転生先のご飯がディストピア飯だった件〜逆ハーレムはいらないから美味しいご飯ください

木野葛

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世界はとても残酷で(特にご飯が)

パパ(三番目)

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「中々来れなくて、悪いね」
「ママ、今だいじだいじだもんね」
「何か欲しいものはある?」
「ンー、みのり新しい絵本欲しいな」
「新しい絵本ね。了解」

 気分は接待。
 正直どんな会話したらいいのかわからないから、ひたすら絵本を読んでもらう。
 通常の幼児なら、今日ねー、お友達と遊んでねー!なんて話かけるかもしれないけど、パパにそこまでプライベートな話しないから…。
 施設の入居は格安だけど、食費や光熱費、ベビーシッター代などは親が出してるからね。
 スポンサーの機嫌は損ねないに会話はする。
 一番のお父さんには洋服。
 二番目のダディにはぬいぐるみ。
 三番目のパパには絵本を頼んでいる。
 今なら調理器具が欲しいと言いたいけど、五歳の幼女が要求できるものじゃ無いし…。
 
 夕食前にパパは帰って行った。はーと大きくため息を吐くとソファに転がる。
 普通の幼女ならパパ帰らないでェ!って泣くかもしれないけど、幼女パパ達への認識はたまに来る人達だから名残惜しくない。
 
「お疲れですね」
「うー。疲れたぁ」

 ぱたぱたと手足を動かして、やり場の無い気持ちを発散させた。気が済むまでぱたぱたすると、顔を上げて上目遣いに透子さんを見た。

「今日、お風呂アワアワにしていい?」
「もちろんです」
「やったぁ!ご飯食べる!」

 今日もペーストにシリアルバーなんですけどね…。

 モコモコの泡風呂に入ってテンションを上げ、今日はパパにいっぱい絵本読んでもらったから、絵本は良いわと断りおやすみなさいする。


 さて、目下の問題はどうやって料理をするかということだ。
 …スーパーにすら行ったこと無いからどうしよう…。
 とりあえず、最初はスーパーに行くことを目標にしよう!


 



 スーパーも行けず一週間経ちました。
 幼女は人間性が失われそうなご飯を食べつつ元気です。
 くっ、この世界、幼女の行動制限に厳しすぎる。
 ちょっと、マンション内にあるドラッグストアに行ってきますね、ってのにもついて行けない。
 はじめてのおつかい、なんてもっての外。
 温水プールや敷地内公園で、きっちり運動時間は確保されているんだけどね。
 すっかり同い年の豊華ちゃんと仲良しになりました。
 イヤ、今までも居たら一緒に遊ぶ程度の仲だったけど、お互い我儘過ぎて会って遊んで大体喧嘩別れしてたから…。
 幼女、大人の記憶がぶち込まれたからお子ちゃまには寛容になってるわ。ふふん、コレが成長と言うものね。
 この施設には私達二人と、二つ下の子が一人。三つ上の子が一人いる様だった。中学生の子もいる様だけど区画が違う上、生活リズムが違いすぎて会わない。
 今は二つ下のちっこい果穂を危なくない様に面倒見つつ、一緒に遊ぶのがマイブーム。
 その様子を透子さんを始め、豊華ちゃんと果穂のベビーシッターがギラギラした視線で見ている。
 …ヨシ!そのまま母性を育てろ!とか思ってない?


 
「実ちゃん!明日、何時に来る?」

 お姉さんぶる私に豊華ちゃんの懐き度がハンパない件。
 
「ねぇね、くる?」
 
 果穂にも懐かれまくっているので、この事実を伝えるのは物凄く心苦しいのです。

「ごめんね。明日はパパが来るから来れないんだ」
「「え」」
「ええと明後日!明後日なら遊べるから!」
「ヤダぁぁぁぁぁ!明日も遊ぶぅぅぅぅぅぅ!!」

 ああ、やっぱ泣いちゃった!だよね!
 豊華ちゃんだけじゃなく、釣られて果穂も泣き出した!
 ヘルプ!ヘルプミー!シッターさん達ー!


 パパにお菓子買ってきて貰うから、明後日一緒に食べよーね!と幼女達を慰めて帰宅する。
 手を洗ってうがいをし、ソファに転がる私をくすくすと笑って透子さんが頭を撫でた。

「いいお姉さんでしたよ」
「でも、泣かせちゃった」
「人には人の予定がある、と言うことを知ることは大事ですから」
「…透子さんも予定がある時はちゃんと言ってね。みのり、一日ぐらいは我慢するから」
「はい」

 垂れ目がちで温和そうな顔立ちだが、口元の黒子が色っぽい。
 優秀で優しく美人な透子さん口説かないなんて、マジ世の中の男見る目がない。
 生活がガラリと変わるに従って、男同士の結婚も容易になっている。
 そんな中で透子さんは無茶苦茶優良物件だろうに。
 まあ、幼女、透子さんに辞められるのはとても困るけど。

 パパにお友達と食べるから、お菓子買ってきてとメッセージを送る。
 どんなお菓子が来るんだろ。まあ、どんなのでも砂糖の塊だけど。



「来たよ。マイドーター。リクエストの物はこの通り」
「わぁ!パパ、ありがとう!」

 絵本二冊とお菓子らしき箱。うむ、良くやった。と上から目線で思っていたら、信じられないものを見たような顔をしてこちら見ていた。
 目が合うとニコッと笑いかけられて、スッと透子さんの方に向かう。

「ありがとうだなんて初めて聞いたぞ。大丈夫なのか?…倒れた時に頭を打ったとか…」
「いえ、先生に見てもらったところどこも異常無しと…最近とても良い子なんです」
「良い子…?」
「はい。毎日きちんと歯磨きをして、決まった時間に起き、お勉強もしっかりなさって、豊華お嬢様とも仲良く、果穂お嬢様も入れて仲良く遊んでらっしゃいます」
 
 透子さんの報告に訳がわからん、見ないな顔でこちらを見ているが、無視して紙袋を漁って絵本を取り出す。
 絵が綺麗な外国の絵本を翻訳したやつと、11匹のニャンコの持ってないやつだ。

「実、パパが読んであげる。それで今日は泊まって行って良いかい?」
「ママ大変なんだから、帰ってあげた方が良いよぉ」

 次会った時に、自分の男盗みやがってみたいな視線に晒されちゃうじゃん。
 年に一回お正月に会うけど、めちゃくちゃ他人行儀だったし、素っ気なかった理由が分かんなくて怖かったけど、ようやく理解した。
 自分の巣の中に入ってきて、父親と息子男どもにちやほやされる同性の生き物を歓迎出来るわけ無いよね。
 悪い子だからママに嫌われちゃったのかな…?とか健気に思ってたけど、私の問題じゃない。ママの問題だわ。
 顔も上げずに言えば沈黙が返ってくる。
 外国の絵本も中々趣深いな…。
 一冊目の絵本を読み終わると、ニャンコの方を取り出す。
 ニャンコ達はコロッケ屋をはじめて云々…………。

 …………コレだー!

 コレでコロッケってなぁに?作戦で行こう!
 上手く行けばコロッケが食べられる。それが無理でも、スーパーに行って食べ物とはどんな物って勉強する流れを作る!
 パパ、透子さんをイジメるクソ野郎だけど、お土産を選ぶセンスだけは花丸あげちゃう。
 

 はっ!この手の食べ物の絵本まだあるんじゃ無いか?
 至急本棚を調べねば!

「みのり、ご本お片付けしてくる!」
「片付け…だと…」

 ちなみにママは片付けられない女である。
 

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