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64、楽しいひと時
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アリシアたちを迎えて、あれから俺たちは色々な昔話に花を咲かせていた。
そして、楽しい夕食の団欒の時間は過ぎて、いつの間にか日は沈み夜になっていた。
夕食の席の中で、トーマスはママンの料理を食べながら言う。
「うめえ! ロイ、お前の母ちゃん美人なだけじゃなくて料理も上手いんだな」
「まあな、トーマス」
しかしこいつ遠慮なく食いやがるな。
ママンが、せっかく俺やアーシェの初日の祝いに豪華な肉料理を作ってくれたのにさ。
俺はジト目でトーマスを眺める。
だが、トーマスの方はそれに気が付く様子もない。
色々な意味で中々の大物である。
「ふふ、沢山食べて頂戴! 今日はロイとアーシェのお祝いもあっていっぱい料理を作ったのよ」
「はい! ロイのママ!!」
なにがロイのママだ。
そんな、トーマスを溜め息を吐きながら眺めるアリシア。
「すみません、奥様。本当は私一人で来るつもりだったんですけど、どうしてもついてきたいって。トーマスったら図々しいんだから」
「いいのよ、アリシア。貴方の弟なら大歓迎よ」
さすがうちの女神は懐が深い。
俺はそんなアリシアに耳打ちをする。
「アリシア。俺さ、実は新しい剣が欲しいんだけど明日アリシアの店に行ってもいいかな」
「ふふ、聞いてますよ。なんでも氷帝の息子と揉めたそうじゃないですか。それで剣が駄目になったんですね、そのことはトーマスには口留めしてますから明日家の店に来てください」
彼女はそう囁き返す。
流石アリシア、俺の事をよく分かっている。
何しろ赤ん坊の頃は、ママンが仕事の時間はずっとアリシアに世話をしてもらってたからな。
アリシアは俺に言う。
「そういえば、私も今日は学園に納める色々な品物について、エミリア校長代理と話をしてたんですよ」
「へえ、そうなんだ」
なるほどな。
エミリア先生が言っていた来客って言うのはアリシアのことか。
校庭で再会した後に、校舎の方に向かっていったがどうやら商談に向かったらしい。
アリシアは興奮したように言う。
「四帝候補生の話、さっき旦那様から聞きました。私、断然応援しちゃいます! 炎帝のお嬢様と同じナイトの称号を持つ生徒。それも新入生でなんて! 私のロイ様はやっぱり天才だったんだわ」
そう言って、アリシアは昔に戻ったかのように俺をギュッと抱きしめる。
そんな姉の姿を見て、トーマスはジト目で言う。
「ロイ! 俺の姉ちゃんだからな」
「……」
まったく、人の家に来てバクバク飯を食うくせに、ことアリシアに関してはけち臭い奴だ。
かなり重度なシスコンのようである。
アリシアはぐっと拳を握って俺に言った。
「とにかく、エバースタイン商会を挙げてロイ様を支援させて頂きます!」
「は……はは、ありがとう、アリシア。でもさ、そんなこと勝手に決めちゃっていいの?」
「ふふ、もちろんこちらにもメリットはありますから。うちの品物を身につけて四帝候補生としてロイ様が活躍すれば、商会の宣伝にもなりますし」
なるほど、俺はある意味生きた広告塔ってことか。
元の世界のスポーツ選手とスポンサーみたいな関係かもしれないな。
「はは、さすが商売人だな」
「ふふふ、でも一番は私のロイ様を応援したい気持ちからですけどね」
「……俺の姉ちゃんだぞ」
うるさい奴が聞き耳を立ててやがるな。
トーマスはすっかり膨れた腹をさすりながら俺に言う。
「なあロイ! 明日は俺たちは休みだろ? ならうちの来いよ! 俺さ、入学祝いに新しい剣を作ってもらうんだぜ」
確かに運動能力テストで上位になった俺たちは、後半の試験までは休みだ。
それにしても今のはどういうことだ?
「剣を作ってもらう? 仕入れるんじゃないのか、トーマス」
「へへん! うちは士官学校に武器を納めてるからさ、都の商会にはでっかい鍛冶工房もあるんだ。そこで、俺の剣も作ってもらうのさ」
「へえ! そいつは凄いな」
アリシアがコホンと咳払いをする。
そして、アランとママンに言った。
「旦那様、奥様。私、ロイ様の入学祝いに新しい剣を贈りたいと思うんです。いかがでしょう?」
ナイス、アリシア。
さりげなく、俺が新しい剣を手に入れることを自然に両親に伝えてくれる。
今でもうちの元メイドは優秀だ。
アランとママンは顔を見合わせる。
「でも、いいのかアリシア?」
「そうよ、気を遣わなくてもいいのよ。貴方は家族同然なんだから」
ママンのその言葉にアリシアはまたウルっとなっている。
「だからですよ、奥様。家族としてロイ様に剣を贈りたいんです! ね、いいでしょう?」
それを聞いてアランとママンは顔を見合わせて微笑んだ。
「ありがとう、アリシア」
「嬉しいわ。何よりも貴方のその気持ちが。ありがとう!」
ママンが席を立つと俺たちの方に歩み寄ってアリシアとギュッと抱きしめ合う。
俺はアーシェに言った。
「アーシェも一緒に行こう!」
「うん! ロイ! ロイが行くなら私も行きたい!!」
アーシェは回復魔法や風魔法が得意みたいだし、ならいい杖があるかもしれないもんな。
アリシアはそれを聞いてニッコリと微笑む。
そして、俺の脇腹を肘でつついた。
「ふふ~ん、やりますねロイ様」
「何がだよ、アリシア?」
「また、とぼけちゃって。ほんと、そういう天然なところは旦那様によく似てるんだから」
俺が、アランに? 何のことだろう。
それにしても、エバースタイン商会か。
楽しみだな。
俺は明日の事を楽しみにしながら、楽しい団欒の時を過ごしたのだった。
─────
ご覧頂きましてありがとうございます!
いつも応援して下さる皆様には感謝です!
今日は、追放王子の英雄紋のコミカライズの第四話が公開されたのでよろしければぜひご覧になってくださいね。
また、同時連載作品の『神速の成長チート』も沢山の方にお読みいただきましてありがとうございます。
あちらも早いもので今日で72話目になりました。
奇遇なことに丁度今、あちらも鍛冶工房の話になってるんですよね。
もしよかったらご覧くださいね!
それでは、今後ともロイたち共々よろしくお願いします!
そして、楽しい夕食の団欒の時間は過ぎて、いつの間にか日は沈み夜になっていた。
夕食の席の中で、トーマスはママンの料理を食べながら言う。
「うめえ! ロイ、お前の母ちゃん美人なだけじゃなくて料理も上手いんだな」
「まあな、トーマス」
しかしこいつ遠慮なく食いやがるな。
ママンが、せっかく俺やアーシェの初日の祝いに豪華な肉料理を作ってくれたのにさ。
俺はジト目でトーマスを眺める。
だが、トーマスの方はそれに気が付く様子もない。
色々な意味で中々の大物である。
「ふふ、沢山食べて頂戴! 今日はロイとアーシェのお祝いもあっていっぱい料理を作ったのよ」
「はい! ロイのママ!!」
なにがロイのママだ。
そんな、トーマスを溜め息を吐きながら眺めるアリシア。
「すみません、奥様。本当は私一人で来るつもりだったんですけど、どうしてもついてきたいって。トーマスったら図々しいんだから」
「いいのよ、アリシア。貴方の弟なら大歓迎よ」
さすがうちの女神は懐が深い。
俺はそんなアリシアに耳打ちをする。
「アリシア。俺さ、実は新しい剣が欲しいんだけど明日アリシアの店に行ってもいいかな」
「ふふ、聞いてますよ。なんでも氷帝の息子と揉めたそうじゃないですか。それで剣が駄目になったんですね、そのことはトーマスには口留めしてますから明日家の店に来てください」
彼女はそう囁き返す。
流石アリシア、俺の事をよく分かっている。
何しろ赤ん坊の頃は、ママンが仕事の時間はずっとアリシアに世話をしてもらってたからな。
アリシアは俺に言う。
「そういえば、私も今日は学園に納める色々な品物について、エミリア校長代理と話をしてたんですよ」
「へえ、そうなんだ」
なるほどな。
エミリア先生が言っていた来客って言うのはアリシアのことか。
校庭で再会した後に、校舎の方に向かっていったがどうやら商談に向かったらしい。
アリシアは興奮したように言う。
「四帝候補生の話、さっき旦那様から聞きました。私、断然応援しちゃいます! 炎帝のお嬢様と同じナイトの称号を持つ生徒。それも新入生でなんて! 私のロイ様はやっぱり天才だったんだわ」
そう言って、アリシアは昔に戻ったかのように俺をギュッと抱きしめる。
そんな姉の姿を見て、トーマスはジト目で言う。
「ロイ! 俺の姉ちゃんだからな」
「……」
まったく、人の家に来てバクバク飯を食うくせに、ことアリシアに関してはけち臭い奴だ。
かなり重度なシスコンのようである。
アリシアはぐっと拳を握って俺に言った。
「とにかく、エバースタイン商会を挙げてロイ様を支援させて頂きます!」
「は……はは、ありがとう、アリシア。でもさ、そんなこと勝手に決めちゃっていいの?」
「ふふ、もちろんこちらにもメリットはありますから。うちの品物を身につけて四帝候補生としてロイ様が活躍すれば、商会の宣伝にもなりますし」
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「はは、さすが商売人だな」
「ふふふ、でも一番は私のロイ様を応援したい気持ちからですけどね」
「……俺の姉ちゃんだぞ」
うるさい奴が聞き耳を立ててやがるな。
トーマスはすっかり膨れた腹をさすりながら俺に言う。
「なあロイ! 明日は俺たちは休みだろ? ならうちの来いよ! 俺さ、入学祝いに新しい剣を作ってもらうんだぜ」
確かに運動能力テストで上位になった俺たちは、後半の試験までは休みだ。
それにしても今のはどういうことだ?
「剣を作ってもらう? 仕入れるんじゃないのか、トーマス」
「へへん! うちは士官学校に武器を納めてるからさ、都の商会にはでっかい鍛冶工房もあるんだ。そこで、俺の剣も作ってもらうのさ」
「へえ! そいつは凄いな」
アリシアがコホンと咳払いをする。
そして、アランとママンに言った。
「旦那様、奥様。私、ロイ様の入学祝いに新しい剣を贈りたいと思うんです。いかがでしょう?」
ナイス、アリシア。
さりげなく、俺が新しい剣を手に入れることを自然に両親に伝えてくれる。
今でもうちの元メイドは優秀だ。
アランとママンは顔を見合わせる。
「でも、いいのかアリシア?」
「そうよ、気を遣わなくてもいいのよ。貴方は家族同然なんだから」
ママンのその言葉にアリシアはまたウルっとなっている。
「だからですよ、奥様。家族としてロイ様に剣を贈りたいんです! ね、いいでしょう?」
それを聞いてアランとママンは顔を見合わせて微笑んだ。
「ありがとう、アリシア」
「嬉しいわ。何よりも貴方のその気持ちが。ありがとう!」
ママンが席を立つと俺たちの方に歩み寄ってアリシアとギュッと抱きしめ合う。
俺はアーシェに言った。
「アーシェも一緒に行こう!」
「うん! ロイ! ロイが行くなら私も行きたい!!」
アーシェは回復魔法や風魔法が得意みたいだし、ならいい杖があるかもしれないもんな。
アリシアはそれを聞いてニッコリと微笑む。
そして、俺の脇腹を肘でつついた。
「ふふ~ん、やりますねロイ様」
「何がだよ、アリシア?」
「また、とぼけちゃって。ほんと、そういう天然なところは旦那様によく似てるんだから」
俺が、アランに? 何のことだろう。
それにしても、エバースタイン商会か。
楽しみだな。
俺は明日の事を楽しみにしながら、楽しい団欒の時を過ごしたのだった。
─────
ご覧頂きましてありがとうございます!
いつも応援して下さる皆様には感謝です!
今日は、追放王子の英雄紋のコミカライズの第四話が公開されたのでよろしければぜひご覧になってくださいね。
また、同時連載作品の『神速の成長チート』も沢山の方にお読みいただきましてありがとうございます。
あちらも早いもので今日で72話目になりました。
奇遇なことに丁度今、あちらも鍛冶工房の話になってるんですよね。
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