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第3話 後輩だニャン♡
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「ほーんと眠たいな……
まだ7時前じゃないのよ……」
―― 私の名前は【星野 ワルツ】。
19歳の元気っ子だよ。
ただ、ちょっと朝は苦手……
今年から隣町にある三毛猫フーズに勤める新人OLよ。
昨日の騒ぎのせいで、一晩中工事作業の車やなんかで街は騒がしいんだよね。
あっ、夜通し頑張って復旧作業に従事してくださってる方、騒がしいなんて言ってごめんなさい……
少し反省。
でも…さすが日本……
生真面目というかなんというか……
あんなことがあっても、どこかみんな平常運転しようとするのよね。
今日ぐらいうちの会社もお休みにしたらいいのにさ……
「電車が復旧するまでバスで通勤かあ…
しばらく早起きしないとな」
私は愚痴をこぼしつつ、長い行列の最後尾に並んだ。
「朝の一時間はかなりのダメージよ。
まだまだ眠たいわ。
ファ~」
私はひと目も憚らず、おっきなアクビをした。
そのとき、私の肩を叩く人物がいた。
「ワルツ!
おっきなアクビしちゃって。
おはよ」
「あっ雪乃先輩……
お、おはようございま~す」
―― この人は【月影 雪乃】先輩……
私の尊敬する先輩だ。
会社では新入社員の私を、時には厳しく時には優しく指導してくれている。
28歳、独身、三毛猫フーズ総務部総務課主任。
そして……
【美少女戦士ニャンノアール】
―― 私、見ちゃったのよね……
先輩が変身するところ……
***
「キャーッ!
なんなのあれ!?
タコ…?」
鉄道の遅延で人がごった返している構内は、突然の来訪者によりさらに混乱を招いた……
「逃げなきゃ……
逃げなきゃ……」
私は人混みを掻き分け、出口に向かって走った…のだけれど…
―― こんなところにネコ!?
私は混乱の中、見覚えのあるクロネコを見つけたの。
あれっ?……今足元を駆け抜けたネコ……
ヤマトちゃんじゃなかった?
でも、クロネコなんてどこにでもいるわよね。
ヤマトちゃんなわけ……
えっ?
雪乃先輩!?
「ちょ…
待ってよ~!
ヤマト~!」
雪乃先輩が名前を呼びながら、追いかけているってことは……
……じゃあ、あれ……
やっぱりヤマトちゃんだったんだ。
私は急いで雪乃先輩の後を追った。
「せんぱ~い!
待ってくださいよ~!」
そして……
私は見てしまった。
ピヒューッ
眩い閃光がほとばしる。
「ニャンノアール!
悪い子は…
おしおきだニャン♡」
バッシーン!
白い衣装に黒いローブ……
頭には黒いネコ耳カチューシャが燦然と輝く。
足には白いブーツ、腕には白いグローブ。
右手には肉球輝くネコニャンステッキ!
先輩…とってもステッキ!……
…いや…そんなおやじギャグを言ってる場合じゃない!
―― 雪乃先輩が美少女戦士?
そこからは圧巻だった……
「悪い子は…
おしおきだニャン♡
ニャンダブル~シャイニ~ングッ!」
肉球の光は一点に収束し、眩い閃光を放つ。
「タコタコーン……!」
ボカボカ ドッカーンッ!
タコ怪獣は断末魔をあげて砕け散った。
***
「あ、あの…
昨日はびっくりでしたよね(変身とか……戦闘とか……)」
「ほんと、まさか怪獣が現実世界に現れるなんてね」
「私、びっくりしちゃいましたよ(先輩が怪獣をやっつけるなんて)」
「あの騒ぎで疲れマックスよね。
逃げるの必死で足腰が痛いわあ」
「そうですよね(タコ足攻撃から宙返りして逃げたりとかね)」
「それはそうと、ワルツも無事で良かったわ。
私とだいたいいつも同じぐらいの電車に乗ってるもんね」
「あ、ありがとうございます……」
「あんたは昨日どの辺りにいたの?」
「わ、私は入口ら辺でしたかねえ……
ハハハ……」
…逆に先輩はあのとき、どこで何をしてたんですか?
…聞けない…でも聞きたい……
「それにしてもワルツ、さっきのおっきなアクビの声、後ろの人たち振り返ってたわよ?」
「えっ!?
ま、まじですか……
恥ずかしい……」
「バス通勤が、まだしばらく続きそうね。
それにしても会社も今日は普通に動くなんて、平和なんだかそうじゃないのかよくわかんないよね」
「ですよね~……。
日本ってすごいですよね。
昨日あんなことがあったのに、今日普通に出社って……」
ブロロロローン
雪乃先輩と軽口を叩いていると、バスが到着し私達の順番がやってきた。
私は雪乃先輩と二人がけの椅子に腰掛けた。
バスが発車すると、通路向こうに座っている女子高生の会話が聞こえてきた。
「ねえねえ、昨日の怪獣すごかったよね?」
「ほんとびっくりした~。
タコでか過ぎ~!」
「「キャハハハ」」
「あんた、ネットの動画見た?」
「うそ!?
もうあがってんの?」
「そうそう。
死ぬかもしんないのによくこんなの撮影したわよね~…
私には無理だわ~」
「見せて見せて~」
「うわー、すごいじゃん!
タコの頭、うちの校長みたい~」
「そこじゃないじゃん!
キャハハハ」
女子高生たちは、まるでアニメでも見ているかのように他人ごととして映像を楽しんでいる。
「で、ここストップ」
「どうしたの?」
どうしたの?
女子高生の声に合わせて私も首を傾げた。
「見て、ここよ」
女子高生はスマホの画面を指さした。
「何……これ……!?
変身ヒロインが映ってるじゃん!」
ブハッ!
その言葉を聞いてた雪乃先輩は思わずペットボトルのお茶を吹き出した。
「ゲホッゲホッゲホッ」
「大丈夫ですか、雪乃先輩」
私は急いでハンカチを取り出し雪乃先輩のスカートを拭いた。
「ありがと。
ちょっと、むせちゃってね」
眉毛がピクピクと痙攣し、声が裏返った雪乃先輩の額からは、ジンワリと汗が流れ落ちていた。
先輩、かなり動揺してる……
女子高生の会話はさらに続く。
「キャハハハ……
ないないない……
美少女戦士なんてアニメじゃないんだから。
どうせAI合成でしょ?」
「だよね~。
あのタコもどっかの遊園地で使うアトラクション用の積荷が、駅の上を走る高速道路から落ちてたものだってニュースで言ってたもんね~」
「AI恐るべしだわ~」
「それはそうと、今日学校終わったらさあ~……」
女子高生の話題はそこで切り替わった。
「さ、最近の動画って、す、すごいのねー……
わ、私もあとで見てみようかなあ…なんて……アハハハ……ハ……」
雪乃先輩……
誤魔化しても無理ですよ。
だって私は変身からの一部始終を見ちゃってるんですから……
そうだ!
もういっそのこと、本人に直接聞いちゃえ!
「あの…
雪乃先輩…
こんな状況なんですけど、今日仕事終わったらパッと飲みに行きません?」
このモヤモヤを解消するにはこれしかないわ!
「どうしたのよ、急に」
「先週からうちの両親田舎に法事で帰ってて、ひとりで晩ごはん食べるのもなんだかなあって感じで……」
「ワルツは元気っ子なのに、意外と寂しがりやだよね。
いいよ。
それじゃあ、昨日の分も仕事溜まってるだろうから今日はしっかり頑張んなさい」
「え~、せんぱ~い、手伝ってくださ~い♡」
私は甘えた声で雪乃先輩に抱きついた。
「だ~め。
自分の仕事は自分で頑張りなさい。
ちゃんとできたら、今日は私が奢ってあげるから」
「やったあ!
先輩大好き♡」
「いてててて…
こらっ、ワルツ!
私、筋肉痛だってば!」
昨日の今日とは思えないくらい平和にバスは隣町に向かうのであった。
しかし……
次なる刺客はゆっくりと爪を研いでいる。
だがこのとき、それを察知できるものは誰一人いなかった。
ニャー
いや……
一匹を除いて……
まだ7時前じゃないのよ……」
―― 私の名前は【星野 ワルツ】。
19歳の元気っ子だよ。
ただ、ちょっと朝は苦手……
今年から隣町にある三毛猫フーズに勤める新人OLよ。
昨日の騒ぎのせいで、一晩中工事作業の車やなんかで街は騒がしいんだよね。
あっ、夜通し頑張って復旧作業に従事してくださってる方、騒がしいなんて言ってごめんなさい……
少し反省。
でも…さすが日本……
生真面目というかなんというか……
あんなことがあっても、どこかみんな平常運転しようとするのよね。
今日ぐらいうちの会社もお休みにしたらいいのにさ……
「電車が復旧するまでバスで通勤かあ…
しばらく早起きしないとな」
私は愚痴をこぼしつつ、長い行列の最後尾に並んだ。
「朝の一時間はかなりのダメージよ。
まだまだ眠たいわ。
ファ~」
私はひと目も憚らず、おっきなアクビをした。
そのとき、私の肩を叩く人物がいた。
「ワルツ!
おっきなアクビしちゃって。
おはよ」
「あっ雪乃先輩……
お、おはようございま~す」
―― この人は【月影 雪乃】先輩……
私の尊敬する先輩だ。
会社では新入社員の私を、時には厳しく時には優しく指導してくれている。
28歳、独身、三毛猫フーズ総務部総務課主任。
そして……
【美少女戦士ニャンノアール】
―― 私、見ちゃったのよね……
先輩が変身するところ……
***
「キャーッ!
なんなのあれ!?
タコ…?」
鉄道の遅延で人がごった返している構内は、突然の来訪者によりさらに混乱を招いた……
「逃げなきゃ……
逃げなきゃ……」
私は人混みを掻き分け、出口に向かって走った…のだけれど…
―― こんなところにネコ!?
私は混乱の中、見覚えのあるクロネコを見つけたの。
あれっ?……今足元を駆け抜けたネコ……
ヤマトちゃんじゃなかった?
でも、クロネコなんてどこにでもいるわよね。
ヤマトちゃんなわけ……
えっ?
雪乃先輩!?
「ちょ…
待ってよ~!
ヤマト~!」
雪乃先輩が名前を呼びながら、追いかけているってことは……
……じゃあ、あれ……
やっぱりヤマトちゃんだったんだ。
私は急いで雪乃先輩の後を追った。
「せんぱ~い!
待ってくださいよ~!」
そして……
私は見てしまった。
ピヒューッ
眩い閃光がほとばしる。
「ニャンノアール!
悪い子は…
おしおきだニャン♡」
バッシーン!
白い衣装に黒いローブ……
頭には黒いネコ耳カチューシャが燦然と輝く。
足には白いブーツ、腕には白いグローブ。
右手には肉球輝くネコニャンステッキ!
先輩…とってもステッキ!……
…いや…そんなおやじギャグを言ってる場合じゃない!
―― 雪乃先輩が美少女戦士?
そこからは圧巻だった……
「悪い子は…
おしおきだニャン♡
ニャンダブル~シャイニ~ングッ!」
肉球の光は一点に収束し、眩い閃光を放つ。
「タコタコーン……!」
ボカボカ ドッカーンッ!
タコ怪獣は断末魔をあげて砕け散った。
***
「あ、あの…
昨日はびっくりでしたよね(変身とか……戦闘とか……)」
「ほんと、まさか怪獣が現実世界に現れるなんてね」
「私、びっくりしちゃいましたよ(先輩が怪獣をやっつけるなんて)」
「あの騒ぎで疲れマックスよね。
逃げるの必死で足腰が痛いわあ」
「そうですよね(タコ足攻撃から宙返りして逃げたりとかね)」
「それはそうと、ワルツも無事で良かったわ。
私とだいたいいつも同じぐらいの電車に乗ってるもんね」
「あ、ありがとうございます……」
「あんたは昨日どの辺りにいたの?」
「わ、私は入口ら辺でしたかねえ……
ハハハ……」
…逆に先輩はあのとき、どこで何をしてたんですか?
…聞けない…でも聞きたい……
「それにしてもワルツ、さっきのおっきなアクビの声、後ろの人たち振り返ってたわよ?」
「えっ!?
ま、まじですか……
恥ずかしい……」
「バス通勤が、まだしばらく続きそうね。
それにしても会社も今日は普通に動くなんて、平和なんだかそうじゃないのかよくわかんないよね」
「ですよね~……。
日本ってすごいですよね。
昨日あんなことがあったのに、今日普通に出社って……」
ブロロロローン
雪乃先輩と軽口を叩いていると、バスが到着し私達の順番がやってきた。
私は雪乃先輩と二人がけの椅子に腰掛けた。
バスが発車すると、通路向こうに座っている女子高生の会話が聞こえてきた。
「ねえねえ、昨日の怪獣すごかったよね?」
「ほんとびっくりした~。
タコでか過ぎ~!」
「「キャハハハ」」
「あんた、ネットの動画見た?」
「うそ!?
もうあがってんの?」
「そうそう。
死ぬかもしんないのによくこんなの撮影したわよね~…
私には無理だわ~」
「見せて見せて~」
「うわー、すごいじゃん!
タコの頭、うちの校長みたい~」
「そこじゃないじゃん!
キャハハハ」
女子高生たちは、まるでアニメでも見ているかのように他人ごととして映像を楽しんでいる。
「で、ここストップ」
「どうしたの?」
どうしたの?
女子高生の声に合わせて私も首を傾げた。
「見て、ここよ」
女子高生はスマホの画面を指さした。
「何……これ……!?
変身ヒロインが映ってるじゃん!」
ブハッ!
その言葉を聞いてた雪乃先輩は思わずペットボトルのお茶を吹き出した。
「ゲホッゲホッゲホッ」
「大丈夫ですか、雪乃先輩」
私は急いでハンカチを取り出し雪乃先輩のスカートを拭いた。
「ありがと。
ちょっと、むせちゃってね」
眉毛がピクピクと痙攣し、声が裏返った雪乃先輩の額からは、ジンワリと汗が流れ落ちていた。
先輩、かなり動揺してる……
女子高生の会話はさらに続く。
「キャハハハ……
ないないない……
美少女戦士なんてアニメじゃないんだから。
どうせAI合成でしょ?」
「だよね~。
あのタコもどっかの遊園地で使うアトラクション用の積荷が、駅の上を走る高速道路から落ちてたものだってニュースで言ってたもんね~」
「AI恐るべしだわ~」
「それはそうと、今日学校終わったらさあ~……」
女子高生の話題はそこで切り替わった。
「さ、最近の動画って、す、すごいのねー……
わ、私もあとで見てみようかなあ…なんて……アハハハ……ハ……」
雪乃先輩……
誤魔化しても無理ですよ。
だって私は変身からの一部始終を見ちゃってるんですから……
そうだ!
もういっそのこと、本人に直接聞いちゃえ!
「あの…
雪乃先輩…
こんな状況なんですけど、今日仕事終わったらパッと飲みに行きません?」
このモヤモヤを解消するにはこれしかないわ!
「どうしたのよ、急に」
「先週からうちの両親田舎に法事で帰ってて、ひとりで晩ごはん食べるのもなんだかなあって感じで……」
「ワルツは元気っ子なのに、意外と寂しがりやだよね。
いいよ。
それじゃあ、昨日の分も仕事溜まってるだろうから今日はしっかり頑張んなさい」
「え~、せんぱ~い、手伝ってくださ~い♡」
私は甘えた声で雪乃先輩に抱きついた。
「だ~め。
自分の仕事は自分で頑張りなさい。
ちゃんとできたら、今日は私が奢ってあげるから」
「やったあ!
先輩大好き♡」
「いてててて…
こらっ、ワルツ!
私、筋肉痛だってば!」
昨日の今日とは思えないくらい平和にバスは隣町に向かうのであった。
しかし……
次なる刺客はゆっくりと爪を研いでいる。
だがこのとき、それを察知できるものは誰一人いなかった。
ニャー
いや……
一匹を除いて……
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