。夜はいい、あらゆる生物が身体を休め眠りの中にいるのだ。ふとノックスは、自身のペットの事を思い出した。ノックスが愛玩動物として飼っている人間だ。ちっとも懐かず、反抗ばかり、およそ愛らしさのカケラもないペットだが、ノックスにとっては大切な存在なのだ。
ノックスは空高く飛び上がると、意識をペットであるグリフに集中した。グリフには目印の魔法をかけてあるので、どこにいるかすぐにわかるのだ。ノックスは自身の闇空間魔法を発動させて、空間魔法の穴に飛び込んだ。ノックスは森の上空に出ると、あるものを探した。焚き火の煙だ。ノックスは夜空に立ち上る煙を発見した。はたしてグリフはそこにいた。どうやら寝ずに火の番をしていたようだ。ノックスに気づいたグリフがくだけた表情で言った。
「ご主人さま。夜の散歩か?」
機嫌が良さそうなグリフに、ノックスは渋面を作って答えた。
『グリフ、お前はペットとしての自覚が足りないようだな』
ノックスの言葉にグリフは苦笑して小さく呪文を唱えた。すると、グリフが二人になった。だが一人は透けていた。透けたグリフはそのまま火の前に座り続けた。もう一人のグリフは立ち上がった。実態を保ったグリフは、大きな虎に抱きすくめられながら幸せそうなに眠っている少女に目を細めてからノックスの背に乗った。
ノックスはグリフを連れて月が見える丘に降り立った。グリフは腰に下げている袋から、ノックスをブラッシングするためのブラシを取り出して、ノックスを丁寧にブラシ始めた。ノックスは心地よさに目を細めた。グリフはノックスをブラッシングしながら、ポツリポツリとそれまであった出来事を話し出した。そのほとんどがメリッサの話しだった。メリッサが一生懸命、剣と鞭の練習をして敵から剣を取り上げたのだと、まるで自分の事のように自慢をしていた。ノックスはとても自然にグリフに質問した。
『メリッサはアーニァに似てるのか?』
グリフのブラシの手が止まった。ノックスは自分の発言に自分で驚いた。グリフと出会ってから、ずつと気になっていたアーニャという存在。だがグリフが話したくないというのならば聞くまいと思っていた事柄だ。ノックスはグリフの顔色をうかがった。グリフは穏やかな顔で答えた。
「いいや、アーニャとメリッサは髪の色と目の色は同じだけど、それ以外は全然違う。メリッサは頑固で融通がきかないけどとても勇敢な女の子だ。アーニャはとても引っ込み思案な女の子だった。泣き虫で臆病で、とても優しい子だった。いや、まだ五歳だったからどんな子だったのかと言われても俺にもよくわからない」
やはりノックスの予想通り、アーニャはグリフの娘だったのだ。そしてアーニャは幼くして死んだ。グリフの心と共に。だがグリフは変わった。それはメリッサという少女に出会ってからだ。生きる事に投げやりで、いつ死んでもいいといった感じのグリフが生き生きし出したのだ。ノックスはその事がとても嬉しかった。
ノックスがそろそろグリフを現在の群にかえさなければと思い始めた頃。自身の背中に重みを感じた。ノックスが後ろを振り向くと、グリフがノックスの背中に顔をうずめて眠っていた。ノックスはため息をついてから自身の闇空間魔法を発動させた。ノックスは一度行った場所なら同じ場所に空間魔法の穴を作る事ができるのだ。ノックスは先ほどグリフたちが焚き火をしていた場所に空間魔法の穴を開いた。
ノックスが空間魔法の穴を覗き込むと、焚き火の炎が見えた。すると焚き火の側から誰かが立ち上がって穴を覗き込んできた。グリフの群れにいる金髪の男だ。この金髪の男はグリフと仲が悪いようだ。群れのオス同士、どちらがリーダーになるのかもめているのかもしれない。
金髪の男はノックスの背中で寝こけているグリフを見て納得したようだ。金髪の男がノックスに指で指し示す。その先を見ると、透明なグリフが横たわって眠っていた。金髪の男は霊獣語がわからないので、ノックスは彼の事がよくわからないが、眠ってしまったグリフを抱き上げる手は丁寧だった。金髪の男は本体のグリフを透明なグリフの側に下ろした。すると透明なグリフは消えた。本体に戻ったのだろう。
金髪の男は起きないグリフに毛布をかけてやると、ノックスに手を振った。ノックスに、案ずるなというジェスチャーなのだろう。グリフはくつろげる群れを見つけたのだ。ノックスは安心して空間魔法を閉じた。
ノックスは空高く飛び上がると、意識をペットであるグリフに集中した。グリフには目印の魔法をかけてあるので、どこにいるかすぐにわかるのだ。ノックスは自身の闇空間魔法を発動させて、空間魔法の穴に飛び込んだ。ノックスは森の上空に出ると、あるものを探した。焚き火の煙だ。ノックスは夜空に立ち上る煙を発見した。はたしてグリフはそこにいた。どうやら寝ずに火の番をしていたようだ。ノックスに気づいたグリフがくだけた表情で言った。
「ご主人さま。夜の散歩か?」
機嫌が良さそうなグリフに、ノックスは渋面を作って答えた。
『グリフ、お前はペットとしての自覚が足りないようだな』
ノックスの言葉にグリフは苦笑して小さく呪文を唱えた。すると、グリフが二人になった。だが一人は透けていた。透けたグリフはそのまま火の前に座り続けた。もう一人のグリフは立ち上がった。実態を保ったグリフは、大きな虎に抱きすくめられながら幸せそうなに眠っている少女に目を細めてからノックスの背に乗った。
ノックスはグリフを連れて月が見える丘に降り立った。グリフは腰に下げている袋から、ノックスをブラッシングするためのブラシを取り出して、ノックスを丁寧にブラシ始めた。ノックスは心地よさに目を細めた。グリフはノックスをブラッシングしながら、ポツリポツリとそれまであった出来事を話し出した。そのほとんどがメリッサの話しだった。メリッサが一生懸命、剣と鞭の練習をして敵から剣を取り上げたのだと、まるで自分の事のように自慢をしていた。ノックスはとても自然にグリフに質問した。
『メリッサはアーニァに似てるのか?』
グリフのブラシの手が止まった。ノックスは自分の発言に自分で驚いた。グリフと出会ってから、ずつと気になっていたアーニャという存在。だがグリフが話したくないというのならば聞くまいと思っていた事柄だ。ノックスはグリフの顔色をうかがった。グリフは穏やかな顔で答えた。
「いいや、アーニャとメリッサは髪の色と目の色は同じだけど、それ以外は全然違う。メリッサは頑固で融通がきかないけどとても勇敢な女の子だ。アーニャはとても引っ込み思案な女の子だった。泣き虫で臆病で、とても優しい子だった。いや、まだ五歳だったからどんな子だったのかと言われても俺にもよくわからない」
やはりノックスの予想通り、アーニャはグリフの娘だったのだ。そしてアーニャは幼くして死んだ。グリフの心と共に。だがグリフは変わった。それはメリッサという少女に出会ってからだ。生きる事に投げやりで、いつ死んでもいいといった感じのグリフが生き生きし出したのだ。ノックスはその事がとても嬉しかった。
ノックスがそろそろグリフを現在の群にかえさなければと思い始めた頃。自身の背中に重みを感じた。ノックスが後ろを振り向くと、グリフがノックスの背中に顔をうずめて眠っていた。ノックスはため息をついてから自身の闇空間魔法を発動させた。ノックスは一度行った場所なら同じ場所に空間魔法の穴を作る事ができるのだ。ノックスは先ほどグリフたちが焚き火をしていた場所に空間魔法の穴を開いた。
ノックスが空間魔法の穴を覗き込むと、焚き火の炎が見えた。すると焚き火の側から誰かが立ち上がって穴を覗き込んできた。グリフの群れにいる金髪の男だ。この金髪の男はグリフと仲が悪いようだ。群れのオス同士、どちらがリーダーになるのかもめているのかもしれない。
金髪の男はノックスの背中で寝こけているグリフを見て納得したようだ。金髪の男がノックスに指で指し示す。その先を見ると、透明なグリフが横たわって眠っていた。金髪の男は霊獣語がわからないので、ノックスは彼の事がよくわからないが、眠ってしまったグリフを抱き上げる手は丁寧だった。金髪の男は本体のグリフを透明なグリフの側に下ろした。すると透明なグリフは消えた。本体に戻ったのだろう。
金髪の男は起きないグリフに毛布をかけてやると、ノックスに手を振った。ノックスに、案ずるなというジェスチャーなのだろう。グリフはくつろげる群れを見つけたのだ。ノックスは安心して空間魔法を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる