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初めての冒険

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 レオンが受ける事になった依頼は、王都から馬車を乗り継いで二日ほどかかる、ミョウラの町に続く山道に出る山賊を退治するものだった。

 小さなアルスを連れたレオンにとって、目的地までの道程はもどかしいものだった。レオンの持っている依頼書をのぞきこんだルーカスが口を開いた。

「レオン、アルス。俺たちがお前たちを送っていってやるよ!」
「本当?!ルーカス、シルフィ!」

 ルーカスも、彼の肩に乗ったシルフィも大きくうなずいてくれた。

 風の精霊シルフィは、飛行魔法を使ってものすごい速度で空を飛んだ。そのおかげで、レオンたちは日暮前にミョウラの町に続く山道付近にたどり着いた。

 心配症のルーカスとシルフィは、山賊退治に自分たちも同行すると言ってくれたが、レオンは断った。この依頼は、レオンとアルス二人でやりとげなければいけないのだ。

 ルーカスとシルフィは、しぶしぶラウラたちの待つ城下町に帰って行った。レオンはどんどん暗くなる森の中で、野宿の準備を始めた。

 レオンは山育ちなので、野宿の仕方も熟知していた。枯れ木を集め、真綿と火打ち石で焚き火をした。リュックサックからポットを出して湯をわかし、紅茶を入れた。携帯食のビスケットと紅茶で簡単な夕食をとる。

 焚き火をするのは、暖をとるためと、獣に襲われないようにするためだが、最大の目的は、標的である山賊をおびき寄せるためだ。

 レオンたちがこれから退治しなければいけない山賊は、バボウ一家と呼ばれる残虐な集団だ。ミョウラの町に行こうとした商人や旅人を容赦なく殺して金品を奪うのだ。

 非道な者たちは野放しにしてはおけない。必ずレオンとアルスでバボウ一家を壊滅させなければいけない。

 紅茶とビスケットを食べたアルスは、ウトウトと船をこぎだした。今日は朝からバタバタしていたから疲れたのだろう。レオンは今にも目を閉じてしまいそうなアルスに言った。

「アル、おしっこは?」
「ううん、出ない」

 レオンはため息をついてアルスを抱き上げ、毛布を羽織った。アルスは夜にトイレに行かないと、時々おねしょをしてしまう。いつもは無理矢理寝る前にトイレに連れて行くのだが、今夜はダメそうだ。

 レオンはアルスを抱きしめながら空を見上げた。夜空にはまんてんの星が輝いている。早く山賊に会えればよいが、会えなければ持久戦だ。レオンは植物魔法で果物や野菜を作る事ができるので、しばらくは山で過ごす事ができる。

 だがアルスは幼い子供だ。野宿が長引けば体調を崩してしまうかもしれない。できるだけ早くこの依頼を終わらせたい。

 レオンがそう考えていると、突然ガサリと草をかき分ける音がした。

 

 
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