私の海賊さん。~異世界で海賊を拾ったら私のものになりました~

谷地雪@第三回ひなた短編文学賞【大賞】

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本編

終章

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「さて、天気良好、とはいかないけど、海に出るには問題なしかな」

 久方ぶりに帆を張って、奏澄はコバルト号の上甲板から『窓』を眺めていた。

「でも、いいんですか? ハリソン先生。この島を出てしまうと、もうはぐれ者を治療する機会はなくなると思いますけど」

 くるりと振り返った先には、ハリソンの姿があった。ハリソンは、この島には残らずに、奏澄とメイズの出航に合わせて、また船医として船に乗ってくれることになったのだ。

「構いませんよ。かなりのデータは取れましたし、助手も一年で随分と育ちました。もう私がいなくても、困らないでしょう。それなら、外の世界であなたの傍についていた方が安心です」
「正直、助かります。ありがとうございます」

 奏澄が眉を下げて微笑むと、ハリソンも心得たように微笑んだ。

「最初は、どこに行くんだ」

 メイズの言葉に、奏澄は決めていたとばかりに答えた。

「アルメイシャ! メイズと回った順に、回ろうかなって」

 アルメイシャには、ライアーとマリーたちが待っている。最初に、奏澄の仲間になってくれた者たちだ。せっかくだから、仲間たちと会った順番に、もう一度世界を巡っていこう。
 今度は、義務じゃない。会いたい人に会いに行くための、楽しい船旅だ。そして。

 奏澄がメイズをじっと見ていると、視線に気づいたメイズが首を傾げた。それに何を答えることもなく、奏澄は照れくさそうに笑った。

 愛しい人が隣にいる。それだけで、何も不安はない。大丈夫だ。

「出航!」

 海面を波立たせ、船は進み、窓を潜って大海原を往く。
 たんぽぽの旗を、風にはためかせて。
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