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盛平

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その後のグリフ

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 風が顔を強くたたく。グリフは懐かしさと悲しさがないまぜになった気持ちで空を飛んでいた。グリフは契約霊獣のノックスの背に乗り、ある場所を目指していた。

 狼の霊獣ノックスは、メリッサの助力で養い子のルプスと和解する事が叶った。なのでグリフは、ノックスがグリフとの真の名の契約を解除するものと思っていた。何故ならノックスは、もうグリフのような可愛くもないペットの世話をする必要がなくなったからだ。グリフがそれとなくノックスに聞くと、ノックスはぶっきらぼうに答えたのだ。

『俺はメリッサの事が気に入った。ルプスの契約者でもあるしな。メリッサはグリフが死にそうになった時、とても悲しそうだった。だからこれからも俺がグリフを守るからな。いいな?危険な目にあったら俺を呼ぶのだぞ』

 どうやら主人とペットの関係は継続されるらしい。グリフはなんだかおもはゆい気持ちでいっぱいになった。グリフはノックスに甘えているのだ。幼な子が無条件で親に甘えるように、ノックスのおおらかな愛情の中でくつろいでいるのだ。最初グリフは、ノックスに無理矢理真の名の契約をされた時、激しくいきどおっていた。グリフは早く娘のアーニャの待つ死の国へ行きたかったのだ。だがノックスの気長な愛情に触れているうちに、グリフにとってノックスはなくてはならない存在になったのだ。

 グリフはこれから娘のアーニャが眠る場所へ向かっている。アーニャを失ってから、グリフは一度もアーニャの墓におとずれる事がなかった。否、できなかった。狂おしいほど行きたいと思うと同時に、アーニャの死を受け入れられない恐怖で、アーニャの墓の前に立つ勇気が持てなかったのだ。だがそんなグリフに勇気を与えてくれたのが、娘のメリッサだった。

 メリッサは、グリフが娘のアーニャを失って、気がふれんばかりに悲しんでいるのを見て、泣きながら悲しまないでと言ってくれたのだ。メリッサは転生者だった。若くして前世を終え、この現世に転生したのだと言っていた。メリッサには前世での家族の記憶がありありと存在するのだ。どんなに苦しいだろうか、メリッサの気持ちはおそらくグリフにしかわからないだろう。

 メリッサと出会い、メリッサがいてくれたからこそグリフはアーニャと向き合う勇気が持てたのだ。メリッサはここにはいない。メリッサは自分の道を歩きはじめたのだ。だがこれからもメリッサと会えるだろう、何故ならグリフはメリッサの三人目の父親なのだから。その時には多少邪魔くさいが、ティグリスとグラキエース、アスランとアポロンがセットでついてくるのを許してやろうと思った。

 グリフの眼下には、以前アーニャと暮らした懐かしい町が見えていた。グリフは町に降りる事なく、アーニャの眠る小高い丘の上におり立った。ノックスは呟くように言った。

『暖かな魔法だ。ここにグリフの娘が眠っているのだな』

 ノックスの言葉にグリフは苦笑した。この丘を領主から買い取り、そして強力な魔法をほどこした。見た目は普通の丘だが、この場所はグリフにしか入れない。ここはグリフとアーニャだけのものだ。誰も近づけたくなかった。だが、グリフの主人であるノックスなら、入ってもいいと思った。グリフがノックスに振り向くと、ノックスはもう消えていた。グリフとアーニャの二人きりにしてくれたのだ。ノックスはなんとペット思いの主人だろう、それなのにグリフは少し面白くなかった。同時に自身の幼稚でごう慢な考えにへきえきした。

 グリフは小高い丘に一歩足を進めた。すると、そこは一面の花畑だった。赤、ピンク、オレンジ、黄色、青。色とりどりの花が咲き乱れていた。花畑の上を、美しいチョウやミツバチが飛び回っている。これは、アーニャが寂しくないようにグリフがかけた魔法だった。花畑の真ん中には、美しい大理石でできた墓があった。グリフは墓の前に座りこむと、柔らかな声で言った。

「アーニャ、遅くなってごめんな。それと、アーニャの友達のエッタ、ラナって子にあげちゃったんだ。だけどラナはきっとエッタを大切にしてくれる。だからアーニャ、安心しろな?」

 グリフは微笑みながらアーニャに語り続ける。グリフは腰にさげた袋から、ある物を取り出した。トランド国王からたまわった勇者の称号であるエンブレムだ。

「アーニャ、これ見てみろ。お父さんなぁ勇者になったんだぞ?すごいだろ!」

 お父さん、すごい!勇者さまなの?!じゃあ、わたしはお姫さまね?

 グリフの目に、ありありとアーニャの姿が浮かんだ。きっとアーニャにとっては勇者の称号など、ママゴトの道具にしてしまうだろう。グリフの耳にはしっかりと、アーニャのきゃらきゃらとした鈴の鳴るような笑い声が聞こえた。

「・・・、アーニャ。アーニャ、アーニャ」

 グリフは号泣した。アーニャを失った悲しみは、ナイフで身を切られるような痛みだった。だがそれと同時にアーニャの存在を今もなお、ありありと思い出せる事に心から安どした。

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