ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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21、寄宿舎にて

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 その頃、聖ビクトルード仕官育成学校の寄宿舎では、今朝の出来事が話題になっていた。
 貴族の息子たちが集まっている南棟の中庭で、数名の生徒たちが話をしている。
 
 ロイたちに比べると少し大人びて見えるのを見ると、上級生だろう。
 彼らは口々に言う。

「聞いたか? あの氷帝の息子が赤っ恥をかいたって噂を」

「ああ、そうらしいな」

「それも相手は貴族の息子でもなんでもないらしいぞ。こりゃ、氷帝も意外と大したことはないのかもしれないな。息子がその程度なら底が知れるってもんだ」

 その時──
 そこで話をしていた生徒たちはまるで凍り付いたように動きを止めた。
 数名の少年たちが彼らの方へと歩いてくるのを見たからだ。

 その中心にいるのが、彼らが話題にしていた氷帝ドバイン・フォーゲル伯爵の息子アンドニウスだ。
 その目は怒りに燃えている。

 凄まじい魔力が辺りに放出されて、歩いているその足元の周囲が凍り付いていく。
 それを見て、先ほどまであれほどアンドニウスを嘲笑っていた上級生たちは、息をひそめるように口をつぐんだ。

 そしてアンドニウスたちが通り過ぎると、ふぅと息を吐く。

「おい、今の見たか?」

「ああ、なんて魔力だ。あれが氷帝の息子……ありゃ化け物だぜ」

 背筋が凍り付くような思いで、下級生であるアンドニウスの背中を見つめる上級生たち。

「信じられん。学院最強と名高い生徒会のメンバーならともかく、俺たち三年にもあんな力を持った奴はいない」

「嘘だろう……あんな奴に勝てる新入生がいるってのか?」

「一体何者だ、噂のロイっていう奴は」

 口々にそう噂する生徒たち。
 それは中庭だけではない。
 寄宿舎のいたるところで同じような噂が広がっていた。
 アンドニウスは寄宿舎を歩きながら、その額に青筋を立てる。

「ふざけやがってあの野郎……この俺に、そして父上に恥をかかせやがって。おい、あの野郎の素性は分かったか?」

 一緒に宿舎を歩く取り巻きの一人が答える。

「はい、アンドニウス様。ロイ・リンドグルーム、貴族でも何でもない平民の息子だそうです」

 それを聞いてアンドニウスは舌打ちをする。

「許せねえ。平民ごときがこの俺に恥をかかせるなんて。あいつには自分の身の程って奴を教えてやる。あれは用意できるか?」

「はい、お父君もフォーゲル伯爵家の威信の為ならば使うことをお許しになるでしょう」

 それを聞いてアンドニウスは笑った。

「馬鹿な野郎だ、ロイ・リンドグルーム。お前に俺の本当の力を思い知らせてやる。ふふ、ははは!!」

 アンドニウスは傲慢なその顔を歪めて愉快そうに笑うと、中庭から宿舎に入りその奥へと消えていった。
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