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荒れる畑
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あかりたちはラナと出会った森を後にし、歩き続けた。すると大きな畑が広がる村に出た。だが畑を見てみると作物は作られておらず、荒れはてた印象だった。あかりは畑を見回して言った。
「こんなに広い畑なのに、みんな荒れはててるわ」
あかりは畑を開墾する大変さを知っている。それなのにここまで手をかけて作った畑は何も作物を育てる事をしていないのだ。もの悲しい気持ちであかりは畑が続く道を歩いた。すると一人の男性が畑を所在なげに歩いていた。アスランが男性に声をかけた。
「もし、どうしてこの畑は荒れているのですか」
アスランの問いに男は疲れきった表情で答えた。
「ここ最近作物がまったく育たなくなったんだ」
「それまでは作物が育っていたんですか?」
アスランの質問に男性はうなずく。その時、男性を呼ぶ声がした。どうやらここの村人らしい。男性が振り向いて、何事かと質問する。慌てて走って来た村人は大声で叫んだ。
「村長が帰ってきた。大ケガをしている、早くきてくれ!」
男性は血相を変えて村人について走っていってしまった。あかりはアスランとグリフを見た。二人ともうなずいている。ケガ人ならばあかりたちにも何か手伝いができるかもしれない。あかりたちは走っていった男性の後を追った。
広大な畑の先には大きな村があった。その村の大通りに人だかりができていた。あかりたちは人だかりをかき分けて、その中に入った。そこには木の板に乗せられている老人がいた。全身傷だらけだった。
先ほどの男性が、父さんと声をかけている。どうやらこの男性は村長の息子らしい。グリフは男性の肩を掴むと、後ろに下がらせた。そして傷だらけの村長に治癒魔法をほどこした。村長の身体は光に包まれると、傷が見る間に治っていった。村長は目を覚まし、男性は喜んで村長を抱き起こした。村長は弱々しい声で話し出した。
「すまない、皆の衆。やはり納期は待ってもらえなかった。もし作物を納めなけければ、いつものように生け贄を十人よこせと言っていた」
集まった村人たちがザワザワとしだした。村長はグリフに目を向けると、ケガを治してくれた礼を言った。グリフは村長に問うた。
「これは一体どういう事なんだよ。話し合いに行った村長さんが大ケガして帰って来るなんて尋常じゃないぜ」
村長はうなだれながらあかりたちに話し出した。この村はサラエと言って、以前は作物が良く取れ豊かな村だった。だがある時、この村を含む一体を治める領主が変わったのだ。以前この一体を治めていた領主はとても温和で、季節により作物の育ちが悪ければ年貢を減らし、作物の育ちが良ければその時に年貢を多く納めるようにと領民の事をおもんばかってくれていた。
だがその領主が亡くなると、次に継いだ息子はあまりいい領主とはいえなかった。しかも田舎暮らしを嫌っており、ついには領主の権限を他人に売って、自分は王都に行ってしまったのだ。次に領主になった人間は、最低の人間だった。村長があかりたちに話しをしていると、村人たちがささやき出した。
「ゼキーグの奴め」
「ゼキーグのせいでこの村はめちゃくちゃだ」
あかりは村長にたずねた。
「ゼキーグって?」
村長は深いため息をついて答えた。
「ゼキーグという男は、もともとこの村の者じゃった。傲慢でウソつきで、村の鼻つまみ者じゃ。だがゼキーグはある時からおかしなほど金まわりが良くなったのじゃ。畑仕事もろくにせずフラフラしていたのに、大きな家を建て、男爵の爵位を金で買い、ついには領主の立場まで金で買ってしまった。ゼキーグが領主となってから、このサラエの畑で作物がとれなくなってしまったのじゃ」
村長はそこで大きくため息をついてから再び話し出した。
「ゼキーグは月に一度の重い税を課した。そしてその支払いが滞るときは、生け贄として村人を差し出せというのだ」
あかりは驚いてしまった。生け贄とは穏やかではない。グリフが村長に聞く。
「生け贄って、そのゼキーグにどういう目に合わされるんだ?」
「それはわしにもわからん。今日ゼキーグに支払いを伸ばしてほしいと嘆願しに行ったのじゃ。だが期日は伸ばせんかった。それに生け贄として拘束された者の安否を聞いたが・・・、まだ生きている者は牢獄にいて、責め苦に耐えかねた者は自ら命を絶ったそうじゃ」
村長を囲んでいた村人の何人かが悲鳴をあげた。きっと家族が生け贄になった者たちなのだろう。村人たちを重苦しい空気が包む。その空気をうち破った者がいた、村長の息子だ。村長の息子はグリフに懇願した。
「魔法使いさま!この村には病人が沢山いるのです。どうか力をおかしください」
グリフはあかりたちに目線を向けてからうなずいた。
「こんなに広い畑なのに、みんな荒れはててるわ」
あかりは畑を開墾する大変さを知っている。それなのにここまで手をかけて作った畑は何も作物を育てる事をしていないのだ。もの悲しい気持ちであかりは畑が続く道を歩いた。すると一人の男性が畑を所在なげに歩いていた。アスランが男性に声をかけた。
「もし、どうしてこの畑は荒れているのですか」
アスランの問いに男は疲れきった表情で答えた。
「ここ最近作物がまったく育たなくなったんだ」
「それまでは作物が育っていたんですか?」
アスランの質問に男性はうなずく。その時、男性を呼ぶ声がした。どうやらここの村人らしい。男性が振り向いて、何事かと質問する。慌てて走って来た村人は大声で叫んだ。
「村長が帰ってきた。大ケガをしている、早くきてくれ!」
男性は血相を変えて村人について走っていってしまった。あかりはアスランとグリフを見た。二人ともうなずいている。ケガ人ならばあかりたちにも何か手伝いができるかもしれない。あかりたちは走っていった男性の後を追った。
広大な畑の先には大きな村があった。その村の大通りに人だかりができていた。あかりたちは人だかりをかき分けて、その中に入った。そこには木の板に乗せられている老人がいた。全身傷だらけだった。
先ほどの男性が、父さんと声をかけている。どうやらこの男性は村長の息子らしい。グリフは男性の肩を掴むと、後ろに下がらせた。そして傷だらけの村長に治癒魔法をほどこした。村長の身体は光に包まれると、傷が見る間に治っていった。村長は目を覚まし、男性は喜んで村長を抱き起こした。村長は弱々しい声で話し出した。
「すまない、皆の衆。やはり納期は待ってもらえなかった。もし作物を納めなけければ、いつものように生け贄を十人よこせと言っていた」
集まった村人たちがザワザワとしだした。村長はグリフに目を向けると、ケガを治してくれた礼を言った。グリフは村長に問うた。
「これは一体どういう事なんだよ。話し合いに行った村長さんが大ケガして帰って来るなんて尋常じゃないぜ」
村長はうなだれながらあかりたちに話し出した。この村はサラエと言って、以前は作物が良く取れ豊かな村だった。だがある時、この村を含む一体を治める領主が変わったのだ。以前この一体を治めていた領主はとても温和で、季節により作物の育ちが悪ければ年貢を減らし、作物の育ちが良ければその時に年貢を多く納めるようにと領民の事をおもんばかってくれていた。
だがその領主が亡くなると、次に継いだ息子はあまりいい領主とはいえなかった。しかも田舎暮らしを嫌っており、ついには領主の権限を他人に売って、自分は王都に行ってしまったのだ。次に領主になった人間は、最低の人間だった。村長があかりたちに話しをしていると、村人たちがささやき出した。
「ゼキーグの奴め」
「ゼキーグのせいでこの村はめちゃくちゃだ」
あかりは村長にたずねた。
「ゼキーグって?」
村長は深いため息をついて答えた。
「ゼキーグという男は、もともとこの村の者じゃった。傲慢でウソつきで、村の鼻つまみ者じゃ。だがゼキーグはある時からおかしなほど金まわりが良くなったのじゃ。畑仕事もろくにせずフラフラしていたのに、大きな家を建て、男爵の爵位を金で買い、ついには領主の立場まで金で買ってしまった。ゼキーグが領主となってから、このサラエの畑で作物がとれなくなってしまったのじゃ」
村長はそこで大きくため息をついてから再び話し出した。
「ゼキーグは月に一度の重い税を課した。そしてその支払いが滞るときは、生け贄として村人を差し出せというのだ」
あかりは驚いてしまった。生け贄とは穏やかではない。グリフが村長に聞く。
「生け贄って、そのゼキーグにどういう目に合わされるんだ?」
「それはわしにもわからん。今日ゼキーグに支払いを伸ばしてほしいと嘆願しに行ったのじゃ。だが期日は伸ばせんかった。それに生け贄として拘束された者の安否を聞いたが・・・、まだ生きている者は牢獄にいて、責め苦に耐えかねた者は自ら命を絶ったそうじゃ」
村長を囲んでいた村人の何人かが悲鳴をあげた。きっと家族が生け贄になった者たちなのだろう。村人たちを重苦しい空気が包む。その空気をうち破った者がいた、村長の息子だ。村長の息子はグリフに懇願した。
「魔法使いさま!この村には病人が沢山いるのです。どうか力をおかしください」
グリフはあかりたちに目線を向けてからうなずいた。
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