見習い動物看護師最強ビーストテイマーになる

盛平

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グリフの推測

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 グリフはのどかな陽気の中ベンチに座っていた。となりには気にくわないアスランも一緒だ。グリフの大切な娘のメリッサは、城下町で買い物に行っている。メリッサはこれからテイマー養成学校に通うため、テイマーの先輩であるバートのアドバイスで、学校で使うものを買いに行っているのだ。グリフもついて行きたかったのだが、大人数でお店に入るのは迷惑だからとメリッサに言われて、グリフとアスランとアポロンは留守番をされられているのだ。

 これはきっとメリッサの気づかいなのだろう。もうすぐメリッサはテイマー養成学校に入学するため、グリフたちは別れ別れになるのだ。グリフとしては、すきあらばメリッサの学校に遊びに行くつもりだ。だがアスランとアポロンとはもうすぐ別れて会うこともないだろう。メリッサがグリフとアスランに仲良くしてほしいと思っている事にはとっくに気づいている。だが今さらな感もする。グリフはアスランといれば、からかうかケンカするかのどちらかしかないのだ。

 アスランはグリフの横に座り、あからさまに深いため息をついていた。かかわると面倒くさそうなので無視を決めこむ。何故かアポロンは魔法で小さくなっていて、アスランの膝の上で丸くなっていた。具合でも悪いのだろうか。グリフがぼんやりアポロンを見ていると、アスランがキッとグリフをにらんで言った。

「グリフ。僕がこんなに悩んでいるのに、どうしたのかって聞いてくれてもいいんじゃないか?」
「嫌だよ。面倒くさいから無視してたの!悩みならアポロンに聞いてもらえよ」

 するとアポロンが顔をグリフに向けて言った。

『アスランの悩みは聞いたぞ?朝までな。グリフ、アスラン頼むからケンカしないで静かに寝かせてくれ』

 アポロンはそう言うと、また丸まって眠ってしまった。グリフはアポロンを哀れそうに見つめてから言った。

「アポロン、そりゃあ災難だったなぁ。仕方ねぇ、アスラン手短かに話せ」
「実は、話せば長くなるんだが・・・」
「テメェ!のっけから俺の話無視すんじゃねぇよ!」

 グリフがどなると、アポロンが顔を上げてグリフをキッとにらむ。グリフは仕方なく小声になる。アスランの要領の悪い話を聞いていくと、どうやら舞踏会で気になる女に出会ったというのだ。そこでグリフはものすごく腹が立った。アスランは自分で気づかないうちにメリッサに惹かれているはずだ。それなのに舞踏会で一度会っただけの娘に惚れるなんて。昨夜の舞踏会にいた小娘たちは、皆貴族のハイエナのような奴らだった。グリフは、アスランへの対応がつっけんどんになりながらも質問した。

「で、その女の名前と父親の爵位はわかっているのか?」
「いや、名前だけ。苗字もわからないんだ。彼女の名は、あかり」

 そこでグリフは仰天した。慌ててアスランに聞き返す。

「おい、本当にその女は自分の事をあかりと言ったのか?」
「うん。それだけしか教えてくれなかった」

 グリフはハァァッと大きなため息をついた。昨夜メリッサがアスランを救出しに行き、おかしな顔をして一人で帰ってきた。アスランの様子が変だというのだ。だからアスランをベンチに座らせたまま、グリフたちを呼びに来たのだ。そこでグリフの魔法薬の効果が切れ、メリッサは十六歳の少女に戻った。白いドレスでは少々ブカブカなので、グリフは魔法でそれまで着ていたグリーンのドレスとエメラルドのアクセサリーに戻した。だが靴だけはグリフの私物だったため、そのままだった。

 メリッサの話を聞いた小さなアポロンが、自分が迎えに行くと言って飛んでいった。メリッサはダンスをして疲れたようで眠そうだった。グリフはメリッサを抱っこしてアスランの帰りを待った。

 つまりアスランは魔法で少しだけ成長したメリッサに気づかなかったのだ。グリフは地をはうような低い声でアスランに言った。

「アスラン。テメェ、バカだバカだと思っていたがそこまでかぁ」
「そんな事言わずに相談に乗ってくれよ。あかりはグリフの事をよく話していた。・・・。なぁ、グリフとあかりはどういう関係なんだ?」
「はぁ?あかりは俺の娘みてぇなもんだよ」
「えっ、彼女は大人の女性じゃないか」
「それでもそうなの!」
「・・・、わかった。なぁグリフ、今度いつあかりに会えるかな?」
「はぁ?いつだぁ?そうだな、四年後くらいかな?」
「四年?!そんなに待たなきゃ会えないのかい?!」
「それくらい待てんだろ。メリッサだってテイマーの学校卒業すんのに四年かかるんだから」
「ああ、そうだね。これからメリッサにも会えなくなるんだ、さびさいなぁ」

 グリフはアスランののんきさ加減に心底腹が立った。グリフは語気を荒げてアスランに言った。

「アスラン!テメェ、メリッサのこと泣かせたらタダじゃすまねぇからな?!」
「当然だろ?メリッサは僕の可愛い妹だ、ずっと大切にするよ」

 アスランはグリフの目をしっかりと見て答えた。グリフはアスランの事を一応信じてやる事にした。アスランは、そういえばと前置いてグリフに言った。

「グリフ、君が生きていてくれて本当に良かった」

 グリフはアスランを驚いたように見つめてから、チッと舌打ちして言った。

「ヘッ、別にテメェのために生き返ったわけじゃねぇ。メリッサが、グリフ死なないでって。可愛くオネダリしてくれたから生き返ったんだよ!」
「そうだね。それでもありがとう、僕もすごく嬉しいんだ」

 グリフは何と答えてよいかわからず、渋い顔をして黙った。グリフは本当は、アスランが嫌いというより苦手なのだ。アスランは純粋で真っ直ぐな人間だ。うす汚れた自分をかえりみると、アスランを否定したくなるのだ。偽善者、と。だがアスランは心からグリフが生きている事を喜んでいるようだ。何とも面はゆい、いたたまれない感じがした。

 グリフが固まっていると、そこに救いの女神が現れた。

「グリフ、アスラン、ケンカしなかった?」
「メリッサァ。勿論だよ」

 グリフたちの前に買い物を終えたメリッサが帰ってきたのだ。メリッサは疑わしそうな目でグリフとアスランを交互に見つめてから苦笑した。その表情は、手のかかる子供たちを見る母親のようだった。グリフはベンチから立ち上がってメリッサに言った。

「メリッサ、買った荷物を持ってやるぞ?」
「ありがとうグリフ。でも平気よ?アスランが魔法をかけてくれたカバンに全部入ってしまったから」

 グリフはうなずいてメリッサの手をつないだ。アスランも小さなアポロンを肩に乗せて立ち上がると、メリッサの反対の手を取った。メリッサは苦笑したがそのまま歩き出した。グリフたちの後ろをティグリスとグラキエースが飛んでついてくる。皆別れがたいのだ、メリッサは明日テイマー養成学校に行く。
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