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ダンジョン学校編
一日目:夕食
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「ずいぶん、頑張ったみたいっすねー」
「今までしたことのない、動きをした」
ストレートな作菜の感想に、ケラケラと小川が笑う。
「小川ちゃんは何してた?」
「休憩挟みながら、小野川先生とやりあってた。あの人ヤバイ。でもじーちゃんの方が強い」
「小川ちゃん、少年漫画っぽいこと言ってる」
ちなみに小野川の感想も、小川やるな鍛えがいがある、というこちらも少年漫画っぽい感想だったらしい。
そんなことを言い合いながら、三人は食堂に入っていく。昼食と同じビュッフェスタイルだが、内容は変わっていた。それぞれ好みのおかずをとると、今度は女性三人で座る。
「もぅ、疲れたぁ」
肉や野菜も少し乗っているが、それよりもデザートの比重の多いトレーをテーブルに置いた途端佐藤は疲れたと愚痴をこぼす。確かに、慣れない動きで筋肉が痛いが、ダンジョンに行くならこんなものだろうと作菜は思う。
「明日はもっと疲れるけどどーすんのさ」
ニヤニヤと笑いながら小川が言う。こちらは日頃から運動しているらしく、大して疲れていないように見える。トレーも相変わらず肉肉米ついでに魚と野菜とデザートという結構な量の食事が乗っているのが印象的だ。
これが若さか、と思いながら味噌汁を作菜は啜った。ご飯に味噌汁に、豚の生姜焼きとサラダ、ひじきの煮物にお新香といたって普通の食事なのだが、若い2人の食事を見ていると昔の自分の食事を思い出し反省する。無茶をしていいのは彼女らぐらいの時期だけだろ。
「さっさん、なんか菩薩みたいな顔してるけど、どしたん?」
「いや、うん、なんでもないよ」
君たちの食生活の行き先を心配していた、と言えず水を濁す。
「もう!野上さんの顔なんてどうでもいいよぅ」
佐藤が言いながら、ウサギのような少食さでサラダを食べる。よほど授業がキツかったと思っているのだろう、昼間のように誰かにちょっかいをかけにいく様子はなく不機嫌そうだ。肘をつきながらサラダを食べている様子は、妙に幼く感じた。
「んで?明日はもっと疲れるけどどーすんよ?」
「えー、ダンジョン行ってレベルアップすれば疲れもなくなるじゃん」
「レベルアップまではどうすんの?」
「一階は楽勝なんでしょぉ、レベルアップするまで一階粘る。ライセンス取っちゃえば、後でどっかのパーティーに入れてもらってレベル上げしてもらう」
なんという堂々として姫プレイ宣言。
寄生プレイを恥とも思わず堂々と言い切ってしまうものだから、それはどうかと思うよ、と言う前に思わず呆れてしまった。隣で小川も唖然とした表情で佐藤を見ている。
「えっと…佐藤さん、それ本気で言ってるの?」
ゲームであれば好き嫌いは置いておきシステム上、姫プレイは許されるだろう。しかし、現実でダンジョンに入るとなれば、それは許されるのかは疑問だ。姫プレイをして許されるだけの人脈やお金があると言うのであればそれもありだろうけれど、そんな甘い考えでやっていけるのだろうか。トラブルの元になりそう。
恐らく高校を出てさほど時間が経っていないだろう、佐藤の可愛らしい顔を見ながら考える。
(この子、リスク考えたことあんのかな?)
負んぶに抱っこでレベルアップすると堂々宣言する様に、わずかに嫌悪と心配を覚えた。
「本気って、本気ですよぉ。本気じゃなきゃこんなダンジョンなんか来ません」
「こんなダンジョンに、なんで来たのさ」
表情豊かだった小川の顔が、すんと真顔になっている。コロコロと表情を変えるギャルが、いきなり真顔になるといささか威圧感がある。
気配が変わったことに一瞬身を固くした作菜だが、佐藤は気にならないのかパッと顔を輝かせた。
「怖いダンジョンに行ったとしても、会いたい人がいるんですぅ。それで、その人に守ってもらいながらダンジョン攻略するの!」
ガチの姫プレイ宣言だった。
思わず呆れを通り越してぽかんとして佐藤を二人は見つめた。どうしたの?と言わんばかりに、宇宙を見た猫のような顔になった二人を見返した佐藤に答える。
「そ、そっかー。会えるといいねー」
若干声が震えているが、佐藤は気にしていないのか屈託なくニコニコと「はい」と嬉しそうに笑っていた。
物言いたげな小川と視線が合うが、そっと首を横に振る。触らぬ神に祟りなし。昔の人の言っていることは偉大だ。こう言う人種は倫理観とか、感覚とかズレている。そのズレを正そうなんてことはしてはいけない。
(どこのどなたか存じませんが、会いたい人…相当アグレッシブだけど見た目は可愛いから頑張れ)
(こいつヤベェ)
それからは何も言わず、食事に専念した。小川も一気に食欲なくした、と言う顔をしていたが、全てを食べきった。作菜はデザートも食事が終わったら食べようと思ったが、そんな気持ちもなくなったため解散となった。
「今までしたことのない、動きをした」
ストレートな作菜の感想に、ケラケラと小川が笑う。
「小川ちゃんは何してた?」
「休憩挟みながら、小野川先生とやりあってた。あの人ヤバイ。でもじーちゃんの方が強い」
「小川ちゃん、少年漫画っぽいこと言ってる」
ちなみに小野川の感想も、小川やるな鍛えがいがある、というこちらも少年漫画っぽい感想だったらしい。
そんなことを言い合いながら、三人は食堂に入っていく。昼食と同じビュッフェスタイルだが、内容は変わっていた。それぞれ好みのおかずをとると、今度は女性三人で座る。
「もぅ、疲れたぁ」
肉や野菜も少し乗っているが、それよりもデザートの比重の多いトレーをテーブルに置いた途端佐藤は疲れたと愚痴をこぼす。確かに、慣れない動きで筋肉が痛いが、ダンジョンに行くならこんなものだろうと作菜は思う。
「明日はもっと疲れるけどどーすんのさ」
ニヤニヤと笑いながら小川が言う。こちらは日頃から運動しているらしく、大して疲れていないように見える。トレーも相変わらず肉肉米ついでに魚と野菜とデザートという結構な量の食事が乗っているのが印象的だ。
これが若さか、と思いながら味噌汁を作菜は啜った。ご飯に味噌汁に、豚の生姜焼きとサラダ、ひじきの煮物にお新香といたって普通の食事なのだが、若い2人の食事を見ていると昔の自分の食事を思い出し反省する。無茶をしていいのは彼女らぐらいの時期だけだろ。
「さっさん、なんか菩薩みたいな顔してるけど、どしたん?」
「いや、うん、なんでもないよ」
君たちの食生活の行き先を心配していた、と言えず水を濁す。
「もう!野上さんの顔なんてどうでもいいよぅ」
佐藤が言いながら、ウサギのような少食さでサラダを食べる。よほど授業がキツかったと思っているのだろう、昼間のように誰かにちょっかいをかけにいく様子はなく不機嫌そうだ。肘をつきながらサラダを食べている様子は、妙に幼く感じた。
「んで?明日はもっと疲れるけどどーすんよ?」
「えー、ダンジョン行ってレベルアップすれば疲れもなくなるじゃん」
「レベルアップまではどうすんの?」
「一階は楽勝なんでしょぉ、レベルアップするまで一階粘る。ライセンス取っちゃえば、後でどっかのパーティーに入れてもらってレベル上げしてもらう」
なんという堂々として姫プレイ宣言。
寄生プレイを恥とも思わず堂々と言い切ってしまうものだから、それはどうかと思うよ、と言う前に思わず呆れてしまった。隣で小川も唖然とした表情で佐藤を見ている。
「えっと…佐藤さん、それ本気で言ってるの?」
ゲームであれば好き嫌いは置いておきシステム上、姫プレイは許されるだろう。しかし、現実でダンジョンに入るとなれば、それは許されるのかは疑問だ。姫プレイをして許されるだけの人脈やお金があると言うのであればそれもありだろうけれど、そんな甘い考えでやっていけるのだろうか。トラブルの元になりそう。
恐らく高校を出てさほど時間が経っていないだろう、佐藤の可愛らしい顔を見ながら考える。
(この子、リスク考えたことあんのかな?)
負んぶに抱っこでレベルアップすると堂々宣言する様に、わずかに嫌悪と心配を覚えた。
「本気って、本気ですよぉ。本気じゃなきゃこんなダンジョンなんか来ません」
「こんなダンジョンに、なんで来たのさ」
表情豊かだった小川の顔が、すんと真顔になっている。コロコロと表情を変えるギャルが、いきなり真顔になるといささか威圧感がある。
気配が変わったことに一瞬身を固くした作菜だが、佐藤は気にならないのかパッと顔を輝かせた。
「怖いダンジョンに行ったとしても、会いたい人がいるんですぅ。それで、その人に守ってもらいながらダンジョン攻略するの!」
ガチの姫プレイ宣言だった。
思わず呆れを通り越してぽかんとして佐藤を二人は見つめた。どうしたの?と言わんばかりに、宇宙を見た猫のような顔になった二人を見返した佐藤に答える。
「そ、そっかー。会えるといいねー」
若干声が震えているが、佐藤は気にしていないのか屈託なくニコニコと「はい」と嬉しそうに笑っていた。
物言いたげな小川と視線が合うが、そっと首を横に振る。触らぬ神に祟りなし。昔の人の言っていることは偉大だ。こう言う人種は倫理観とか、感覚とかズレている。そのズレを正そうなんてことはしてはいけない。
(どこのどなたか存じませんが、会いたい人…相当アグレッシブだけど見た目は可愛いから頑張れ)
(こいつヤベェ)
それからは何も言わず、食事に専念した。小川も一気に食欲なくした、と言う顔をしていたが、全てを食べきった。作菜はデザートも食事が終わったら食べようと思ったが、そんな気持ちもなくなったため解散となった。
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