殺し屋達は蘇る アリスズメモリー TOKISUKE→Alice

MA九蛇

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第一演目 自由な殺し屋<フリーダムキラー>アリス

━第二幕━ 黒曜石のカケラ〔下〕 Freedom Killer 〔Go〕

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 数十分後。アリスは再びエコーと共に現世にいた。
 その手には黒曜石の欠片が握られている。
 「エコー、場所はわかったかい?」
 何度も言うが丸投げである。
 「うん、駅の近くだね。標的はね・・・、指名手配中の銀行強盗Gさん。長いから以下Gさんで文体統一。にしても銀行強盗とは厄介だねぇ。みんな、犯罪は罰せられるから止めよう。人としていけない行為でもあるから止めよう。」
 「ふぅ...。よし、黒曜石の欠片・・・これでッ!」



 数分後。
 「Gさん、僕はアリス。チェンジャーの力を奪うべくして生まれた殺し屋。」
 Gさんは30代後半の男性だった。
 「う、来るな、近寄るんじゃねぇ!殺すぞ!」
 Gさんが叫ぶ。
 「その言葉は前にも聞いたことがあるな。それとその言葉に対しての返答だが・・・。あいにく僕は止まるつもりはない。」
 そう言ってアリスは黒曜石の欠片を削って粉にしてかけた剣を片手に斬りかかった...。
 そしてアリスはあっさりGさんを元に戻すとその後エコーが周囲の人達の記憶をコンピューターで消去しているのを眺めながら(くどいようだが丸投げである。)、昔の(1年前)事を思い出していた...。




 それは去年の夏。僕がまだアリスではなく、白鷹トキスケだった頃。自分を俺と呼んでいた頃。




 「おい、トキスケ!おせーぞ!」
 そう言って俺に向かって手を振ったのは、幼馴染みの一人、飛山(とびやま)リム。
 ここは俺の生まれ故郷の街にある大きな駅だ。
 「遅れちまった!悪りー悪りー!」
 そう言ったのは俺、白鷹(しらたか)トキスケ。
 「ちょっと遅すぎ。次回からもっと早く来てよね。」
 そう俺に愚痴ったのは切原セイナ。
 「わかったって!ささ、行こーぜ!」
 「まったく・・・。元気だけは底無しよね・・・。」
 ということで俺達は海外発で日本では初めて出来たファストフード店のある駅に向かった。



 俺達3人は物心つく前から幼馴染みの親友同士だった。しかも、この年で全員見た目も良くリムとセイナは成績が良いにも拘らず誰も恋人のいるヤツがいなかったことも、俺達の友情を長く深くしていた。
 そう。俺が、僕がこの日死にさえしなければ、大人になったとしてもこの仲だったのだろう。
 死にさえしなければ。な。



 「美味いな、この照り焼きバーガーは!これまで俺が食った中でも一番美味いぞ!」
 「今リムが食べてるのって、日本限定だろ?」
 「そう、それだ!美味いぞー。」
 「私もそれにすれば良かったかなー。でも、これも結構美味しいけどね。」
 と、そう会話をしていると、突然顔を曇らせてリムが言った。
 「そうだ、二人にも言っておかないといけない事があったな。」
 「なんだ、彼女でもできたか?」
 俺はにやっと笑ってそう言った。
 「馬鹿!そんな訳無いだろ。こんな醜男に興味のあるヤツいるか?」
 なかなかの自虐的発言だな。しかしリムはゴツいがイケメンだし、正直この中で一番モテている。当の本人はそんな資格は俺にはないと告白を全て蹴っているが。
 「じゃあ何よ?悪いことあったの?」
 するとリムは再び顔を曇らせた。
 「それがだな、実は・・・」
 そこまでリムが言うと、外から突然パンパンと騒音がした。銃声だろうか。
 ファストフード店の中が一瞬でざわつき始めた。
 「これはヤバいかもな・・・。二人共!店を出るぞ!」
 客が銃声と気付いて店のドアに殺到する前に、俺達3人は店を出た。すると、駅の方向からこちらへと何人か人が逃げて来た。
 駅の方には、3人のピストルを持った男達がいた。今頃になって事態に気付いた人々が駅のホームに繋がる廊下の両脇にある店から次々と湧くように出てくる。そして3人の男達をみると、悲鳴を上げたりしながら駅の出口に一目散に向かって行く。
 が、その時俺は気付いた。1人逃げ遅れたお婆さんが下げているバッグから、3人の男達が金品を盗もうとお婆さんに近付いている事に。
 「二人は逃げろ!」
 「逃げろって言っても!」
 「そうだ!お前を置いては...」
 「行けよ!俺にもたまには社会のためになるような事をさせろ!」
 そう俺は言い捨てると、2人を置いて制止の声も聞かずに3人の悪党共へと走っていった。
 「!来るな!撃つぞ!」
 そう3人の内の1人が言った。
 俺はそれに答える代わりにそいつに接近すると、呆気にとられたそいつを殴り飛ばして気絶させた。
 「早く逃げて!」
 俺はお婆さんにそれだけ言うと、後ろは振り向かず残りの2人に向き直った。
 狼狽えた様子のそいつらに、
 「逃げるか来るか、選べっ!」
 と叫んだ。格闘技を習っているのでそういう自信だけはあったのだ。
 「ッ!ガキがっ!舐めやがって!」
 案の定1人がナイフを抜いて向かってきた。もう1人はピストルを取り出した。
 俺はナイフを持った男の攻撃を簡単に避ける。そして腹に渾身の一撃を喰らわせた。
 「がっ...」
 そいつは気絶した。そう、この場面だ。ここで油断しなければ・・・
 俺は3人目の攻撃への反応が遅れてしまった。
 「がっ!」
 銃声が響いた次の瞬間には、俺は右足から血を流して倒れていた。
 そいつは倒れた俺の左足と両腕にも銃を撃つ。
 駄目だ、力が入らない。そいつは倒れた俺の胴を踏みつけると、俺を抑え込んだまま、俺の頭の左側に銃を撃った。
 僕の意識はどんどん消えていった...




 それから2人がどうなったか僕は知らない。
 僕はまたあの街に果たして行くのだろうか。
 きっと行くのだろう。
 それだけは避けられない宿命なんだろう。
 そんな確信が僕の奥底にある。
 そして、また2人に会うという確信もまた然りだ。
 もっとも、その時2人が果たして味方になってくれるかはわからないが。
 と、色々考えているとエコーの声が耳に飛び込んだ。
 「二人のチェンジャー、こっちに向かってくるよ!」
 「なっ、本当かい!?」
 これは厄介だ。
 「ま、戦うしか無いか・・・。二人同時ならば・・・。よし、エコー、自由殺戮状態<フリーダムキラー>になるから、サポート頼む!」
 「了解!」
 丁度2人のチェンジャーがこちらに向かってきた。
 「よし、いっちょやってやりますかぁ!自由殺戮状態<フリーダムキラー>、行くぞっ!」
 そうアリスが言うと、アリスの茶色い髪が赤く染まる。目も赤くなり、動くたび赤い残像が尾を引く。
 「よっしゃあ!この俺もたまには本気出してやらねぇとな!」 
 性格も崩壊する。
 そして、攻撃力、ガード共に通常の2倍になる。
 更に、この能力最大の目玉は自分、または自分の持つ物体にかかる重力を自在にコントロールできる事、斬撃がビームとなって飛ぶ事、バリアを張れる事の3つだ。それでいて一切のペナルティ無し。
 つまりは、



 チート。



 以上。結局そういう事。とか言う以前にチートという単語以外でこの能力は現せない。
 2人のチェンジャーがピストルを持ってアリスに迫る。
 と、その瞬間アリスは自分にかかる重力を0にした。無重力。
 そして、一気に上空へと跳躍し、また自分に重力をかけ、0に戻す。それを繰り返して移動しながら上空から斬撃のビームを2人のチェンジャーに叩き込む。
 それとほぼ同時に1人のチェンジャーがアリスに銃を撃つがアリスはそれをバリアで防いだ。
 1人のチェンジャーがビーム斬撃で倒される。
 「さて、そろそろ終わらせようかぁ!」
 アリスは自分へ一気に重力をかけた。
 地面に足が着く直前に重力を軽くし、最後の1人を大上段から斬り倒す。
 アリスは自由殺戮状態<フリーダムキラー>を解いた。見た目が元に戻る。
 「やれやれ、ようやく終わったか。」
 そう言ってアリスは腰に巻いたコートを着ると、日記帳に記録<セーブ>する。
 「さて、戻ろう、エコー。」
 「オッケー!」
 2人は殺し屋世界<キラーワールド>に戻った。 
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