79 / 118
アスランの恐怖
しおりを挟む
アスランは焚き火を見つめながら火の番をしていた。アスラン以外の仲間は皆眠りについている。アスランは虎のティグリスに抱きしめられるようにして眠るメリッサに目線をうつす。彼女は安心しきったように眠っていた。
アスランはゼキーグ退治の後、ある事に思い悩むようになった。それはアスランの中でずっと汚泥のようにちく積されていたものでもあった。バケモノ。ゼキーグは恐怖の表情を浮かべ、アスランを見て言ったのだ。アスランは途端に動けなくなってしまった。敵を前にしながらふがいない限りだ。だがメリッサの機転でグラキエースの氷魔法を使い、凍らせたゼキーグのとどめをグリフがさしてくれたのだ。
アスランは小さい頃からずっと不思議に思っていた事があった。アスランの父親と姉はとても強いのに、それ以外の人間はとても弱いのだ。そのためアスランは父と姉以外の人間と接する時、常に注意を払わなければいけなかった。
だが魔物と契約した人間と戦う時は、その注意は不要だった。アスランはおおいに剣を振るう事ができたのだ。バケモノ。ゼキーグの言う通りかもしれない。アスランは他の人間とは違うのかもしれない。アスランが他の人間に近づけば、その人間を傷つけてしまうかもしれないのだ。もしメリッサを傷つけてしまったら、アスランはそれが怖くて仕方なかった。
アスランが物思いにふけっているとゴソリと物音が聞こえた。アスランが振り向くとグリフが怖い顔でアスランの事をニラんでいた。アスランはため息をついて言った。
「まだ交代の時間には早すぎるよ?」
グリフはここ最近ずっと機嫌が悪い。原因は無論アスランの態度だろう。グリフがアスランに何か話そうとするのをアスランはずっと無視し続けていたのだ。グリフは不機嫌な声で言った。
「俺が何が言いてぇかわかってんだろ?!」
「大きな声を出さないでくれ。メリッサが起きる」
グリフは舌打ちをしてから立ち上がって言った。
「だったら場所かえるぞ、アポロンお前も来い」
「僕たちがいなくなったらメリッサが危ない」
「はぁ?!メリッサはなぁ霊獣とドラゴンに守られているんだぞ?俺たちがいなくったて危なくなんかねぇよ」
アスランは仕方なくアポロンと共にグリフの後について行った。
しばらく歩き林を出ると平地に出た。そこでグリフはアスランたちに振り向いて言った。
「アスラン、テメェ俺が何が言いたいかわかってんだろう?!」
「ゼキーグの時の件だろう?あの時は済まなかった」
「はぁ?そんなんじやねぇよ!アスラン、テメェはメリッサの前から消えるつもりだろう」
「・・・。その方がグリフだっていいだろう?メリッサを連れて行きたがっていたものな」
「アスラン、テメェ本気で言ってんのか?!」
アスランは怒っているグリフが面白くて笑いながら答えた。
「ゼキーグが言ってただろ?僕の事バケモノだって、僕もそう思うんだ。だから僕がメリッサの側にいたら、彼女を傷つけてしまうかもしれない。そうなる前に僕はメリッサの前から消えようと思う」
「はぁぁ?!何バカな事言ってんだ!
アスラン、テメェはメリッサの前から消えて、メリッサに探しに来て欲しいんだろう。アスラン貴方はバケモノなんかじゃないわ、って言ってもらいたいんだろう?!メリッサはなぁ、テメェが何度も人間離れした芸当しても、アスランは泣き虫で臆病で心の優しい人だ。って、ずっとテメェの事信じてるんだぞ?!そんなメリッサを裏切るっていうなら俺は絶対許さねぇ!もしアスランがメリッサの前から消えたら、俺は絶対にメリッサにアスランを探しに行かせねぇ!」
その通りかもしれない。アスランは思った。アスランはメリッサに否定してほしいのだ、貴方はバケモノなんかじゃないって。アスランは自嘲気味に答えた。
「僕は本当に危険なんだ。自分で自分を抑え込める事ができない。だからグリフ、君の事だって傷つけるかもしれない」
「はぁ?テメェみたいなボンクラに俺が倒せる訳ねぇだろ?寝言は寝て言えってんだ」
アスランは笑いながら答えた。
「あの男も僕の事をバカにしてた」
「あん?あの男?」
「僕が最初に殺しかけた男だ」
グリフが息を飲むのがわかった。アスランは言葉を続ける。
「その時僕はまだ五歳だった。母親に連れられて、街まで買い出しに出た時だった。母は店の中で買い物をしていて、僕は荷物番で外で待ってた。するとある男に声をかけられた。その男は冒険者のようだった。腰に大きな剣をさしていて、相当剣の腕に自信があるようだった。男は僕が小さな剣を腰にさしている事を笑ったんだ。子供が持つものじゃないと。僕は腹が立った、そして僕が真剣を持つにふさわしい男だと証明したかったんだ。僕が剣を抜くと相手も剣を抜いて構えた。僕はその男と剣を交えた、だが男の動作はのんびりしていてとてもゆっくりだった。僕は子供だからバカにされたのだと思った。父さんと姉さんの剣はすごく早くて重かったから。僕は男に本気を出させるために剣で男の腹を軽く払った。僕は男が避けると思ったんだ。だが僕の剣は男の腹を斬った。まるで母さんが作ったプディングみたいに手ごたえが無かった。僕の目の前で、男の腹から血が吹き出した。騒ぎをききつけた母がすぐさま男に治癒魔法を施した。母は優秀なヒーラーだったから男は何とか一命を取りとめた。僕は男に謝らなければと思った。だが男は僕を恐怖の表情で見ながら言ったんだ。バケモノ。って」
グリフは黙ってアスランの話を聞いていた。そしてチッと舌打ちしてから話し出した。
「何だ、つまりその男は五歳のガキに負けるほど弱かったって事だろ?深刻そうに話し出すから何かと思ったぜ。真剣を抜いて戦うという事は相手の命を奪う覚悟をする時だ。それは相手がガキだろうと女だろうと関係ねぇ」
アスランはこともなげに言うグリフをぼんやり見ていた。はたしてそうだろうか、五歳のアスランに何も落ち度はなかったのだろうか。アスランが考えあぐねていると、グリフが厳しい顔で言った。
「アスラン。俺と賭けをしろ」
アスランはゼキーグ退治の後、ある事に思い悩むようになった。それはアスランの中でずっと汚泥のようにちく積されていたものでもあった。バケモノ。ゼキーグは恐怖の表情を浮かべ、アスランを見て言ったのだ。アスランは途端に動けなくなってしまった。敵を前にしながらふがいない限りだ。だがメリッサの機転でグラキエースの氷魔法を使い、凍らせたゼキーグのとどめをグリフがさしてくれたのだ。
アスランは小さい頃からずっと不思議に思っていた事があった。アスランの父親と姉はとても強いのに、それ以外の人間はとても弱いのだ。そのためアスランは父と姉以外の人間と接する時、常に注意を払わなければいけなかった。
だが魔物と契約した人間と戦う時は、その注意は不要だった。アスランはおおいに剣を振るう事ができたのだ。バケモノ。ゼキーグの言う通りかもしれない。アスランは他の人間とは違うのかもしれない。アスランが他の人間に近づけば、その人間を傷つけてしまうかもしれないのだ。もしメリッサを傷つけてしまったら、アスランはそれが怖くて仕方なかった。
アスランが物思いにふけっているとゴソリと物音が聞こえた。アスランが振り向くとグリフが怖い顔でアスランの事をニラんでいた。アスランはため息をついて言った。
「まだ交代の時間には早すぎるよ?」
グリフはここ最近ずっと機嫌が悪い。原因は無論アスランの態度だろう。グリフがアスランに何か話そうとするのをアスランはずっと無視し続けていたのだ。グリフは不機嫌な声で言った。
「俺が何が言いてぇかわかってんだろ?!」
「大きな声を出さないでくれ。メリッサが起きる」
グリフは舌打ちをしてから立ち上がって言った。
「だったら場所かえるぞ、アポロンお前も来い」
「僕たちがいなくなったらメリッサが危ない」
「はぁ?!メリッサはなぁ霊獣とドラゴンに守られているんだぞ?俺たちがいなくったて危なくなんかねぇよ」
アスランは仕方なくアポロンと共にグリフの後について行った。
しばらく歩き林を出ると平地に出た。そこでグリフはアスランたちに振り向いて言った。
「アスラン、テメェ俺が何が言いたいかわかってんだろう?!」
「ゼキーグの時の件だろう?あの時は済まなかった」
「はぁ?そんなんじやねぇよ!アスラン、テメェはメリッサの前から消えるつもりだろう」
「・・・。その方がグリフだっていいだろう?メリッサを連れて行きたがっていたものな」
「アスラン、テメェ本気で言ってんのか?!」
アスランは怒っているグリフが面白くて笑いながら答えた。
「ゼキーグが言ってただろ?僕の事バケモノだって、僕もそう思うんだ。だから僕がメリッサの側にいたら、彼女を傷つけてしまうかもしれない。そうなる前に僕はメリッサの前から消えようと思う」
「はぁぁ?!何バカな事言ってんだ!
アスラン、テメェはメリッサの前から消えて、メリッサに探しに来て欲しいんだろう。アスラン貴方はバケモノなんかじゃないわ、って言ってもらいたいんだろう?!メリッサはなぁ、テメェが何度も人間離れした芸当しても、アスランは泣き虫で臆病で心の優しい人だ。って、ずっとテメェの事信じてるんだぞ?!そんなメリッサを裏切るっていうなら俺は絶対許さねぇ!もしアスランがメリッサの前から消えたら、俺は絶対にメリッサにアスランを探しに行かせねぇ!」
その通りかもしれない。アスランは思った。アスランはメリッサに否定してほしいのだ、貴方はバケモノなんかじゃないって。アスランは自嘲気味に答えた。
「僕は本当に危険なんだ。自分で自分を抑え込める事ができない。だからグリフ、君の事だって傷つけるかもしれない」
「はぁ?テメェみたいなボンクラに俺が倒せる訳ねぇだろ?寝言は寝て言えってんだ」
アスランは笑いながら答えた。
「あの男も僕の事をバカにしてた」
「あん?あの男?」
「僕が最初に殺しかけた男だ」
グリフが息を飲むのがわかった。アスランは言葉を続ける。
「その時僕はまだ五歳だった。母親に連れられて、街まで買い出しに出た時だった。母は店の中で買い物をしていて、僕は荷物番で外で待ってた。するとある男に声をかけられた。その男は冒険者のようだった。腰に大きな剣をさしていて、相当剣の腕に自信があるようだった。男は僕が小さな剣を腰にさしている事を笑ったんだ。子供が持つものじゃないと。僕は腹が立った、そして僕が真剣を持つにふさわしい男だと証明したかったんだ。僕が剣を抜くと相手も剣を抜いて構えた。僕はその男と剣を交えた、だが男の動作はのんびりしていてとてもゆっくりだった。僕は子供だからバカにされたのだと思った。父さんと姉さんの剣はすごく早くて重かったから。僕は男に本気を出させるために剣で男の腹を軽く払った。僕は男が避けると思ったんだ。だが僕の剣は男の腹を斬った。まるで母さんが作ったプディングみたいに手ごたえが無かった。僕の目の前で、男の腹から血が吹き出した。騒ぎをききつけた母がすぐさま男に治癒魔法を施した。母は優秀なヒーラーだったから男は何とか一命を取りとめた。僕は男に謝らなければと思った。だが男は僕を恐怖の表情で見ながら言ったんだ。バケモノ。って」
グリフは黙ってアスランの話を聞いていた。そしてチッと舌打ちしてから話し出した。
「何だ、つまりその男は五歳のガキに負けるほど弱かったって事だろ?深刻そうに話し出すから何かと思ったぜ。真剣を抜いて戦うという事は相手の命を奪う覚悟をする時だ。それは相手がガキだろうと女だろうと関係ねぇ」
アスランはこともなげに言うグリフをぼんやり見ていた。はたしてそうだろうか、五歳のアスランに何も落ち度はなかったのだろうか。アスランが考えあぐねていると、グリフが厳しい顔で言った。
「アスラン。俺と賭けをしろ」
0
あなたにおすすめの小説
不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます
天田れおぽん
ファンタジー
ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。
ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。
サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める――――
※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
余命半年のはずが?異世界生活始めます
ゆぃ♫
ファンタジー
静波杏花、本日病院で健康診断の結果を聞きに行き半年の余命と判明…
不運が重なり、途方に暮れていると…
確認はしていますが、拙い文章で誤字脱字もありますが読んでいただけると嬉しいです。
没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~
草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。
レアらしくて、成長が異常に早いよ。
せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。
出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
【完結】憧れのスローライフを異世界で?
さくらもち
ファンタジー
アラフォー独身女子 雪菜は最近ではネット小説しか楽しみが無い寂しく会社と自宅を往復するだけの生活をしていたが、仕事中に突然目眩がして気がつくと転生したようで幼女だった。
日々成長しつつネット小説テンプレキターと転生先でのんびりスローライフをするための地盤堅めに邁進する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる