ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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36、筆頭試験

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「ねえ、ティア聞いた?」

「何を?」

 私、ティア・ファーレンは友人のその言葉に首を傾げる。
 午前中の授業も終わり、私たちはいつも通りこの学園の食堂にいる。

「さっき、用事があって少し職員室に行ってたんだけど、その時、先生たちの中で例のあの子のことが噂になってて」

 私はチラリと友人の顔を見る。

「はしたないわよ、盗み聞きするような真似をして。私は別に興味はないわ」

「そっか、今朝もあんなことがあったしティアも聞きたいかなって思ったんだけどな」

「あれは生徒会の副会長として規律を守る為にしたことよ。そう言ったでしょう?」

 なによ、もったいぶってないで早く話しなさいよ!
 他の友人たちがうずうずしたような顔で待っている中、私もそわそわしながらクールを装ってそう言った。
 どうせ、この子も話したくて仕方ないっていう顔をしているもの。
 分かってるんだから。
 駄目と言っても話し始めるに決まってる。

「まあいいわ。それで何があったの?」

 意外と辛抱強い友人に私の方が痺れを切らしてそう促す。

「もう、ティアったらクールなんだから。ねえ、聞いて! あの子、午前中の運動テストの短距離走で新入生の最高記録を出したんですって! 2秒1よ、2秒1! 凄くない!?」

 それを聞いて周りの友人たちも声を上げた。

「はや!」

「嘘でしょ! 新入生でそんなタイムが出せるなんて。幾ら身体強化を使ったとしてもありえなくない?」

「でしょ! ねえ、ティアはどう思う?」

 私は声が上ずらないように注意しながら答える。

「まあ、中々やるわね。今の私より少し遅いぐらいかしら、でも新入生なら上出来だわ」

「もう! そりゃティアと比べたらそうだけど。新入生の中では歴代最速よ。なんでも稲妻のロイって呼ばれてるらしいわ!」

 あの子の情報を誇らしげに話す友人を見つめながら、私は昼食についてきた紅茶を飲んだ。
 稲妻のロイって言う通り名はどうかと思うけど、でも確かに速い。

 貴族の子供たちはクラス分けの前半の試験には参加しないから、歴代最速とまでは言い切れないけどそれにしても最高レベルの成績であることは間違いないわ。

 今の私のタイムが2秒フラット。
 それに迫るタイムだもの。
 普通の新入生に出せる数字じゃない。

「決まりね」

 私がそう言うと友人たちは首を傾げる。

「ティア、決まりって何が?」

 彼女たちに私は答える。

「新入生の試験の後半には、筆頭を決める実戦のテストがあるわ。それも戦闘形式のね。彼は間違いなくそこに参加することになる。生徒会への参加を懸けた祭りへの招待状を勝ち取るためにね」

「筆頭試験ね! 去年はティアが筆頭になったけど、今年は誰になるのかしら。やっぱりあの子?」

「どうかしら、アンドニウスが妙に大人しいのが気になるわ」

 今朝は姿を見せなかったけど、あいつが、あのまま黙っているとはとても思えない。
 氷帝の息子である自分以外が新入生の筆頭になるなんて、あいつは絶対に認めないだろう。

 それも貴族以外の子が。

 それに筆頭試験の日には、あいつの父親である氷帝ドバイン・フォーゲルも観戦にやってくる。
 フォーゲル家の威信にかけても筆頭を取りに来るに違いない。

「面倒なことにならなければいいけど」

 私はそう呟きながら、昼食を食べ始めた。
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