悪の組織は正義の味方 〜 それは怪人製造ガチャポンから始まった 〜

marry

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第4話 初陣

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「気をつけ~!」

 ビクンッ

 突然の叫び声に、ハリネズミ怪人以下、ハムスター、モグラ、モモンガ、ハト、ラッコ、リスザル、スカンクの8怪人がビシッと気をつけをする。

「私は指揮官のシュークよ!
 コマンダーと呼びなさい!」

 シュークは胸を張りながらブンブンと飛び回る。

「おい、なんだよあいつ偉そうにしてさ」

「しっ!
 余計なこと言うなって、聞こえたら厄介だってば」

 シュークは真っ赤なオーラを纏う。

 ビシーッ!

「そこのラッコとモグラ!
 前に出て来なさい!」

 オーラの色に反して場の雰囲気は真っ青に凍りつく。

「「は、はい」」

 ビビりながらふたりはシュークの前に出た。

「お、おい……俺たち、ヤバい組織に入っちまったんじゃねぇか……?」

「しっ、やめとけって!
 あのチビに聞こえたら終わりだぞ!」

「はい、そこのリスザルとハト!
 あんたらもこっちに出て来なさい!」

「「は、はいっ!」」

 ふたりもガタガタ震えながら前に出る。

「小声で話しても聞こえるってわからないの?
 それに誰がチビですって?」

「「も、申し訳ございませんでした」」
 
 前に出された四人は必死に頭を下げた。

「もう一度言っておくわ。
 私の名前はシューク!
 コマンダーシュークよ!」

「「「「は、はいっ!
 コマンダーシューク様!」」」」

「よろしい。
 分かれば下がって良し!」

「「「「はいっ!」」」」

「あ、あのシュークさん……
 そろそろ大首領の俺からもみなさんにご挨拶を……」

「うるさいわね!
 まだ私の話は終わってないでしょ!
 ひとの話はちゃんと聞くもんでしょ!」

 父さんがシュークの圧に負けている。

 これ以上シュークに絡んでも余計に面倒臭くなるよな。

 俺は『お前がひとの話を聞けよな』という言葉を飲み込んで、黙っておくことにした。

「あらためて紹介しておくわね。
 私はこの組織の司令官!
 コマンダーシューク!
 私の名前だけは今すぐ覚えなさい。
 二度は言わないわよ!」

 いや、今ので三回ぐらい言ってるけどね……

 俺は心の中で呟いた。

「そして……
 我が組織の名は【ジャスティス】!」

 シュークの声が、アジト内の空気を震わせた。

「【ジャスティス】は、この大陸に住む魔族たちのために戦う正義の組織よ!
 平和のために戦う精鋭たち!
 希望に満ちたあなたたちを我が組織は歓迎するわ!」

 俺を含め、怪人たちも思わず感動しそうになった。

 いやいやいや、危ない危ない。

 こいつの言葉に痺れてどうすんだよ。

 だいたい今のセリフって父さんが言うべきセリフだよなあ……

 シュークの演説は続く。

「我らの理念は……
 オブ・ザ・デーモン!
 バイ・ザ・デーモン!
 フォー・ザ・デーモン!」

 なんか聞いたことあるやつだ……

 だいたいそんな理念いつ決まったんだよ……

「魔族の、魔族による、魔族のための世界を!
 夢に向かって、共に進もうではないか!」

 そして最後の一撃。

「ただし、私の命令は絶対よ!
 いい?
 ぜ・っ・た・い!
 だからね!
 秩序を乱す者は仲間の命を危険に晒すわ!
 そんな奴がいたら前頭葉に毒針ぶっ刺すからね!」

「「「「「「はいっ!」」」」」」

「声が小さいっ!
 もう一回!」

「「「「「はいっっ!!」」」」」

 雷鳴のような返事がアジトに響く。

「よしっ!
 じゃあ他になんかしゃべりたい人がいたらどうぞ」

「「「「「……」」」」」

 俺もトゲトゲくんもリームも父さんでさえも、ポカンと口を開けたまま固まってしまう。

「何よ!
 せっかくしゃべるチャンスをあげたのにさ。
 じゃあ全員、次の命令があるまでアジトで待機!
 解散!」

 しれ~と言葉を残しシュークはふら~っとどこかへ飛んでいってしまった。

「ねえ、ライト……
 この組織の大首領って父さんだったよね?」

 困惑した父さんがポツリと呟いた。

 ***

 ―― リームの恐怖演説から一週間が経った……

 俺たちは領土の境界線である【イットイ川】を越え、人間族の街【ネオンシティ】が見下ろせる小高い丘の岩場に身を潜めている。

 時は丑三つ時……

 あまりの静けさに耳の奥がキーンという音をたてる。

 月明かりが木々の影を揺らし、冷たい空気は日中よりも時間をゆっくりと進めているように感じる。

「みんな揃っているな!
 トゲトゲくん点呼を頼む」

「承知いたしました。
 大幹部様」

 コクリとトゲトゲくんは頷く。

「番号~……始めっ!」

「ウッヒョッ」

「ウッヒョッ」

 ・・・

「ウッヒョッ」

「よし!
 ウヒョヒョ戦闘員50名確認!」

 戦闘員の他には、シュークとリームを除く怪人たち。

 リームは連れてきても良かったんだけれども、こんな夜中にシュークはうるさ過ぎるからね。

 大首領の護衛を頼むとおだてたら、喜んでアジトに残ってくれたよ。

 それを見ていたリームは笑いを堪えていたけどね(笑)

「気をつけ~!
 大幹部様に敬礼!」

 ザザザッ

 その場にいる怪人と戦闘員は寸分違わぬ動きをする。

 そして目の前に立つ俺に視線が注がれた。

「今日の作戦は至ってシンプルだ!
 奴らが略奪した米の奪還と軽トラを奪うこと!
 安心したまえ。
 米屋の位置はハト怪人のポッポくんの働きによって空中から確認済だ。
 街の城壁にも意味はない。
 なにせこちらには穴掘りの名手、モグラ怪人モグモグくんがいるんだからな!」

 俺の説明が終わると、どこからともなく狼の遠吠えが聞こえてきた。

 ワォ~ンッ!

「さあ出発だっ!」

「「「「「ウッヒョーッ!」」」」」

 俺の合図に暗闇でもわかるぐらいに、戦闘員の土埃が白く舞い上がる。

 俺の手は震えていた。

 怯え?

 違う……

 高揚だ!

「俺に続け!」

 先程までなんとか冷静を装っていたが、作戦開始となると自然と胸の鼓動は高鳴った。

 湿った土の匂いに包まれながら、俺たちはモグモグくんの掘ったトンネルをひたすら突き進む!

「モグモグ!
 モグモグ!
 モグモグモグッ!」

 絶好調だねモグモグくん!

 もの凄いスピードでトンネルが掘られていく。

 この間ガチャポンしたときは、このメンバーでどうなることかと心配したけれど……

 なにがなにが……

 このモグモグくんにしてもポッポにしても素晴らしい働きだよ!

 そんなことを考えながら突き進んでいると……

 ピタリッ

 突然モグモグくんは動きを止めた。

 どうやら米屋の下に到着したらしい。

 ここからは静かに行動しなくてはならない。

 ここで、リスザル怪人であるサスケの出番だ。

「頼んだぞサスケ!」

「キュイキュイ!
 かしこまり~」

 サスケはトンネルからスルスルと抜け出し、数分もしないうちに俺の下へ帰還する。

「倉庫の鍵は窓から忍び込んで開けてきました。
 軽トラも倉庫の中です」

 俺はサスケから軽トラの鍵を受け取る。

「よくやってくれた。
 それじゃあみんな、乗り込むぞ!」

 俺たちは静かにトンネルを抜け出した。

 抜き足、差し足、忍び足……

 慎重に……

 慌てず……

 静かに……

「うわぁ」

 ガラガラ ガッシャーンッ!

「どうしたんだ!?」

 俺が振り返ると、そこには一斗缶に躓いたポッポが倒れていた。

「すみません。
 鳥目なもんで……」

 俺のミスだ。

 深夜の作戦に鳥目のポッポを連れて来るなんて……

「誰かいるのか!?」

 様子を見に来た米屋の店主がこちらに明かりを向ける。

 やばい!

 見つかった!

「ド、ドロボーッ!」

 店主が大声で叫んだ。

「うるせえっ!
 叫ぶな!」

 ラッコ怪人ラー油の貝殻が店主の脳天に炸裂!

「あわわわわ……
 て、店主のおじさんが~」

 俺が何もできずに右往左往しているところ、ハムスター怪人のハムっちがトドメとばかりに店主の頭をかじる。

「カジカジ
 カジカジ……」

「うぎゃ~っ!
 な、なんで善良な市民のワシが……
 こんな……目に……」

 再び店主は叫び声を上げたかと思うと、白目を剝いてその場に倒れてしまった。

「殺ったのか?
 殺ってないよね?
 死んでないよね?
 おじさんごめんなさい。
 ごめんなさい」

 こんなシーンを何回もシミュレーションしてきたのに、俺はテンパってしまう。

 倒れ込んだ店主をトゲトゲくんが縄で拘束しながら言う。

「大丈夫です。
 大幹部様。
 店主は気絶しているだけです」

 俺はホッと胸を撫で下ろした。

 どさくさに紛れ、スカンク怪人のガッスンが店主にお尻を向けていたが、寸前のところでモモンガ怪人のモモちゃんが取り押さえていた。

 こんなところで放屁されたら全滅しちゃうジャマイカ!

 しかし、この状況をどうしたもんか……

 えっと……えっと……

 考えろ……考えるんだライト……

(あんたバカァ!?
 ちゃんと指揮とれないなら私を連れていきなさいよね!
 私がいないとなんもできないんだから……
 とりあえず、一回深呼吸しなさい!)

 なぜだかシュークの顔が脳裏をよぎる。

 こんなところで失敗したら、あいつになにされるかわかったもんじゃない。

 俺は大きく深呼吸して冷静さを取り戻した。

「みんな、急ぐんだ!
 恐らく今ので近所に騒ぎがバレた。
 怪人たちは急いで米俵を軽トラに積み込め。
 戦闘員は米袋を担いでトンネルからモグモグくんと脱出!
 侵入経路がバレないようにトンネルの穴は塞ぐように!」

「がってん承知!」

「「「「「ウヒョヒョイ!」」」」」

「大幹部様!
 準備完了です!」

 シャッターを開けたトゲトゲくんが叫ぶ。

「よし!
 トゲトゲくんは助手席に!
 あとの怪人は荷台に乗るんだ!」

 キュンキュン キュンキュン

 ブロロロロローン

 俺はアクセルを踏み込み、軽トラを急発進させた。

 キュルルルル

 グワーン

 キキキキキーッ

 街のゲートを目指しメインストリートをぶっ飛ばす。

「大幹部様!
 ゲートが見えました!」

 警備員が両手を広げているが、そんなの関係ねー!

 ハイ、オッパッピー!

「荷台のみんな!
 何かに捕まって!
 うりゅ~っ!」

 ドッカーンッ!

 驚いた警備員は飛び退き、ゲートのバーが吹き飛ぶ。

「よしっ!
 突破だ!
 トゲトゲくん、荷台のみんなは?」

「無事なようです」

「よしっ。
 もっとスピードをあげるぞ!」

 ブロロロロローンッ!

 立ち去る俺たちを警備員は、ポカンと口を開け、呆気に取られた顔で見送るしかできなかった。

 ―― 俺たちは待ち合わせの場所に無事到着する。

 しばらくすると、米袋を担いたモグモグくんたちがトンネルから這い出てきた。

 急いで点呼をとる。

「みんな無事だね。
 追手が来るかもしれない。
 急いで【カスガ村】へ帰るぞ」

 そして俺たちは意気揚揚とカスガ村への帰路についた。

「ライト!
 みんな!
 無事か!」

 真っ先に父さんが駆け寄って来る。

「少しのトラブルはあったけど、なんとかミッションコンプリートだよ」

「よっしゃ~!」

 俺は父さんとハイタッチした。

 嬉しそうにシュークとリームは俺の周りをグルグルと旋回している。

「さあ、ライト、勝どきの音頭だ!」

「よ~し、いくよみんな!
 えいえいお~っ!」

「「「「「えいえいお~っ!」」」」」

「えいえいお~っ!」

「「「「「えいえいお~っ!」」」」」

 誰ひとり欠けることのない帰還。

 それが最大の戦果である。

 俺たちは何度も何度も勝どきを叫んだ。

 この出来事は、のちに人間族の間で【米騒動】と語り継がれる事件となった。

 同時に【ジャスティス】が初めて歴史に名を刻んだ日でもあった。
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