美少女戦士はもう無理だって!

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第2話 戦闘だニャン♡

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 ヤマトを追いかけ屋根が崩れ落ちた場所まで戻ると、相変わらず逃げ惑う人々で混乱していた。

 その傍らに立ち止まったヤマトは私の方へ振り向き口を開いた。

「さあ、雪乃!
 いや、ニャンノアール!
 敵は目の前だ!
 頑張って!」

「……」

 ―― どういうこと?

 ヤマトの言葉の意味がわからない。

「さあ!」

「だから…?」

 首を傾げヤマトを見つめる。

「敵は目の前だからさ…
 頑張って…」

「なにを…?」

 ―― ほんと…何を頑張るのよ…!?

「だからキミがあのタコ怪獣をやっつけないとさ…」

「私が!?」

「キミ以外、他に誰かいるのかい?」

 ヤマトはつぶらな瞳で当然とばかりに答えを返してくる。

「いや…
 漁師さんとか魚屋さんとか…
 たこ焼き屋のおやじさんとか…?」

「いやいやいや…
 キミはなにおかしなこと言ってんだよ!?
 冗談言ってる場合かい?
 大丈夫?」

 ―― ヤマトくん…

 …キミこそさっきから何を言ってやがるんですか?

 か弱いOLに、こんな化け物を倒せるわけがないざましょ?

 冗談は休み休みに言いやがれでございます…

 そのようなことを考えながら、無言でヤマトを見つめていると…

「さ、早く」

 ―― こいつまだ言うか!?

「ほんと無理だから…」

「ちょちょいのちょいって頼むよ」

 怪獣が現れたり、ヤマトが喋ったり、私が変身したりと、さっきから色々とおかしい状況ではあるが、この際そんなことはどうでもよい。

 私が怪獣と戦う…!?

「無理無理無理無理無理…」

 私は何度も小刻みに首を横に振った。

 ―― しかし…

 …このあとヤマトは全力拒否している私の横でとんでもない行動にでた。

「お~い!
 図体だけでかいだけのタコ野郎!
 お前なんか怖くないぞー!」

「なっ!?」

 サッ

 タコ怪獣を煽った当の本人は、すかさず私の後ろに隠れたのである。

 ―― おいヤマト!

 先程まで駅を破壊していたタコ怪獣はピタリと動きを止め、こちらを睨んできた。

「いやいやいやいや。
 今の私じゃないから…」

「タッコーンッ!」

 ―― 私はタコの叫び声を初めて聞いた…

 …タコって怒るとああやって鳴くのね…

 次の瞬間、タコ怪獣の二本の足が私を両サイドから襲ってきた。

 ブシャー シャーッ

「キャー!
 潰される~!?」

 バーンッ!

「あれ?」

 私は咄嗟にふたつの足を受けとめた。

「ね?」

 当然と言わんばかりにヤマトはニヤッと私に笑顔を向ける。

「今のキミは、僕たち【ネコ人族】の魂の力【ニャンダフルパワー】によって、常人の数十倍の力を発揮することができるんだよ」

「【ニャンダフルパワー】?」

 私が聞き返した直後、三本目のタコ足が真上から叩きつけるように襲ってきた。

 ドッゴーンッ

「キャーッ!
 何すんのよ、このタコ!」

 私は後方にジャンプし寸前でそれを躱した。

 しかしそれを予測していたように、四本目、五本目のタコ足が私の着地した地点に襲いかかる。

 バゴーンッ ババーンッ

「ひえーっ」

 すかさず後方宙返り。

 私は九死に一生を得た。

「おっ!
 さすがニャンノアール!」

 それを見たヤマトが呑気なセリフを吐く。

「ちょっとあんたねえ…
 私、今、死にかけたんだけど!」

 ムッとした表情をヤマトに向けると…

「大丈夫、大丈夫」

 相変わらず、ヤマトからは緊張感のない返答が返ってくる。

「あんた少しは緊張感ってもんを持ちなさいよね」

 ドッゴーンッ バッゴーンッ

 会話の最中にも、お構いなしにタコ怪獣は私を襲う。

「それなりに僕も緊張感は持っているつもりだよ。
 ただ参謀の僕が狼狽えたら、勝てるものも勝てなくなっちゃうからね」

 落ち着き払い、ヤマトは飄々と答える。

「じゃあ参謀さん。
 この鬱陶しいタコをなんとかする方法があるってわけね?
 早く教えてくれないかしら?」

 バゴーンッ バゴーンッ

「あ~もう!
 八本足で攻撃なんて反則でしょ!
 せめて四本までにしなさいよね!」

 飛び退きながら私は叫ぶ。

「わかった。
 僕がなんとかする!」

 そう言うとヤマトはタコ怪獣目掛けて突進した。

「えっ!?
 ヤマト!
 なにしてるの!?
 危ないよ!?」

 タコ足がヤマトを襲う。

 ズダーンッ バガーンッ

 ヤマトは軽やかに攻撃を躱し、今度はタコ怪獣の周りをグルグルと回転し始めた。

「タッコーン!」

 ズシャーンッ ボカーンッ

 素早いヤマトの動きにタコ怪獣の攻撃は当たらない。

「ソレソレソレソレ…
 アハハハハ…」

 グルグル…グルグル…グルコサミン…

「タコグル~ル~ン」

 ズッテーンッ!

 目が回り…

 足がもつれ…

 絡まり…

 タコ怪獣はその場にひっくり返った。

「ほら、足が絡まって動かせる足は残り四本になったよ」

 ヤマトは得意気にニンマリ顔を私に向けた。

「タコタコタッコーン!
 ブフォフォフォフォ~ン!」

 ブチ切れたタコ怪獣はとっておきの攻撃を仕掛けてきた。

 口から墨ではなくチビメカを吐いたのだ。

「タ~コ…タ~コ…タ~コ…タ~コ…」

 子ダコは行列を成してニャンノアールの方へ向かってくる。

「ピーッ…ピッ!」

 どこかからの笛の音で子ダコは歩みを止め整列した。

「タッコ~ン!」

 ズババババ ズバパババ

 タコ怪獣の号令で、ロケット噴射した子ダコが一斉に飛んでくる。

「いや~ん!
 なによこの子ダコ!」

 バシッ…バシッ…ボカッ…

 パンチ…キック…パンチ…

 私は向かってくる子ダコを必死で振り払う。

「ゼエ…ゼエ…ゼエ…ゼエ…」

 ―― き…きつい…

 ボカッ…それっ…えいっ…

「ゼエ…ゼエ…ゼエ…ゼエ…
 三十路前にはきつすぎるわ…」

 手が上がらない…

 足も上がらない…

 か…肩と首が痛い…

「ちょ…
 ヤ…ヤマト…
 ゼエ…ゼエ…ゼエ…ゼエ…
 心臓が…
 な…なんとかしてよ…
 きりがないじゃない!」

 私は横にいるヤマトに助けを求める。

「ニャンノアール!
 本体を倒さなくちゃダメだ!」

「だからどうやってよ!?」

「右手のネコニャンステッキを使うんだ!」

「この変なステッキを!?」

「僕の【ニャンダフルパワー】とキミの心の中にある【ソウルラブ】を融合するんだ!」

 私は意識をステッキの先にある肉球に集中した。

 呼応するように肉球が淡い金色こんじきの光を纏う。

「今だよニャンノアール!」

「悪い子は…
 おしおきだニャン♡
 ニャンダフル~シャイニ~ングッ!」

 ピッキーンッ!

 肉球の光は一点に収束し、眩い閃光を放つ。

 その聖なる金色こんじきの光は一直線にタコ怪獣に放たれた。

 その刹那…

「タコタコーン…!」

 ボカボカ ドッカーンッ!

 タコ怪獣は断末魔をあげて砕け散った。

「この世に悪の栄えたためしなし…
 …ニャン♡」

 戦いに勝利しポーズは決めたものの、緊張の糸が切れた私はヘナヘナとその場にしゃがみ込んでしまった。

「もう!
 いったいなんなのよ!
 家に帰ったらキッチリ説明してもらうからね!」

 私はヤマトの両脇を持ち上げ、顔を近づけ叫んだ。

 ―― その一部始終を自動販売機の影から目撃していた者がいた…

「見たわよ、見たわよ。
 雪乃先輩。
 バッチリと変身するところからね。
 これはスクープよスクープ!」

 不敵な笑いを浮かべるツインテール…

 しゃがみ込む雪乃は、その影に気づいてはいなかった…
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