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秘薬ちゃん+αのお話
来訪者(1)
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翌日、鳥さんの行方を探そうとするアチュリアをなんとか止めて、昨日同様依頼を受け、今はアチュリアと採取を行っているところです。
ふわりと漂う緑の葉と、すっかり涼しくなった風を感じて、もう直ぐ秋だなって実感が湧きます。
そして、いつものポイントを幾つか周り、一度採取した物を確認しようと荷を下ろした所で、昨日の黒い鳥がまたやって来ます。
「あ、昨日の鳥さん!どうしたの?」
そう言ってアチュリアが近づこうとすると、鳥さんはどこかを指し示すかのように翼と嘴を突き出します。
「またどこかへ連れて行って……って感じじゃない」
アチュリアがそう呟きます。確かに今の鳥さんは何かに焦っているような、そんな雰囲気を感じました。すると、何処からか叫び声の様な物が聞こえます。その声は複数あり、声と同時にどしんどしんと大きな足音も聞こえます。それと同時に鳥さんもか細く鳴き、その叫び声の方へと飛んでいきます。
「っ、ねーさま!!」
「うん、急がなきゃ…!」
私は彼女の言葉の意図を読み取ると同時に、彼女と叫び声の方へと向かいました。
幸い、その声はこちらに向かってきているようで、追いつくのは容易く、その後の準備も容易に行う事が出来ました。
もう直ぐここに……来た
「待って待って待ってぇぇえええ!!!!!私達蜂蜜とかないっつってんでしょうがぁぁぁああ!!!!!!!!」
「はっ、はっ、なんなのよこの熊…っ!!私達が何したっていうの!?」
「いやー多分シェルネ巣穴に入ってあなたはだぁれ?まっく○くろすけ?したのが気に触ったんじゃないかと」
「あんたのせいかぁぁぁああい!!!!!??」
「だってとっても柔らかそうなお腹だったんだもぉぉおん!!!!!!」
一人は猫耳が生えていて、森の中だと言うのに大きな布の服一枚という物凄く軽装な方と、セーラー服に大きなツインテールと、同盟と書かれた大きな旗を手に持った方が青熊に逃げている最中でした。
「た、助けないとっ!」
私はそこへと飛び出し、既に手元にあった夏華草とあかきのこ、それと爆薬を調合した物を青熊の鼻先へと放り投げました。
「お願い…引いてっ!!」
炸裂したお手製の爆弾は弾ける轟音と共に辺りに刺激物を撒き散らし、それと同時に放たれた火炎が少しだけ森の一部を焦がします。
「わっ_」
「きゃっ__」
ほんのちょっと聞こえた悲鳴は鳴り止まないキーンと言う音に掻き消され、辺りに小さな太陽の様な光がせいで目が潰れ、そこには暫くの間静寂が訪れました。
あ、あれ?おかしいな、こんなに威力強かったかな…
『また調合ミス?爆薬入れ過ぎたんじゃないか?』
う、うるさいなぁ、たまたまだってば……
潰れた目も少しずつ治り、前が見えるようになります。どうやら青熊は爆破の衝撃でどこかへ飛んでいってしまった様です。
「お、おねーさま?さっきの……何?」
「いや…えーと、ほらっ!まずあの人達を助けないと!!」
妹の冷ややかな視線から無理やり目を逸らし、先程のフラッシュバンで気絶した御二方を家に運びます。
……あれ、声は確か
「あ、あのー…すいませんうちの者をどちらヘ連れていかれるのでしょうかー…?」
声が聞こえる。だけど周りには私とアチュリアと気を失った御二方と……
「ここ!ここだって!ここに居るでしょ!?可愛い可愛い小さな貝類がよう!!」
「あ、見て見ておねーさま!珍しい貝殻拾ったー!!」
「それ!!それだって妹ちゃぁん!貴女が今持ってるそれです!私です!レスさんでーす!!」
「……?」
すると、アチュが持ってきた貝殻がぴょんっと跳ね、地面にぽてっと落っこちます。
……え?
「えーと…初めまして?ですね?」
「……ねーさま、新種?捕まえる?」
「えっ」
「いやっ、えーと……え、えぇ?喋ってる…?貝殻が?どう言う……」
「あ、そっか。あいつらが異常なんだよね、ほんとなんであんなすぐ受け入れられたのか…まぁ、あの。喋る貝類です。取り敢えず何処かしら安全な場所に行きたいんだけど…またあんなの出てきてもどうしようも無いからさ?」
「も、勿論それは私達も同じ気持ちですが…あの……」
などと私達がまごまごとしていると、その貝殻から見覚えのある黒い鳥さんが出てきます。
「ぴすっ、ぴすっ」
「うぉ、自分の意思で出てくるの珍しいわんねあなた。どうしたの?」
その鳥はぱたぱたと貝の上に止まり、羽繕いをしています。
「…ねーさま、多分危なくないと思うぜ?」
「……そう、だね。じゃあ……えーと、」
「レスさんですよー」
「レスさんも一緒に、私達の家までいらして下さい。この方達の知り合い…なんですよね?」
「まぁ知り合いと言うか…移動手段兼宿舎兼荷物持ちって感じだけど」
「…苦労してますね」
「苦労してます…」
「ねーさまー、これどうやって運ぶのー?」
「あ、ちょっとまってて。えーと、背負い紐何処だっけ……」
「私も少し手伝うよ、同盟ちゃん…この桃色の方なら私でも運べると思うし」
そう言ってレスさんは身体の中から二本の触手を吐き出し、桃髪の子の体に巻き付けていきます。
どう言う筋肉で動いてるんだろう…
私も慣れた手つきで猫耳の子を身体に巻き付けていきます。本当はアチュが疲れて寝ちゃった時とかに使うものなんだけど、アチュもすっかり大きくなって使う機会も減っちゃったな。だからバッグの奥にあったのか、成程。
「よし、これで大丈夫。行こっか?」
「こちらも準備完了しました。案内しますね」
「荷物はオレが持つぞ、いよっと」
そうして、三人……三、人?
二人と一匹は気を失った二人を担いで、系五名で私達の家へと向かいます。
とことこ、とことこ。
『……なーあ、『秘薬』』
なんですか?急に静かになったと思ったら
『移動している間暇だろう?そこの…レスとか言ったか、あいつに色々聞いてみたらどうだ?あたし的にも気になる事が多い』
聞いてみる…ですか。えーと…
「レスさんは、何か好きな飲み物とかありますか?」
「飲み物?んー…甘いやつならだいたい好きかな」
「そうなんですね」
『……』
なんですか、人見知りの私的には頑張った方ですが
『いや…もっとさ……昨日言った黒鳥の話題だとか、どんな世界から来ただとかさ。どうみたってこの世界の住人じゃあないしね』
成程…
「レスさん達は…何処の世界からいらしたんですか?」
「何処の世界…えーと、私はそもそも記憶が無くて、気がついたら海の世界に。そこで…あ、名前聞いてなかった」
「『秘薬』です。あっちは妹のアチュリアと申します」
「おっけ、『秘薬』ちゃんが担いでる猫耳と出会って、それから旅して、争の世界に来た時にこのツインテールと出会った感じかな。まぁ詳しい事はこの子達が教えてくれるよ」
「ふむふむ……あ、それで、この黒い鳥さんは…?」
「あー…なんかいつの間にか入ってたんだよね、猫耳と会う前から…かな?もしかしたら一番長い付き合いかも」
レスと言う貝殻はさらに身体の中から触手を数本取り出し、弄ぶように黒鳥へと運ぶ
それを鳥さんはげしげしと啄み、足蹴にする。
「ぴーぴーひょろろろっ!!」
「わー待ってごめんごめん痛いってんでれすとろるりあ」
『海…争、聞いた事が無い……ただの狂った異邦者か…あるいは別の世界球があるとでも……しかし』
この方達は旅人さんなんですね?
『そう簡単に物事を考えられたらどれだけ楽かなぁ…』
そんなこんな雑談をしているうちに、私たちの家まで着きました。大きな大きな巨木の一部をくり抜いて作られたログハウスです。中は思った以上に広く、安全に火を興せるスペースもバッチリ完備され、見た目よりかはとても住み心地の良い場所です。私は背負い紐を解き、猫耳の方をベッドの上に寝かせます。
「よいしょ、と。そちらの方も、ここへ寝かせてあげてください」
「はいよー、わっせわっせ」
レスさんは桃髪の方をベッドに寝かせると、器用に背中から触手を引き抜き、お布団までかけてぽんぽんとお腹を叩きます。
『旧世界の枢か…?にしたって自我を持ちすぎている……ここまで人と変わりない思念を持つ物など……』
なにかむつかしい事を考えてるかみさまを放置して、起きるまでの間採取に行くというアチュリアを見送り、私は紅茶を入れて彼女達が起きるまで暫しの間待つことにしました。
…そう言えばあの旗なんなんだろ
ふわりと漂う緑の葉と、すっかり涼しくなった風を感じて、もう直ぐ秋だなって実感が湧きます。
そして、いつものポイントを幾つか周り、一度採取した物を確認しようと荷を下ろした所で、昨日の黒い鳥がまたやって来ます。
「あ、昨日の鳥さん!どうしたの?」
そう言ってアチュリアが近づこうとすると、鳥さんはどこかを指し示すかのように翼と嘴を突き出します。
「またどこかへ連れて行って……って感じじゃない」
アチュリアがそう呟きます。確かに今の鳥さんは何かに焦っているような、そんな雰囲気を感じました。すると、何処からか叫び声の様な物が聞こえます。その声は複数あり、声と同時にどしんどしんと大きな足音も聞こえます。それと同時に鳥さんもか細く鳴き、その叫び声の方へと飛んでいきます。
「っ、ねーさま!!」
「うん、急がなきゃ…!」
私は彼女の言葉の意図を読み取ると同時に、彼女と叫び声の方へと向かいました。
幸い、その声はこちらに向かってきているようで、追いつくのは容易く、その後の準備も容易に行う事が出来ました。
もう直ぐここに……来た
「待って待って待ってぇぇえええ!!!!!私達蜂蜜とかないっつってんでしょうがぁぁぁああ!!!!!!!!」
「はっ、はっ、なんなのよこの熊…っ!!私達が何したっていうの!?」
「いやー多分シェルネ巣穴に入ってあなたはだぁれ?まっく○くろすけ?したのが気に触ったんじゃないかと」
「あんたのせいかぁぁぁああい!!!!!??」
「だってとっても柔らかそうなお腹だったんだもぉぉおん!!!!!!」
一人は猫耳が生えていて、森の中だと言うのに大きな布の服一枚という物凄く軽装な方と、セーラー服に大きなツインテールと、同盟と書かれた大きな旗を手に持った方が青熊に逃げている最中でした。
「た、助けないとっ!」
私はそこへと飛び出し、既に手元にあった夏華草とあかきのこ、それと爆薬を調合した物を青熊の鼻先へと放り投げました。
「お願い…引いてっ!!」
炸裂したお手製の爆弾は弾ける轟音と共に辺りに刺激物を撒き散らし、それと同時に放たれた火炎が少しだけ森の一部を焦がします。
「わっ_」
「きゃっ__」
ほんのちょっと聞こえた悲鳴は鳴り止まないキーンと言う音に掻き消され、辺りに小さな太陽の様な光がせいで目が潰れ、そこには暫くの間静寂が訪れました。
あ、あれ?おかしいな、こんなに威力強かったかな…
『また調合ミス?爆薬入れ過ぎたんじゃないか?』
う、うるさいなぁ、たまたまだってば……
潰れた目も少しずつ治り、前が見えるようになります。どうやら青熊は爆破の衝撃でどこかへ飛んでいってしまった様です。
「お、おねーさま?さっきの……何?」
「いや…えーと、ほらっ!まずあの人達を助けないと!!」
妹の冷ややかな視線から無理やり目を逸らし、先程のフラッシュバンで気絶した御二方を家に運びます。
……あれ、声は確か
「あ、あのー…すいませんうちの者をどちらヘ連れていかれるのでしょうかー…?」
声が聞こえる。だけど周りには私とアチュリアと気を失った御二方と……
「ここ!ここだって!ここに居るでしょ!?可愛い可愛い小さな貝類がよう!!」
「あ、見て見ておねーさま!珍しい貝殻拾ったー!!」
「それ!!それだって妹ちゃぁん!貴女が今持ってるそれです!私です!レスさんでーす!!」
「……?」
すると、アチュが持ってきた貝殻がぴょんっと跳ね、地面にぽてっと落っこちます。
……え?
「えーと…初めまして?ですね?」
「……ねーさま、新種?捕まえる?」
「えっ」
「いやっ、えーと……え、えぇ?喋ってる…?貝殻が?どう言う……」
「あ、そっか。あいつらが異常なんだよね、ほんとなんであんなすぐ受け入れられたのか…まぁ、あの。喋る貝類です。取り敢えず何処かしら安全な場所に行きたいんだけど…またあんなの出てきてもどうしようも無いからさ?」
「も、勿論それは私達も同じ気持ちですが…あの……」
などと私達がまごまごとしていると、その貝殻から見覚えのある黒い鳥さんが出てきます。
「ぴすっ、ぴすっ」
「うぉ、自分の意思で出てくるの珍しいわんねあなた。どうしたの?」
その鳥はぱたぱたと貝の上に止まり、羽繕いをしています。
「…ねーさま、多分危なくないと思うぜ?」
「……そう、だね。じゃあ……えーと、」
「レスさんですよー」
「レスさんも一緒に、私達の家までいらして下さい。この方達の知り合い…なんですよね?」
「まぁ知り合いと言うか…移動手段兼宿舎兼荷物持ちって感じだけど」
「…苦労してますね」
「苦労してます…」
「ねーさまー、これどうやって運ぶのー?」
「あ、ちょっとまってて。えーと、背負い紐何処だっけ……」
「私も少し手伝うよ、同盟ちゃん…この桃色の方なら私でも運べると思うし」
そう言ってレスさんは身体の中から二本の触手を吐き出し、桃髪の子の体に巻き付けていきます。
どう言う筋肉で動いてるんだろう…
私も慣れた手つきで猫耳の子を身体に巻き付けていきます。本当はアチュが疲れて寝ちゃった時とかに使うものなんだけど、アチュもすっかり大きくなって使う機会も減っちゃったな。だからバッグの奥にあったのか、成程。
「よし、これで大丈夫。行こっか?」
「こちらも準備完了しました。案内しますね」
「荷物はオレが持つぞ、いよっと」
そうして、三人……三、人?
二人と一匹は気を失った二人を担いで、系五名で私達の家へと向かいます。
とことこ、とことこ。
『……なーあ、『秘薬』』
なんですか?急に静かになったと思ったら
『移動している間暇だろう?そこの…レスとか言ったか、あいつに色々聞いてみたらどうだ?あたし的にも気になる事が多い』
聞いてみる…ですか。えーと…
「レスさんは、何か好きな飲み物とかありますか?」
「飲み物?んー…甘いやつならだいたい好きかな」
「そうなんですね」
『……』
なんですか、人見知りの私的には頑張った方ですが
『いや…もっとさ……昨日言った黒鳥の話題だとか、どんな世界から来ただとかさ。どうみたってこの世界の住人じゃあないしね』
成程…
「レスさん達は…何処の世界からいらしたんですか?」
「何処の世界…えーと、私はそもそも記憶が無くて、気がついたら海の世界に。そこで…あ、名前聞いてなかった」
「『秘薬』です。あっちは妹のアチュリアと申します」
「おっけ、『秘薬』ちゃんが担いでる猫耳と出会って、それから旅して、争の世界に来た時にこのツインテールと出会った感じかな。まぁ詳しい事はこの子達が教えてくれるよ」
「ふむふむ……あ、それで、この黒い鳥さんは…?」
「あー…なんかいつの間にか入ってたんだよね、猫耳と会う前から…かな?もしかしたら一番長い付き合いかも」
レスと言う貝殻はさらに身体の中から触手を数本取り出し、弄ぶように黒鳥へと運ぶ
それを鳥さんはげしげしと啄み、足蹴にする。
「ぴーぴーひょろろろっ!!」
「わー待ってごめんごめん痛いってんでれすとろるりあ」
『海…争、聞いた事が無い……ただの狂った異邦者か…あるいは別の世界球があるとでも……しかし』
この方達は旅人さんなんですね?
『そう簡単に物事を考えられたらどれだけ楽かなぁ…』
そんなこんな雑談をしているうちに、私たちの家まで着きました。大きな大きな巨木の一部をくり抜いて作られたログハウスです。中は思った以上に広く、安全に火を興せるスペースもバッチリ完備され、見た目よりかはとても住み心地の良い場所です。私は背負い紐を解き、猫耳の方をベッドの上に寝かせます。
「よいしょ、と。そちらの方も、ここへ寝かせてあげてください」
「はいよー、わっせわっせ」
レスさんは桃髪の方をベッドに寝かせると、器用に背中から触手を引き抜き、お布団までかけてぽんぽんとお腹を叩きます。
『旧世界の枢か…?にしたって自我を持ちすぎている……ここまで人と変わりない思念を持つ物など……』
なにかむつかしい事を考えてるかみさまを放置して、起きるまでの間採取に行くというアチュリアを見送り、私は紅茶を入れて彼女達が起きるまで暫しの間待つことにしました。
…そう言えばあの旗なんなんだろ
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