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5、父親は勇者
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「ロイ、パパだぞ、パパ、ほら言ってみろ」
目の前に、ムカつくほどのイケメンが俺を見て爽やかに笑っている。
俺の目は死んだ魚の様になっていることだろう。
その理由は3分前に遡る。
「今帰ったぞ、エルディアナ!!」
その声を聞いて、ママンはまるで輝くような笑顔を見せてその男に飛びついた。
「アラン!!」
ママンは少し涙ぐんでいる。
俺の目は完全にジト目になっている。
絵になるというか、まるで勇者と聖女にしか見えない二人の並んだ姿。
認めたくはないがお似合いのカップルである。
「アラン。わたし寂しかった……」
拗ねるようにそう言うママンはやはり至高の存在だ。
ママンの顔は何かをねだる様にあの野郎を見つめている。
「アラン、ただいまのキスは?」
空気を読まない馬鹿男に、ママンはとうとうおねだりをした。
するとそいつは、急にシリアスな顔をしやがって──
「エルディ、会いたかったよ」
そう言ってこの野郎は、ブチュッと俺のママンにキスをしやがった。
イケメン爆発しろ!!
そして、俺の目は死んだ魚の様にコイツを見つめているって訳だ。
「うん~なんでかなぁ、エルディが抱いてるときはロイの奴、笑顔満点なんだけど、俺が抱くと凄い無表情になるよなこいつ」
よく分かってるじゃねえか。
俺は頷いた。
ママンは残りの患者を治療しながらこっちに向かってニッコリと笑う。
「ロイ、ママに笑って頂戴! ロイが笑ってくれたら、ママ元気になっちゃう!!」
俺はそれを聞いて涙が出そうになった。
ママンはこんなどうしようもない俺を心から愛してくれている。
俺は気に入らない男の腕の中で、ママンに向かって満面の笑顔浮かべた。
「おお~、凄いなこいつ! もう言葉とか分かってるのか!?」
「まあ、お前よりも長く生きてるからな」
舐めてんじゃねえぞ、このイケメン野郎が。
俺は超絶イケメン君に聞こえない程度の小声でそう呟いた。
「お!? いまロイなんか喋ったぞ!!」
馬鹿野郎、なんて地獄耳だ。
俺は冷や汗を掻いた。
可愛い赤ん坊の俺が喋るわけねえだろうが。
そんなことしたらママンに不気味がられちまう。
しょうがない非常手段だ。
「あ~ぱ……ぱ、ぱぁぱ」
俺は自分が出しうる最大限の可愛い声でそう言った。
その瞬間イケメン君はポロリと涙を流した。
汚れた上着の裾でそれを男らしく拭くと、涙声でママンに話しかける
「エルディ~。ぎ、聞いたかぁ……ロイが……お、俺をパパって」
上着の裾で拭いたくせにポロポロと次々に涙が零れている。
ママンは嬉しそうにそれを見つめた。
「あらあら、ロイたら勇者様のパパをもう泣かせるなんて。きっと強くなるわこの子、私達の天使」
まあ勇者と言っても世界を救うっていうスケールではなく、村を救ったりした冒険者には結構与えられる称号らしいので、俺がこいつの後を継いで魔王と戦うなんてことはしなくてすみそうだ。
大体、ヒキニートの俺にそんなことは無理だからな。
俺の心の中に小さな罪悪感が浮んだ。
ママンやこのイケメン野郎の息子なら、本来は相当優秀なガキが生まれたはずだ。
それがなんの因果か、俺みたいなどうしようもない奴が生まれてきたんだからな。
俺は思わず二人の幸せそうな顔を見つめた。
こんなクソみたいな俺のことでも天使と呼んでくれる……
俺は自分の小さな手を見つめた。
(俺は生まれ変わったんだ……これからは、この世界で俺は生きていくんだな)
ふとそんな実感が俺の心の中に生まれた。
人生をやり直せるなら俺は変れるのだろうか?
俺はこちらを見つめて微笑む両親の嬉しそうな笑顔を見つめた後、もう一度静かに自分の手のひらを見つめた。
目の前に、ムカつくほどのイケメンが俺を見て爽やかに笑っている。
俺の目は死んだ魚の様になっていることだろう。
その理由は3分前に遡る。
「今帰ったぞ、エルディアナ!!」
その声を聞いて、ママンはまるで輝くような笑顔を見せてその男に飛びついた。
「アラン!!」
ママンは少し涙ぐんでいる。
俺の目は完全にジト目になっている。
絵になるというか、まるで勇者と聖女にしか見えない二人の並んだ姿。
認めたくはないがお似合いのカップルである。
「アラン。わたし寂しかった……」
拗ねるようにそう言うママンはやはり至高の存在だ。
ママンの顔は何かをねだる様にあの野郎を見つめている。
「アラン、ただいまのキスは?」
空気を読まない馬鹿男に、ママンはとうとうおねだりをした。
するとそいつは、急にシリアスな顔をしやがって──
「エルディ、会いたかったよ」
そう言ってこの野郎は、ブチュッと俺のママンにキスをしやがった。
イケメン爆発しろ!!
そして、俺の目は死んだ魚の様にコイツを見つめているって訳だ。
「うん~なんでかなぁ、エルディが抱いてるときはロイの奴、笑顔満点なんだけど、俺が抱くと凄い無表情になるよなこいつ」
よく分かってるじゃねえか。
俺は頷いた。
ママンは残りの患者を治療しながらこっちに向かってニッコリと笑う。
「ロイ、ママに笑って頂戴! ロイが笑ってくれたら、ママ元気になっちゃう!!」
俺はそれを聞いて涙が出そうになった。
ママンはこんなどうしようもない俺を心から愛してくれている。
俺は気に入らない男の腕の中で、ママンに向かって満面の笑顔浮かべた。
「おお~、凄いなこいつ! もう言葉とか分かってるのか!?」
「まあ、お前よりも長く生きてるからな」
舐めてんじゃねえぞ、このイケメン野郎が。
俺は超絶イケメン君に聞こえない程度の小声でそう呟いた。
「お!? いまロイなんか喋ったぞ!!」
馬鹿野郎、なんて地獄耳だ。
俺は冷や汗を掻いた。
可愛い赤ん坊の俺が喋るわけねえだろうが。
そんなことしたらママンに不気味がられちまう。
しょうがない非常手段だ。
「あ~ぱ……ぱ、ぱぁぱ」
俺は自分が出しうる最大限の可愛い声でそう言った。
その瞬間イケメン君はポロリと涙を流した。
汚れた上着の裾でそれを男らしく拭くと、涙声でママンに話しかける
「エルディ~。ぎ、聞いたかぁ……ロイが……お、俺をパパって」
上着の裾で拭いたくせにポロポロと次々に涙が零れている。
ママンは嬉しそうにそれを見つめた。
「あらあら、ロイたら勇者様のパパをもう泣かせるなんて。きっと強くなるわこの子、私達の天使」
まあ勇者と言っても世界を救うっていうスケールではなく、村を救ったりした冒険者には結構与えられる称号らしいので、俺がこいつの後を継いで魔王と戦うなんてことはしなくてすみそうだ。
大体、ヒキニートの俺にそんなことは無理だからな。
俺の心の中に小さな罪悪感が浮んだ。
ママンやこのイケメン野郎の息子なら、本来は相当優秀なガキが生まれたはずだ。
それがなんの因果か、俺みたいなどうしようもない奴が生まれてきたんだからな。
俺は思わず二人の幸せそうな顔を見つめた。
こんなクソみたいな俺のことでも天使と呼んでくれる……
俺は自分の小さな手を見つめた。
(俺は生まれ変わったんだ……これからは、この世界で俺は生きていくんだな)
ふとそんな実感が俺の心の中に生まれた。
人生をやり直せるなら俺は変れるのだろうか?
俺はこちらを見つめて微笑む両親の嬉しそうな笑顔を見つめた後、もう一度静かに自分の手のひらを見つめた。
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