ワールドデバイス 地球防衛隊 実験機動特殊部隊 Test Mobility Special Forces

MA九蛇

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Act-5 大空のナミダ

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 「速報です。現在、ハルトーズコーポレーション本店前に、多くの武装集団が現れ、謎の宣言をした後ハルトーズコーポレーション内潜入したという情報が入っています。続報は、更に情報が入り次第お伝えします。繰り返します、現在......」
 既にその情報はニュースや速報として情報機関で取り上げられていた。テロとの見方が有力だった一方で、何故警察や自衛隊等の政府機関が動かないのか、という疑問も出ていた。
 その疑問の答えは簡単な物ではあったが、その答えを知る人間はほとんどいなかった。
 尤も、その答えとは実に分かりやすい物だった。単に、事前にこのような事が起こるので何か理由を付けて政府は国民を納得させておけ、と地球防衛隊の上層部の権力者が日本政府に脅しを掛けていただけだ。まあ一国の政府に圧力を掛けられる上層部の権力者も相当だが。また、政府は邪魔をするなとも苔脅ししていたらしい。南無。
 そして、地球防衛隊の派遣された大隊は着々とハルトーズコーポレーション本店、ことカルト教団の改造人間養成所東方アジア本部へと進撃を開始していた....




 「A級からE級までの全ての戦闘員に告ぐ!これはこれまでの訓練ではない!実戦だ!速やかに防衛ラインを張り、戦闘態勢を執れ!貴様らは改造人間という怪物共と戦ってきた!そして生き残ってきたのだ!安心しろ!我々は必ず勝利する!この施設を命懸けで守るのだ!繰り返す!これはこれまでの訓練ではない!実戦だ!速やかに防衛ラインを張り、戦闘態勢を執れ!貴様らは改造人間という怪物共と戦ってきた!そして生き残ってきたのだ!安心しろ!我々は必ず勝利する!この施設を命懸けで守るのだ!繰り返す!これは....」
 延々と誉め言葉を捲し立てる研究員。彼らは今、いつもは見下して滅多に話し掛けない戦闘員を必死に放送等の様々な手段でで必死に鼓舞しているのだ。
 それもそのはず。今、ここカルト教団の改造人間養成所東方アジア本部は敵、それも地球防衛隊に目を付けられ、襲われているのだから。
 そしてその放送を受け、戦闘員達が着々と防衛ラインを張り始めていた。彼らは研究員からの鼓舞だけではなく、仲間同士の他愛もない会話によって自らを律しているのだった。
 そんな彼らの戦意を挫き、砕くように地球防衛隊の精鋭達は次々と戦闘員達を殺していく。
 「最初に降伏すれば助けるって言ったはずなんだけどなー。まあいっか。死ぬのは君らの自由だし?」
 そう言って大隊長は魔法を駆使し戦闘員を蹂躙していく。建物内が狭く、地球防衛隊の隊員達が好みの近接武器で満足に攻撃出来ていない中で、彼はかなりの存在感を放っていた。
 「弱い、弱いよ。強い奴はいないのかい?グールさえいないんだねぇ、この養成所は。ま、いたところで捻り潰してやるだけだけどね...」
 彼に対峙する戦闘員達は手も足も出ない。
 「バ、バケモンだぁ、こいつはバケモンだぁっっ!!!」
 そう叫んだ戦闘員は、直後炎系の魔法によって全身を焦がされ、燻したような臭いを辺りに充満させながら黒い煙を上げて倒れた。
 大隊長が殺しきれなかったおこぼれは、傍らにいた女(これより副官と呼ぶ)が辺りが狭いながらもその卓越した戦闘能力でビームソード(普段はT字型の持ち手のみの外見で、スイッチを押すと棒状に長いビーム刃が出現する。出力の切り替えも可能で、出力を上げると、Tの横棒全体から先につれて細くなるビーム刃が出る)を縦横無尽に振り回し切り殺して言った。その美しい外観とクールな印象にマッチするように淡々と戦闘員を切っており、その姿はさながら神器を手に舞い踊る巫女のようでもあり、何処か妖艶とした雰囲気を醸し出している。
 「魔法男も、後ろの剣女も、化け物どころじゃねぇ...ありゃ、俺達からしたら神の領域だ...」
 「ああ、そうだ。奴ら・・・神だ...」
 そう口々に呟いた戦闘員達4、5人が降伏を宣言した。
 ところが、
 「もう遅いね。君達には消えて貰うのさ、歴史の表舞台からも、裏舞台からも、ね。」
 そう言って大隊長は右手を上げた。すると、その周囲から水刃が戦闘員達に向かい噴出された。
 彼らはその高圧の水刃によって、瞬く間に肉片と化した。
 「隊長!これはあくまでもこの施設の破壊及び戦意の無い改造人間の保護です。無闇に人間を殺戮しろとは言われていません!」
 そう指摘した副官に、
 「確かに。だがねフリア・バードネン君。よぉく覚えておくと良い。」
 そう大隊長は言い、一旦言葉を切った。そんな彼を副官、フリア・バードネンは訝しげに見る。
 「隊長のやることは部隊の手本だ、とね。それに、日頃のストレスだってこの場で解消しても良いだろう?君らから恨みや妬みの籠った視線で見られてることぐらい、僕には嫌でも分かるんだから。それともう1つ。僕の気紛れで君らは死ぬ可能性だってある、ってね。」
 口調は底抜けに明るいが、その目は全く笑っていない。この時の大隊長が一番危険だと、フリアは良く知っていた。実際に大隊長が部下を殺した事だってあるのだ。今は従っておく他無いだろう。
 「は、申し訳御座いません。ご無礼、御許し下さい。」
 そのフリアの声を聞いた大隊長は頷くと、また先へと進み始めた。
 許されたか。そうフリアがほっとして大隊長の後から歩き始めたその時である。大隊長の歩く道の角から、少年が姿を現した。
 「テメーら、さっきから一体何だ?敵か、味方か?」
 「少なくとも今の気分では僕だけでも君の敵、だね。」
 そう大隊長が少年に返すと、
 「そうか。今此処で戦ってやっても良いが、今の俺はいつもより弱いぞ?もう少し待てば強い俺と戦えるが、どうする?」
 そう少年は問い掛けた。大隊長は、
 「君が改造人間であればそうしてもらおう。」
 と返した。それを聞いた少年は何処かへと向かって行ったので、逃げられたな、とフリアは考えた。その時である。
 「待たせたな。」
 そう言って少年は再びそこに現れたのだった。
 頭以外の全身にバトルスーツを着用し、両腕には増加装甲を装備、右手にレールガン、左手にシールドを構えたその姿は正に歩く要塞。
 「俺の名はヨンム・グレイスこと試作装甲人間<プロトアームド>。あだ名は歩く要塞<ウォーキングフォートレス>。」
 少年はそう名乗ると、レールガンの砲口を大隊長に向けた。対して大隊長が魔法を使用しようとしたその時である。少年は突如として早口でルーンの詠唱を行うと、
 「ディテクトマジックシェル!」
 そう叫んだ。
 「!?マナが・・・消えただと!?」
 ディテクトマジックシェル。それは、半径5キロ以内のマナを全て吸収、又は消滅させる魔法だった。
 魔法が使用できず呆然とする大隊長に、少年はこれだけ言う。
 「弱いな、やはり...」
 直後、レールガンの電磁パルスの直撃を喰らい大隊長は全身を焦がして絶命した。
 止める間も無かった。と言うより、最初からフリア達隊員が大隊長を制止するつもりなど微塵も無かった。
 正直、大隊長は彼らには邪魔なだけの存在だったのだ。
 少年、いや、ヨンム・グレイスは次にフリア達を見た。
 「お前らも、敵か...」
 そう冷たく言い放つヨンムに、
 「いや、我々は当施設の破壊及び戦意の無い改造人間の保護を目的として此処に来たのだ。ヨンム・グレイス、だったか。君は、これから人間だ。道具でも、兵器でも無いんだ。さあ。」
 そう言ってフリアは右腕をヨンムへと差し伸べた。
 「俺が・・・人間・・・?」
 「そう、君は人間。」
 「嘘を言え。俺は兵器だ...奴らの犬で在り続けるんだ...!!人間なんて扱いをしても貰えないんだ!」
 ヨンムはこの姿を気に入っていた。自分が強く在れるからだ。だがそれは同時に、彼を道具として縛り付ける枷でもあった。その葛藤は、明るかった彼の思考と言動とは裏腹に、黒く染まった彼の裏の人格を形成していった。そしてそれを自分自身で恐れるヨンムは、絶望の淵へとどんどん追いやられていた。
 だが、彼の目の前には今やそれを解放してくれる手が差し伸べられていた。
 それでも、彼はその手に触れることが出来なかった。これまでで暗闇に慣れすぎていた事は元より、その手を自分は汚してしまうのではないかという恐れも、彼を未だ縛り付けていた。
 「来るんだ。君はもう1人じゃない。自由に成れるんだ。蔑むように見られることはもうない!」
 そのフリアの言葉が、彼の背中を押した。
 シールドを背に戻すと、しっかりとその手を握った。温かいその手を。
 自然にヨンムの頬には涙が零れ落ちていった。
 泣き崩れる彼を、フリアは背を撫でて慰めた。
 「あの雄大で力強い大空だって時には涙を流す。強くたって時には泣いても良いんだ。重要なのは、立ち直れるかなんだから。」
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