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55、生じた疑問
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「ロイ!」
心配そうに俺を見つめるアーシェ。
「アーシェ。大丈夫、怪我はしてないからさ。先生、アーシェを頼みます」
「ああ、まだ気は抜けないからね。一体こいつらが誰の命令で動いたのかが分からない」
当然の疑問だな。
それが分かるまでは警戒が必要だ。
「ええ、先生」
俺は、アーシェの護衛をラフィーネに任せると、ティア先輩たちを見る。
それにしても、流石だな。
俺の黄金のリボルバーが作り出した一瞬の隙を、ティア先輩は見逃さなかった。
どうやってケルヴィンがラフィーネ先生の隠蔽術を見破ったのかは気になるところだが、純粋に剣技だけで言えばこの二人の実力は拮抗しているように見える。
士官学校に入学するまでは居心地のいい我が家にすっかり引きこもっていた俺は、学園の事情には疎いがどちらもこの学園きっての実力者だろう。
真紅に輝く髪を靡かせて、生徒会長のケルヴィンに刀を突きつけているティア先輩。
その迫力は半端ない。
まあ、父親があの炎帝閣下だからな。
幼い頃から英才教育を受けてきたことは想像が出来る。
才能と努力の賜物と言ったところか。
誰もが振り向くほどの美貌を持つ赤髪の少女は、殺し屋のような目で再びケルヴィンに詰め寄る。
「私があまり気が長い方じゃないことは、会長もご存知だと思いますけど」
怖い怖い!
俺なら確実に全てを吐きそうな状況である。
味方で良かった。
それにしても、妙な話だ。
もし、俺を本気で仕留めるつもりならもっと綿密に計画を練るだろう。
ケルヴィンがもし氷帝側の人間で仮に俺が邪魔だと判断したとしても、こんな杜撰な暗殺計画を立てるだろうか。
何しろアンドニウスと俺が戦ったのは今さっきの話だからな。
氷帝から何らかの命令が下るにしても早すぎる。
だとすると、今回のことは氷帝とは全く関係のない誰かの命令なのか?
少なくとも、俺はこいつに恨みを買った覚えはない。
俺はそんなことを考えながら、リボルバーをまたぶっ放した。
「おっと、キース先輩。動かないで下さいよ。動くと今度は俺の手が滑って頭をぶち抜くかもしれません」
床に転がっていたキースが、身を起こそうとしたので俺は威嚇射撃をする。
こいつも曲者だからな。
アーシェもいるし、少しでも妙な動きをすれば見逃せない。
ここは、脅しをかける為にもティア先輩を見習って殺し屋モードでいこう。
たまにはハードボイルドに決めるのも悪くない。
「ば、馬鹿! 撃つなって! 俺はマジで関係ねえから!」
「関係ない奴に銃を突きつけられたらかないませんよ」
「そ、そりゃ確かに」
どうやら、こいつは本当に何も知らなかったみたいだな。
チャラそうな奴だが、嘘を言っているようには思えない。
俺は、キースのベルトを外すと、それで両手をきっちりと縛り上げる。
「このまま、会長の傍に行ってもらいますよ。左右に分かれてると監視しにくいですから」
「わ、分かった」
すっかり白旗を振って、俺のリボルバーに促されるままにケルヴィンの傍に歩いていくキース。
ケルヴィンの喉元に刀を突きつけながらティア先輩がにっこりと笑う。
「上出来よ、ロイ君。ふふ、私たちの初めての共同作業ね」
「は……はは」
今のはティア先輩のブラックジョークだろうか。
殺し屋の新婚夫婦でもしなさそうな会話である。
こんな共同作業は勘弁して欲しい。
まあ、しかし降りかかる火の粉は払うしかないからな。
その時──
ケルヴィンの肩の上に、何かが現れる。
俺は思わずリボルバーを出現したそれに向ける。
「これは……」
そこに現れたのは白いフクロウだ。
フクロウは俺を見つめて、大きく翼を開く。
そして、喋った。
その声はここにいる誰でもない、何者かの声だ。
「なるほど、これは思った以上の逸材ですね。魔力はもちろんですが、キースの技を即座に真似てみせた柔軟さ。そして、敵と味方を見極める判断能力。合格です、ロイ・リンドグルーム。ようこそ、生徒会へ」
それと同時に、閉じられていた生徒会室の扉が再び開きそこから誰かが部屋に入ってくるのを俺は見た。
心配そうに俺を見つめるアーシェ。
「アーシェ。大丈夫、怪我はしてないからさ。先生、アーシェを頼みます」
「ああ、まだ気は抜けないからね。一体こいつらが誰の命令で動いたのかが分からない」
当然の疑問だな。
それが分かるまでは警戒が必要だ。
「ええ、先生」
俺は、アーシェの護衛をラフィーネに任せると、ティア先輩たちを見る。
それにしても、流石だな。
俺の黄金のリボルバーが作り出した一瞬の隙を、ティア先輩は見逃さなかった。
どうやってケルヴィンがラフィーネ先生の隠蔽術を見破ったのかは気になるところだが、純粋に剣技だけで言えばこの二人の実力は拮抗しているように見える。
士官学校に入学するまでは居心地のいい我が家にすっかり引きこもっていた俺は、学園の事情には疎いがどちらもこの学園きっての実力者だろう。
真紅に輝く髪を靡かせて、生徒会長のケルヴィンに刀を突きつけているティア先輩。
その迫力は半端ない。
まあ、父親があの炎帝閣下だからな。
幼い頃から英才教育を受けてきたことは想像が出来る。
才能と努力の賜物と言ったところか。
誰もが振り向くほどの美貌を持つ赤髪の少女は、殺し屋のような目で再びケルヴィンに詰め寄る。
「私があまり気が長い方じゃないことは、会長もご存知だと思いますけど」
怖い怖い!
俺なら確実に全てを吐きそうな状況である。
味方で良かった。
それにしても、妙な話だ。
もし、俺を本気で仕留めるつもりならもっと綿密に計画を練るだろう。
ケルヴィンがもし氷帝側の人間で仮に俺が邪魔だと判断したとしても、こんな杜撰な暗殺計画を立てるだろうか。
何しろアンドニウスと俺が戦ったのは今さっきの話だからな。
氷帝から何らかの命令が下るにしても早すぎる。
だとすると、今回のことは氷帝とは全く関係のない誰かの命令なのか?
少なくとも、俺はこいつに恨みを買った覚えはない。
俺はそんなことを考えながら、リボルバーをまたぶっ放した。
「おっと、キース先輩。動かないで下さいよ。動くと今度は俺の手が滑って頭をぶち抜くかもしれません」
床に転がっていたキースが、身を起こそうとしたので俺は威嚇射撃をする。
こいつも曲者だからな。
アーシェもいるし、少しでも妙な動きをすれば見逃せない。
ここは、脅しをかける為にもティア先輩を見習って殺し屋モードでいこう。
たまにはハードボイルドに決めるのも悪くない。
「ば、馬鹿! 撃つなって! 俺はマジで関係ねえから!」
「関係ない奴に銃を突きつけられたらかないませんよ」
「そ、そりゃ確かに」
どうやら、こいつは本当に何も知らなかったみたいだな。
チャラそうな奴だが、嘘を言っているようには思えない。
俺は、キースのベルトを外すと、それで両手をきっちりと縛り上げる。
「このまま、会長の傍に行ってもらいますよ。左右に分かれてると監視しにくいですから」
「わ、分かった」
すっかり白旗を振って、俺のリボルバーに促されるままにケルヴィンの傍に歩いていくキース。
ケルヴィンの喉元に刀を突きつけながらティア先輩がにっこりと笑う。
「上出来よ、ロイ君。ふふ、私たちの初めての共同作業ね」
「は……はは」
今のはティア先輩のブラックジョークだろうか。
殺し屋の新婚夫婦でもしなさそうな会話である。
こんな共同作業は勘弁して欲しい。
まあ、しかし降りかかる火の粉は払うしかないからな。
その時──
ケルヴィンの肩の上に、何かが現れる。
俺は思わずリボルバーを出現したそれに向ける。
「これは……」
そこに現れたのは白いフクロウだ。
フクロウは俺を見つめて、大きく翼を開く。
そして、喋った。
その声はここにいる誰でもない、何者かの声だ。
「なるほど、これは思った以上の逸材ですね。魔力はもちろんですが、キースの技を即座に真似てみせた柔軟さ。そして、敵と味方を見極める判断能力。合格です、ロイ・リンドグルーム。ようこそ、生徒会へ」
それと同時に、閉じられていた生徒会室の扉が再び開きそこから誰かが部屋に入ってくるのを俺は見た。
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