ダブル魔眼の最強術師 ~前世は散々でしたが、せっかく転生したので今度は最高の人生を目指します!~

雪華慧太

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53、折れた剣

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 なんて動きだ。
 尋常な速さではない。

「会長!!」

 ティア先輩にとって、予想もしていなかった出来事なのだろう。
 思わず声を上げて俺の手を放すと、居合の姿勢になる。

 その時には俺はもう、腰の剣を抜いていた。
 こっちは辛うじて予想の範囲内だったからな。

 まさか、ここまでするとは思わなかったが、屋上でこの魔力を感じた時から嫌な予感はしていた。

 俺が抜いた剣は、こちらに向かって振るわれた奴の剣とぶつかり合って、火花を散らすと高い音を鳴らして先端部分がへし折れる。

「ちっ!!」

 アンドニウスとの一戦でヒビが入ってたところが、とうとう耐えきれなくなったのだろう。
 くるくると回転しながら俺の剣先は、生徒会室の天井に突き刺さった。

 こいつはヤバいな。

 今のはなんとか受けきったが。
 次の一撃は、この折れた剣ではどうにもならない。
 純粋な剣技だけを言えば、こいつの方がアンドニウスよりも遥かに上だ。

 だが、次の瞬間、赤い閃光のような一撃が俺の傍に立つ男に放たれるとその剣と激突した。
 その髪と同様に紅に染まっている刀を振るったのはティア先輩だ。
 凄まじい速さの居合が放たれ、銀髪の男の剣と火花を散らしている。

「ケルヴィン会長! これはどういうこと? 説明して頂戴!! キース、貴方は何か知ってるの!!?」

 どうやら、この銀髪の生徒会長の名はケルヴィンと言うらしい。
 キースと言うのは少しチャラい感じに制服を着崩した茶髪の男だな。
 生徒会の書記らしいが、紅蓮に輝くティア先輩の姿を見て一気に距離をとる。

「さあ、俺は何も。言ったでしょう俺は何も関係ないって。副会長に、そいつでぶった切られるのは御免ですよ」

 一体、どういうことだ?
 どうやら生徒会も一枚岩ではないようだ。

 少なくとも、ティア先輩が俺の味方だってことは間違いない。

 今も剣が折れた俺とアーシェを守るように、前に立ってるからな。
 ビビは突然の出来事に言葉を失っているアーシェの肩の上で臨戦態勢に入っている。
 ティア先輩と鍔迫り合いをしているケルヴィンが、キースに言う。

「キース、そいつを仕留めろ。見ての通り、俺は今手が離せん」

「会長……それ、本気で言ってます?」

「ああ、俺が冗談を言ったことがあるか? この士官学校では俺はお前の上官も同然だ、命令に背くことは許さん」

 キースはそれを聞いて肩をすくめるとふぅと息を吐く。
 そして、俺たちから更に距離を取ると言った。

「まったく、知ってるでしょう。俺はこんな近距離戦は苦手なんですよ。遠距離から敵を狙撃する、それなら誰にも負ける気はしませんけどね」

「やめなさい、キース!!」

 ティア先輩が叫ぶ。
 だが、その時にはもうキースはこちらに向かって何かを構えていた。

 こいつは……

 まるでそれは狙撃用の銃だ。
 キースの魔力で作り出されたそれは、俺に標準を定めている。
 引き金に指をかけたまま奴は言う

「何だか分からねえが、悪いな新入生。これも上官命令だ。死んでも俺を恨むなよ」

 そして、キースはその銃の引き金を引いた。
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