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盛平

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エイミーとピピ

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 エイミーは肩で激しく呼吸をした。契約霊獣のうさぎのピピと共に戦い始めてどれくらい経っただろうか。エイミーはこんなに長く続く戦いを未だかつて経験した事がなかった。目の前のサイの霊獣はエイミーたちの攻撃にあまりダメージを受けていないようだった。エイミーは契約霊獣のピピを気づかい声をかけた。

「ピピ、大丈夫?」
『平気だよエイミー!』

 ピピはやせ我慢をしてそう言うが、ピピと契約しているエイミーには、ピピの魔力の消もうは激しく限界に近づいている事が分かっていた。エイミーは自身のふがいなさに悔しくなり、目から涙がにじんできた。エイミーは召喚士養成学校を出て、霊獣のピピと契約し五年が経っていた。もういっぱしの召喚士だと自負もしていた。だが実際は、何かあれば祖父のゼノと精霊のノーマや、テイマーのバートと契約霊獣のポーに助けられてばかりなのだ。

 だがこの場ではエイミーとピピ二人だけでサイの霊獣を倒し保護しなければならないのだ。エイミーの気持ちがピピに伝わったのだろう。ピピが心配そうに後ろのエイミーに振り向く。エイミーは笑顔で大丈夫と答えた。だが心がつながっているピピには、エイミーの気持ちが敗北に怯えている事に気づいているだろう。

 エイミーは必死に考えた。今この状況を打開する策を考えなければいけない。だが土魔法を使うピピにはこの場所は適していないのだ。ピピが植物魔法を使うには地面に土がなくてはならない。だがゼノとノーマは違う。たとえ土の地面から遠く離れていても植物魔法を縦横無尽に使う事ができるのだ。エイミーはふと、師匠である祖父のゼノの言葉を思い出した。

 エイミー、ピピ。お主たちはいつもわしとノーマと同じ事をしようとしている。ノーマが植物魔法を多用するのは、ノーマが植物魔法が得意だからじゃ。だからの、エイミー。お主はピピの得意な土魔法を伸ばしてやらなければいかんのじゃ。

 エイミーは自問する。ピピの得意な魔法、ピピは鉱物魔法が得意だ。それはエイミーが、ピピが土魔法で出現させた宝石を綺麗とほめたからだ。ピピはエイミーにほめられた事がよほど嬉しかったのか、よく宝石を作り出してくれた。ルビー、サファイヤ、エメラルド、ダイヤモンドにオパール。どれもため息が出るような美しさだった。

 エイミーの祖父、ゼノが活動している動物や霊獣の保護活動はとにかく金がかかる。ゼノの志しに賛同する支援者の寄付金もあるにはあるがとても足りない。そのためエイミーはピピに宝石を出してもらい、その宝石を売って保護活動の資金にしていたのだ。だが今この場でピピが綺麗な宝石を出してもどうにもならない。

 そこでエイミーはハッとした。自分が固定概念にとらわれていた事に。人間である自分が、霊獣のピピの可能性を決めるなど何とおろかしい事だろうか。ピピは見た目は可愛い小さなうさぎだが、百年以上も生きている高貴な霊獣なのだ。エイミーは知らずに笑みを浮かべていた。エイミーはゆっくりと深呼吸してからピピに叫んだ。

「ピピ!鉱物魔法!鋭利にとがったダイヤモンドを沢山作って!」

 霊獣のピピはエイミーの指示に一瞬戸惑った表情をしたが、指示通りに沢山のダイヤモンドを出現させた。エイミーとピピの周りにはダイヤモンドが浮遊している。エイミーはピピに次の指示を出す。

「ピピ、このダイヤモンドを高速回転させて!そしてサイの霊獣に攻撃!」
『わかった!』

 ピピは出現させたダイヤモンドを高速回転させた。そしてダイヤモンドはサイの霊獣めがけて飛んで行った。サイの霊獣は攻撃に備えて風防御魔法を使う。ピピのダイヤモンド攻撃は、サイの風防御魔法にはばまれてしまった。それを見たピピは落胆したがエイミーは諦めなかった。ピピにもう一度指示を出す。

「ピピ!このまま高速回転を続けて!」

 ピピはハッとしてからうなずいた。ピピの作り出したダイヤモンドは風防御魔法の厚い壁にはばまれていたが、ピピはダイヤモンドを高速回転させる事をやめなかった。そして少しづつだがダイヤモンドが風防御魔法の壁を破壊していった。サイの霊獣も防御魔法を破られてはたまらないと必死だ。だが軍配はエイミーとピピにあがった。ピピのダイヤモンド魔法がサイの霊獣の防御魔法をうち破ったのだ。

 サイの霊獣はピピのダイヤモンド魔法を受けて大ケガを負ったが倒れるほどではなかった。サイの霊獣がエイミーとピピに攻撃をしかけようとする。エイミーがピピに防御魔法を指示しようとしたが、ピピがふらついた。もう魔力の限界なのだ。エイミーはピピに飛びつくよう抱きしめると背中を向けた。無駄とわかっていてもピピをサイの霊獣の攻撃魔法から守りたかったのだ。エイミーの腕の中でピピがうめくように言った。


『エイミー、逃げて』

 エイミーはピピを微笑んで見つめながら答えた。

「ピピ、どんな時でも私たちはずっと一緒よ」

 エイミーはピピを強く抱きしめるとサイの霊獣の攻撃に備えた。だがいつまで経ってもサイの攻撃はエイミーたちに襲いかかってこなかった。エイミーは不思議に思い後ろを振り向くと、そこには雄々しい雄鹿の霊獣が立っていて、サイの霊獣の攻撃魔法を強力な火防御魔法で押さえ込んでいた。エイミーは雄鹿の霊獣に叫んだ。

「シエルバ!」

 雄鹿の霊獣シエルバはエイミーたちを振り向いて言った。

 『まったくバカな人間の娘だ。命をかけて霊獣を守ろうとするとは』

 エイミーに抱っこされたままのピピは弱々しい声でシエルバに怒った。

『エイミーはバカじゃないやい!』

 シエルバはそんなエイミーとピピを見て微笑んで言った。

『人間の娘、気に入った。後は私に任せろ』

 シエルバはそう言うと、強力な炎攻撃魔法をサイの霊獣に放った。ピピの攻撃で弱っていたサイの霊獣は、シエルバの攻撃魔法をもろに受けて動かなくなった。それを見たエイミーは叫んだ。

「乱暴しないで!あのサイの霊獣は操られているだけなのよ?!」

 シエルバはエイミーを面倒臭そうに見て答えた。

『傷つけないように戦おうとするからまどろっこしいのだ。ケガをしても治癒魔法でどうとでもなる』

 エイミーは小さくため息をついた。どうやらシエルバはおおざっぱな霊獣のようだ。だがエイミーは悟った。自分たちはサイの霊獣に勝ったのだ。



 
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