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盛平

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その後のアスラン

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 眼下には広大な平原が広がっている。アスランは愛馬アポロンの背に乗り、空を飛んでいた。日の光が柔らかくアスランたちを照らし、アポロンのたてがみは日の光を受けてキラキラと絹糸のように輝いていた。アスランはたわむれにアポロンのたてがみを手ですいた。アスランのちょっかいにアポロンが気づいたのだろう。アポロンは首を少し後ろに向けて言った。

『どうしたのだ、アスラン』
「ごめん、アポロン。アポロンのたてがみがとても綺麗だったから思わず触ってしまったんだ」
『?、まぁ別に構わないが、疲れたら言うのだぞ?アスラン』

 アスランは思わず苦笑した。アポロンはとにかくアスランに甘い。それを見るとグリフはいつも、甘やかしすぎだと言って怒っていた。アスランはしみじみと幸せを感じていた。

 アスランが父の許しを受けて冒険者になった時は、暗たんたる心持ちだった。その時は、愛馬アポロンを穏やかに見送ってやりたい一心だった。アポロンは二十八歳という年齢で、馬の寿命が近づいていたのだ。アスランはたえずアポロンの死に怯えていた。アスランにとってアポロンは唯一の心の支えだったのだ。

 アスランは友達と呼べる存在は愛馬アポロンしかいなかった。勇者である父も姉も、勇者とは孤高の存在ゆえ、友達など不要だと言い切っていた。そのためアスランは魔法学校に通っている時も、寮生活ではなく、自宅から通いだった。朝日が昇る前から家を出て山を二つ越えて魔法学校に通い、授業が終われば再び山を二つ越えて家に帰り、父の剣の修行を受けていたのだ。アスランのクラスメイトたちは友達を作って楽しそうにしていた。アスランは、そんな彼らを横目で見ながらうらやましいと常に思っていた。

 アスランが家族以外の人間と深く関わりを持ったのは、メリッサとグリフが初めてだった。グリフはアスランと年齢が近そうだったので、アスランはグリフと友達になりたかった。だがグリフは見た目よりはるかに年齢がいっているようだったし、アスランの事を嫌っていたようで、友達にはなれなかった。だがグリフは、アスランが魔物と契約したゼキーグにバケモノとののしられた時、グリフは反論してくれたのだ。アスランはバケモノじゃないと言ってくれた、それがどれほど嬉しかったか。グリフは、自身の力に恐怖しているアスランに自信を持たせようともしてくれた。グリフはアスランにとっては大切な存在になったのだ。

 それに、アスランはメリッサという強くて優しい少女に出会った。彼女と出会えたからか、アスランの友アポロンが霊獣になる事ができたのだ。メリッサはアスランの事を、臆病で弱虫で優しい人と言ってくれた。そして、強くならなければとやっきになるアスランに、そのままでいいのだと言ってくれた。メリッサの言葉に、アスランは今までがんじがらめに固まっていた心がフワリと軽くなったのだ。メリッサはアスランの心を救ってくれたのだ。アスランにとってメリッサは、女神のような存在なのだ。

 アスランはメリッサともグリフとも別れて、アポロンと共に別の道を歩むのだ。召喚士ゼノとの約束、人間に捕らえられている霊獣を救出する活動をするのだ。メリッサたちと離れる事は辛かったが、アスランの持つ力を誰かの為に役立てる事ができるのは喜びだった。アポロンがアスランに声をかけた、ゼノの家までもうすぐだと。

 アスランを乗せたアポロンは、以前たずねたゼノの家と霊獣たちを保護する木造の舎の前におり立った。アスランは舎のドアを緊張しながら叩いた。しばらくするとドアが開き、そこには驚いた顔のゼノが立っていた。アスランは嬉しくなってゼノに言った。

「ゼノ殿、約束通りここで働かせてください」
「アスラン、本当に来てくれたのじゃな。だが、よいのか?お主は今や立派な勇者じゃ。わしらのやっている地味な仕事ではなく、もっと華やかな活躍の場があるのではないのか?」

 ゼノの言葉にアスランは困ってしまった。ここに来ては迷惑だったのだろうか。アスランがおずおずとたずねようとすると、ゼノの後ろからエイミーが顔を出して言った。

「キャア。アスラン、アポロン待っていたわ!それでね、早速なんだけどバートとポーと一緒に霊獣を救出に行ってほしいの」

 エイミーの言葉にゼノは渋い顔で言った。

「おいエイミー。アスランとアポロンは今到着したばかりじゃ。少し休ませてやらんか」

 エイミーをいさめようとするゼノに、アスランはせっついて言った。

「い、いえ。ゼノ殿、私とアポロンはちっとも疲れていません。すぐに出発できます。ここで働かせていただけますか?!」
「ああ、勿論じゃ。アスランとアポロンが仲間に加わってくれれば心強い」

 ゼノの言葉にアスランは嬉しくなって、はいっ。と返事をした。エイミーの後ろからポーを肩に乗せたバートがやって来て言った。

「やぁアスラン、アポロン。よろしく」
「まっていたわよ。二人とも」

 救出に行く霊獣の居場所はバートが知っているので、アスランとバートとポーはアポロンの背に乗って出発する事にした。ゼノとノーマとエイミーとピピに送り出され、アスランは再びアポロンに乗って空を飛んだ。アスランの後ろに乗っているバートが苦笑まじりに言った。

「すまないね。アスラン、アポロン。エイミーは動物と霊獣には優しいんだけど人使いが荒いんだ」

 アスランは笑って問題ないと返した。アスランは新たな仲間と共に冒険に出発した。



 
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