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37、氷帝の紋章
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「ねえ、ねえ、そういえば新入生たちは食堂に来ないのかしら! ほら、あの子が来たら聞いてみたいじゃない? 新入生の歴代最速記録の保持者になった気持ちってやつを」
友人の一人がそう話すのを聞きながら、私は呆れたように答える。
「やめときなさいよ、はしたない。それに、新入生は前半のテスト期間は午前中だけよ。そろそろ下校の時間じゃないかしら?」
「そっか。去年、後半の試験からしか受けてなかったから忘れてたわ」
まあ、この子も子爵家の令嬢だから知らなくて当然かもね。
食堂を見ても、やっぱり貴族の家の子とそうでない子たちは分かれて座っている。
私はそれが好きじゃない。
でも、自然に垣根が出来てしまうのよね。
生徒会のメンバーも皆、貴族の子供ばかり。
それじゃあ、お互いの垣根は高くなる一方だもの。
そもそも貴族の子供だけ、前半の試験が免除されるのだってどうかと思う。
同じ新入生なんだから、公平にやるべきだわ。
「あの子が生徒会に入れば、少しはそんな空気も変わるかもしれないし」
ま、まあ、それにそうなったら放課後は毎日一緒にいられるもの。
ふふ、私がお姉さんなんだもの、生徒会の仕事を手取り足取り教えてあげないと。
その為には、まず新入生の筆頭になってもらわないとね。
「ふふ、ふふふ」
「ティア、何にやけてるのよ」
「失礼ね! にやけてなんていないわよ!」
私としたことが、少しはしたない笑い方をしていたみたいだ。
緩んだ口元をきゅっと引き締めてこほんと咳払いをする。
そんな中、友人の一人が窓の外を指さして言った。
「ねえ、ちょっとティアあれを見て。あれってもしかして……」
「どうかしたの?」
私は友人が指さした方を見る。
学園の二階にある食堂の窓からは寄宿舎が良く見える。
「噂をすれば影ね」
そう言って眉を顰めたのは私の友人の一人だ。
私も頷く。
「ええ、あいつ……どこにいくつもりかしら? 食堂に来るようには見えないけど」
貴族の息子たちが数名、偉そうに肩で風を切るように歩いているのが見える。
その先頭にいるのはアンドニウスだ。
昼食をとるなら食堂に来るはずなのに、何故か校庭の方へと向かっている。
校庭にはまだ新入生たちがいるはずだ。
あいつも今日は試験を免除されているはずよ。
どうして、校庭なんかに……
私は目を凝らしてアンドニウスの姿を見つめる。
魔力で目を活性化することで、普段よりも遠くがはっきりと見えるように。
そして、私はアンドニウスの手に、見たことがある紋章が記されたある物が握られているのを見た。
「あれは……氷帝の紋章」
フォーゲル伯爵家の紋章だ。
私はアンドニウスが手にしているそれを見つめながら席から立ち上がる。
あれは──
「まさか、あの馬鹿あんなものを使うつもりじゃ……」
もしそうなら、あいつがそれを使う相手は一人しかいない
私はそう呟いて身を翻す。
そして、食堂の出口へを向かった。
「ティア! どこに行くの!!」
「そうよ! もうすぐ午後の授業よ?」
私は振り返って友人たちに告げる。
「午後の授業には少し遅れるわ! 悪いけど、先生にはそう伝えておいて!」
そして、そのまま食堂を飛び出した。
─────
ご覧いただきましてありがとうございます!
いつも応援して下さる皆様に感謝です。
同時連載中の『神速の成長チート』も沢山の方にご覧いただきましてありがとうございます。
バタバタとした日常に追われつつも、なんとかあちらも今45話まで書き進めることが出来ました。
それから、もしよろしければ著作の『追放王子の英雄紋』のコミカライズが始まっていますのでぜひご覧くださいませ。
こちらも下のリンクからコミカライズのページに飛べるようになっています。
楽しくご覧頂ければ幸いです!
それでは今後ともロイたち共々よろしくお願いします!
友人の一人がそう話すのを聞きながら、私は呆れたように答える。
「やめときなさいよ、はしたない。それに、新入生は前半のテスト期間は午前中だけよ。そろそろ下校の時間じゃないかしら?」
「そっか。去年、後半の試験からしか受けてなかったから忘れてたわ」
まあ、この子も子爵家の令嬢だから知らなくて当然かもね。
食堂を見ても、やっぱり貴族の家の子とそうでない子たちは分かれて座っている。
私はそれが好きじゃない。
でも、自然に垣根が出来てしまうのよね。
生徒会のメンバーも皆、貴族の子供ばかり。
それじゃあ、お互いの垣根は高くなる一方だもの。
そもそも貴族の子供だけ、前半の試験が免除されるのだってどうかと思う。
同じ新入生なんだから、公平にやるべきだわ。
「あの子が生徒会に入れば、少しはそんな空気も変わるかもしれないし」
ま、まあ、それにそうなったら放課後は毎日一緒にいられるもの。
ふふ、私がお姉さんなんだもの、生徒会の仕事を手取り足取り教えてあげないと。
その為には、まず新入生の筆頭になってもらわないとね。
「ふふ、ふふふ」
「ティア、何にやけてるのよ」
「失礼ね! にやけてなんていないわよ!」
私としたことが、少しはしたない笑い方をしていたみたいだ。
緩んだ口元をきゅっと引き締めてこほんと咳払いをする。
そんな中、友人の一人が窓の外を指さして言った。
「ねえ、ちょっとティアあれを見て。あれってもしかして……」
「どうかしたの?」
私は友人が指さした方を見る。
学園の二階にある食堂の窓からは寄宿舎が良く見える。
「噂をすれば影ね」
そう言って眉を顰めたのは私の友人の一人だ。
私も頷く。
「ええ、あいつ……どこにいくつもりかしら? 食堂に来るようには見えないけど」
貴族の息子たちが数名、偉そうに肩で風を切るように歩いているのが見える。
その先頭にいるのはアンドニウスだ。
昼食をとるなら食堂に来るはずなのに、何故か校庭の方へと向かっている。
校庭にはまだ新入生たちがいるはずだ。
あいつも今日は試験を免除されているはずよ。
どうして、校庭なんかに……
私は目を凝らしてアンドニウスの姿を見つめる。
魔力で目を活性化することで、普段よりも遠くがはっきりと見えるように。
そして、私はアンドニウスの手に、見たことがある紋章が記されたある物が握られているのを見た。
「あれは……氷帝の紋章」
フォーゲル伯爵家の紋章だ。
私はアンドニウスが手にしているそれを見つめながら席から立ち上がる。
あれは──
「まさか、あの馬鹿あんなものを使うつもりじゃ……」
もしそうなら、あいつがそれを使う相手は一人しかいない
私はそう呟いて身を翻す。
そして、食堂の出口へを向かった。
「ティア! どこに行くの!!」
「そうよ! もうすぐ午後の授業よ?」
私は振り返って友人たちに告げる。
「午後の授業には少し遅れるわ! 悪いけど、先生にはそう伝えておいて!」
そして、そのまま食堂を飛び出した。
─────
ご覧いただきましてありがとうございます!
いつも応援して下さる皆様に感謝です。
同時連載中の『神速の成長チート』も沢山の方にご覧いただきましてありがとうございます。
バタバタとした日常に追われつつも、なんとかあちらも今45話まで書き進めることが出来ました。
それから、もしよろしければ著作の『追放王子の英雄紋』のコミカライズが始まっていますのでぜひご覧くださいませ。
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それでは今後ともロイたち共々よろしくお願いします!
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