ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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35、握手

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 まあいずれにしても、トーマスも根は悪い奴じゃなさそうだ。
 それにアリシアの弟だからな。

 俺は改めてトーマスに手を差し出した。

「ロイ様じゃなくてロイでいいよ。トーマス君……いいやトーマス!」

 同級生だからな、その方が気楽だ。
 俺はアンドニウスみたいに取り巻きを引き連れて歩くつもりはない。
 ロイ様もロイ軍団も勘弁だ。

 なにしろ、中学以来ずっと引きこもりだったから俺は勇気を出して緊張気味にそう言った。
 それを聞いてトーマスは嬉しそうに笑うと頷いた。

「へへ、そっか! ろ、ロイ。よろしくな!」

 そう言って笑うトーマスは、俺とがっちり握手をする。
 アリシアがそんなトーマスの頭に手を置いて言った。

「良かったわねトーマス。憧れのロイ様と友達になれて」

「友達か! へへ、姉ちゃんありがとな」

 屈託なく笑うトーマスを見ていると、悪くない気分だ。
 それを見て同級生たちからも歓声が上がる。
 そして、次々に握手を求められた。

「ロイ! よろしくな!」

「俺もよろしく!」

「それにしてもトーマスの姉ちゃん、胸でっかいよな!」

 まあ、それは同感である。
 もう少しで窒息しかけたからな。
 驚異の成長である。
 俺はアーシェの前に行った。

「アーシェありがとう! アーシェが一生懸命応援してくれるのが見えたからさ、俺頑張ってみたよ」

 やり過ぎた感はあるけど、頑張ってよかった。
 アーシェが一人、俺のことを応援してくれた姿は感動した。
 俺なんかよりアーシェはずっと勇気がある。
 少し頬を膨らませていたアーシェは、顔を赤くすると嬉しそうに微笑む。

「えへへ、ロイ凄く格好よかった!」

「応援ありがとうアーシェ」

「うん!」

 アーシェはアーシェで、女の子たちの中に友達が出来たみたいだ。
 直ぐに何人かの女子生徒に声をかけられて、こちらを見てなにやらキャッキャと話をしている。

 何を話しているのかは分からないが、アーシェに友達が出来たことは俺も嬉しい。
 そんな姿を眺めながら、俺はアリシアに言う。

「なあ、アリシア。仕事も忙しいだろうけどよかったら家にも寄ってくれよ。父さんも母さんも喜ぶからさ」

「ええ、ロイ様。私もそうしようと思っていたんです。実は父から都の商売を任されることになって暫くはここにいますから。ふふ、本当は今日もロイ様に会えるんじゃないかって楽しみにしてたんですよ!」

 へえ、都での商売か。
 一度アリシアの店にも行ってみたいな。
 世界中を飛び回ってたみたいだし、何か俺が知らないようなものがあるかもしれない。
 あの目玉付きの魔道具みたいに、この学園にも見たことがないようなアイテムがいっぱいあるからな。

「はは、俺もアリシアに会えて嬉しかったよ」

「もう! ロイ様ったら私の天使!!」

 そう言ってアリシアは俺のことをまたギュッと抱きしめた。

「ふが……アリシア息が……」

 色んな意味でこのまま天国に行きそうだ。
 トーマスがアリシアを独り占めしたくなる気持ちも分からなくもない。
 シスコンになるわけだ。
 幸いなことに昇天する前に解放された俺に、アリシアは名残惜しそうに言う。

「それじゃあロイ様、私はこれで。これから士官学校の校長のファーレン伯爵とも商売の話があるんです。奥様達にはあらためてご挨拶に行きますから!」

「ああ、アリシア!」

 アリシアは手を振って校舎の方へと歩いていく。
 士官学校との取引か、あの校長との話となるとアリシアも大変そうだな。
 俺も手を振りながらその後姿を見送った。
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