美少女戦士はもう無理だって!

marry

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第1話 変身だニャン♡

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 まるで物語の主人公…

 ネコ耳アクセに黒いローブを身に纏い、ニャンニャン肉球マジカルステッキを振りかざす。

「悪い子は…
 おしおきだニャン♡」

 その名も【美少女戦士ニャンニャン・エンジェル】

 私は【ニャン斗六聖剣】のひとり…

 ニャンノアール!

 漆黒のローブが風にたなびき、ネコ耳アクセがキラリと月明かりを反射する。

 ニャーッ!

 研ぎ澄まされた鋼鉄の爪が邪悪な影を切り裂く。

「この世に悪の栄えたためしなし…
 …ニャン♡」

 ―― おっきろー…おっきろー…おっきろー…

 カチャ

「あ~…
 もう朝か…
 まだ眠たいよ~
 ふぁ~あ~…」

 自分の声をいれた目覚まし時計をポンッと叩き、大きく蹴伸びをする。

「またあのアニメかあ…
 ほーんと飽きもせずよく見るのよねえ…」

 ありきたりだけど、それは美少女戦士が活躍する夢。

 ネコ人族の王国が侵略者に襲われて、地球に助けを求めにくるのよね。

 ネコ人族は直接戦う力はないんだけど、地球人に変身能力を与えることができるの。

 そこで選ばれし六人の少女が、変身能力を使って、ネコ人族の王国ファンタジスタを救うって物語だったはず。

 ―― でも…

 このアニメ…

 いくらネット検索してもでてこないのよね。

 確かに昔、見たはずなんだけれど…

 不人気のローカル番組だったのかしら?

「ニャー」

 私がボーッとそんなことを考えていると、ヤマトがピョンと私のベッドに飛び乗ってきた。

 クロネコのヤマト。

 私のかわいい愛猫だ。

 今はこの一軒家に私と二人で住んでいる。

 父は外資系の商社務めで海外赴任中。

 父ラブリーな母も当然一緒ってわけ。

 で…

 私はヤマトとこの家でお留守番ってことなのよ。

「ニャー」

 ヤマトが時計を見ろと私に注意する。

「やっば。
 ボーッとしてる間にもう7時半じゃない!
 早く用意しなきゃ遅刻しちゃうわ」

 私はベッドから飛び起き、急いでシャワーへ。

「それじゃあヤマト行ってきます。
 お利口さんにしてるのよ」

「ニャー」

 私は食事もそこそこに家を飛び出した。

「おはようございまーす!」

 ゴミ置き場で噂話に花を咲かせているおば様方に挨拶して、横を通り過ぎる。

「あら、おはよう」

「今からお仕事?」

「走ったら危ないわよ。
 行ってらっしゃい」

「行ってきまーす!」

 おばさんの注意も聞かず私は駅まで小走りで向かう。

 ―― 私の名前は月影 雪乃つきかげ ゆきの、28歳、独身、食品メーカー勤務。

 ごくごく普通のOLだ。

「ふ~…
 なんとかいつもの電車に乗れそうね」

 と…

 最寄り駅には着いたものの…

 構内は人でごった返していた。

「なにかあったんですか?」

 私は時計をチラチラと気にしているサラリーマン風のおじさんに聞いてみた。

「隣の駅でおっきな事故があったらしいんだ。
 今日は朝から大事な会議があるのに困ったなあ…」

「あ、ありがとうございます。
 電車動くといいですね。
 ハハハ…」

 お前もだろ…と外野から声が聞こえてきそうだが、あいにくうちの会社は私のひとりやふたりいなくても、なんとか正常運転はできるのである。

 まあ、他の人が残業になるかもだけど…

 焦っても仕方がない。

 タクシーも大行列だし、バスも来てないみたいだし。

 ゆっくり待つとしよう。

 そもそも駅前の道路からあっちもこっちも、窓の外に見える景色は全て大渋滞なのである。

 脱線事故?

 ガス管か水道管の破裂?

 それとも怪獣でも現れた?

 …な~んてね…
 
 ピンポン…ピンポン…大正解!

 どこかで正解ランプが光った気がした。

 そんなバカな…

 その刹那…

 ドドドドドドドド

 ドッゴーンッ

 大きな地響きがしたと思うと、前方の屋根が勢いよく崩れ落ちた。

 ギャー!

 人々の叫び声が響き、辺りは一瞬で地獄絵図…

 蜂の巣をつついたように、駅構内は逃げ惑う人々で大混乱となった。

「きゃー、なになになに…
 いったい何が起こったの?」

 もちろん私も、周囲にたがわずパニックになる内のひとりである。

 ウギャー!

 オロオロしていると、前方からひときわ大きな声が聞こえてきた。

 私はその声につられて崩れ落ちた屋根の隙間を見上げた。

「か…怪獣!?
 嘘…
 ほんとに怪獣じゃん!」

 なお一層、人々の恐怖に拍車がかかる。

「な…なによあれ…
 都心に…タコ!?
 しかもあんな何十メートルもある!?
 いやいやいや。
 昨夜の夢じゃないんだからさあ…」

「ニャー」

 ヤマトの声!?

 どうして?

 振り返ると家にいるはずのヤマトがそこにいた。

「ニャニャーッ」

 ヤマトは私を手招きする。

「どこへ行くのヤマト」

 私は人々の足元をくぐり抜けるヤマトを必死に追いかけた。

「待ってよヤマト。
 ひとりで何処かに行ったら危ないよ~」

 階段の踊り場で不意にヤマトは立ち止まる。

 辺りには人影はない…

「ねえヤマト…
 こんなところにいたら危ないよ。
 早く駅から逃げよう」

 ―― 少しばかりの沈黙のあと…

 突然ヤマトは二足で立ち上がり、どこからともなくネコの肉球が付いたステッキを取り出し、私に向けた。

「ニャー」

 ピヒューッ!

 ヤマトの鳴き声と共に私に七色の光が浴びせられる。

「ニャンニャンレインボーパワー!
 セットアップ!」

 胸の宝石が光り、白い衣装が私を包み込む。

 目の前でクロスした腕には白いグローブ。

 続いて、ビシッと揃えた足には白いブーツが履かされる。

 額が光り頭にはネコ耳カチューシャが現れた。

 両手を天に掲げると黒いローブが舞い降り袖を通す。

「ニャンノアール!
 悪い子は…
 おしおきだニャン♡」

 バッシーン!

 私はこれでもかというぐらいのポーズを決めた。

「えっ!?」

 自分でも驚くぐらいにサマになっていた。

「久しぶりだねその格好」

 キョロッ キョロッ

 私は辺りを見回す。

「僕だよ。
 雪乃…」

「えっ!?
 ヤマト?」

「そうだよ。
 僕だよ」

 私は状況が飲み込めず首を傾げた。

「説明はあとだ。
 行くよ。
 雪乃!」

 ヤマトは一目散に先程の構内を目指して駆けてゆく。

「ちょ…
 待ってよ~!
 ヤマト~!」

 私は戸惑いながらもヤマトを追いかけた。
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