美少女戦士はもう無理だって!

marry

文字の大きさ
7 / 16

第7話 夕食だニャン♡

しおりを挟む
「避難してください。
 これは映画ではございません。
 現実です。
 昨日に引き続き、ここ猫ヶ原駅前に巨大怪獣が現れました。
 繰り返します。
 近隣住民は速やかに避難してください」

「現場からです。
 ご覧ください。
 今まさに、壮絶な戦いが繰り広げられております。
 突然現れた巨大生物に、セーラー服を着た女性たちが立ち向かっているのです」

「昨日は巨大なタコ、今日は巨大なミミズが、ここ猫ヶ原市の駅前で暴れております」

 各チャンネルは軒並み、この戦いを生中継していた。
 
「ミミズ~ンッギャッ~ッ!」

 ボカボカッボッカーンッ!

「「この世に悪の栄えたためしなし……
 ……ニャン♡」」

「ニャンノアール!」

「ニャンルージュ!」

 決めポーズまでもが、バッチリとテレビ画面に映る。

 こんな非常事態でも、マスコミは容赦しない。

 いや……

 こんなときだからこそだ。

 先ほどまで遠巻きから撮影していた報道カメラが、へたり込むノアールへと、我先にと突撃してくる。

「あわわわわ……」

 狼狽えるノアールに、ルージュが大きな声をかけた。

「ノアールちゃん!
 こっちよ!」

 空中でルージュが手招きしている。

「えいっ!」

 ノアールは地面を蹴り、空へ飛んだ。

「とりあえず、この場を離れなきゃ」

 ルージュの言葉にノアールは頷いた。

「さあ、行くわよ。
 ついてらっしゃい!」

 ビューン

 ふたりは天高く舞い上がり、雲の切れ間に消えてゆく。

「ちょっと待ってよ~っ!」

 慌ててヤマトもあとを追った。

 その様子を、各報道局のカメラは最後まで捉え、全国に映像を流すのであった。

 ***

「ここまでくれば安心ね」

 駅から少し離れた、猫ヶ原小学校の裏山に逃れたふたりは、すぐに変身を解いた。

「元気だったかしらルージュちゃん。
 いや、雪乃ちゃん」

 ピンクのボブがニコリと笑う。

「マッキー!
 お久しぶり~!」

 私はギュッと抱きついた。

 彼女の名前は藤春牧夫。

 ファンタジスタで一緒に戦った仲間だ。

「すっかり大人になっちゃって。
 今はなにしてるの?」

「食品メーカーのOLよ。
 マッキーは?」

「私は相変わらずLLよ。
 なんでやねん!」

「なにノリツッコミしてんのさ。
 アハハハ」

「職業柄、お笑いの血が騒ぐのよ。
 今は念願の夢が叶って、新宿二丁目でおかまバーのママをやってるわ」

「うわぁ、夢が叶ったのね!
 やったあ」

 雪乃はマッキーの手を取り、自分のことのように喜んだ。

「まあ、ママっていっても、小さな店だし、経営するのも、なかなか大変なのよ……
 …って、大変といえばヤバいことになってるわよね。
 タコちゃんの次はミミズちゃんでしょ?
 次はナメクジちゃんかしら?」

「ちょ…
 マッキー!
 余計なこと言ったらフラグが立つでしょ!」

「ハハハハハ、ごめんなさい」

 そのとき、上空から声が聞こえる。

「お~い!
 雪乃~!
 マッキー!」

 シュタッ

「ヤマト」

「あら~、ヤマトちゃん」

「もう!
 ふたりとも!
 僕を忘れないでよね!」

 ヤマトが少し口を尖らせていると、大木の影から声がした。

「わたくし、生まれも育ちも葛飾柴又です。
 人呼んで……」

「あんた、なに嘘言ってんのよ。
 あんたが生まれ育ったのはファンタジスタでしょうに!
 映画の見すぎよ!」

 マッキーが声の主にツッコミをいれる。

「もう、雰囲気だってば!
 雰囲気!」

 そこには一匹の茶トラが立っていた。

「あっ!
 フウテン!」

 雪乃が駆け寄る。

「久しぶりだね。
 雪乃。
 元気だったかい?」

「私は元気だったわ。
 少し、まだ記憶は曖昧なところがあるけどね。
 そういえば、マッキーの記憶は?」

「ああ、私は記憶の封印は頼まなかったからね。
 だって、あんな美味しい体験、商売に生かさない手はないからね」

 さすがマッキー。

 逞しいわ。

「それにしても、大変な事態になってるわよね。
 昨日の夜中、ヤマトに無理やりオホーツク海に連れて行かれて、【魔魂(まだま)】はなんとか封印したけれど…
 あとどれぐらい怪獣が残っているのかしら?」

「それについては、このあいだから、僕とフウテンで調査しているんだ。
 暴れ出す前には大きく魔素が乱れるからわかるんだけれども…
 それまでは、なかなか発見するのは厳しいってのが現実なんだ」

 ヤマトは申し訳なさそうに語った。

「ねえ、マッキー、フウテン。
 今から少し時間あるかな?
 ご飯まだでしょ?
 作戦会議しながらどうかな?
 明日は土曜日だし、会社お休みなのよ」

「そうね。
 こんな事態で、いつ私も出張らないといけないかわからないし、しばらくお店は、チーママに任せているのよ。
 今日は雪乃ちゃんのお家にお泊まりさせていただくわ」

「そうと決まれば……」

 プルルル

 突然スマホが震えた。

「もしもし」

「ちょっと~っ、先輩!
 どこにいるんですか!
 焼肉っ!
 焼肉はどうなってるんですか!」

 あっ……

 ワルツのこと忘れてた(笑)

「ごめん、ごめん。
 あんたのことすっかり忘れてたわ」

「ひっど~い!
 あのあと大変だったんですからね。
 先輩たちがどっかいっちゃうから、私が報道陣に囲まれちゃって」

「あんた、余計なことしゃべってないでしょうね?」

「当たり前ですよ。
 そこら辺は心得てますよ。
 たまたま助けてもらったってことにしてますから」

「いい子ね。
 上出来よ」

「エッヘン」

 ワルツが電話の向こうで胸を張る。

「で、あんたは今どこにいるの?」

「どこって?
 雪乃先輩のお家でお茶飲みながら、お煎餅食べてますよ」

「あんたねえ!
 どっから入ったのよ!」

「ああ、勝手口の横にヤマトちゃん専用の小さな扉があるじゃないですかあ」

「あんた、よくあんな小さなとこから入れたわね」

「私、昔、気功術やったことがあって、関節外せるんですよね」

「そ、それは凄いわね」

「エッヘン」

「い、いや…
 褒めてるわけじゃないんだけれども…
 まあ、いいわ。
 あんたはおとなしくそこで待ってなさい。
 すぐに帰るから」

「焼肉は?」

「こんな状況で無理言わないの!
 そのかわり、オーバーイートで好きなもの注文していいから」

「やったあ!
 じゃあ早く帰ってきてくださいね」

 ワルツは嬉しそうにスマホを切った。

「ほんとにマイペースな子だわ」

 私はフーッとため息をついた。

「ハハハハハ、なかなかの大物じゃないのさ」

 マッキーは私を見て楽しそうに笑った。

「いい子なんだけどねえ。
 ずっとあのテンションだから、ついていくのが大変なときがあるのよねえ。
 アハハ…
 まあ、妹みたいな子なんだけれども」

「フフフ、いい関係じゃない。
 それじゃあ、そのかわいい後輩ちゃんが待っているわよ。
 急ぎましょう」

 私たちは、ワルツが待つ自宅に急いで帰ることにした。

 ***

「ワルツーッ!」

「へっ?」

 家に帰るとコーラを片手に、フライドチキンを頬張るワルツの姿があった。

 テーブルの上には、ピザの空き箱やポテトの袋が散乱している。

「あっ、お帰りなさい。
 ムシャムシャムシャ。
 先輩たちもどうぞ」

「どうぞって…
 ほとんど、あんたひとりでたいらげてるじゃないのさ。
 フライドチキンの骨を渡されても、どこを食べろってのよ!」

「ハハハハハ、ついつい美味しくって。
 でも大丈夫ですよ。
 さっき追加注文しときましたから」

 ピンポーン

「ほら来た。
 は~い」

 ワルツはフライドチキンを咥えながら、スキップで玄関に向かう。

「いったい、ここは誰の家なんだか」

 しばらくすると、山ほどの食べ物を抱えたワルツが部屋に戻ってきた。

「あっ、そうそう。
 雪乃先輩、オーバーイートの代金は私が立て替えておきましたから。
 はい、領収書どうぞ」

「さ、三万二千円……
 ワルツ~ッ!」

 近所中に私の声が響き渡った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜

しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」 公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。 死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」 目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。 「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」 隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。 そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……? 「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」 資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。

幽閉王女と指輪の精霊~嫁いだら幽閉された!餓死する前に脱出したい!~

二階堂吉乃
恋愛
 同盟国へ嫁いだヴァイオレット姫。夫である王太子は初夜に現れなかった。たった1人幽閉される姫。やがて貧しい食事すら届かなくなる。長い幽閉の末、死にかけた彼女を救ったのは、家宝の指輪だった。  1年後。同盟国を訪れたヴァイオレットの従兄が彼女を発見する。忘れられた牢獄には姫のミイラがあった。激怒した従兄は同盟を破棄してしまう。  一方、下町に代書業で身を立てる美少女がいた。ヴィーと名を偽ったヴァイオレットは指輪の精霊と助けあいながら暮らしていた。そこへ元夫?である王太子が視察に来る。彼は下町を案内してくれたヴィーに恋をしてしまう…。

勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~

楠ノ木雫
ファンタジー
 IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき…… ※他の投稿サイトにも掲載しています。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

処理中です...