聖女が望むものとは…「さぁ、アリス…君の望みを言ってーーーえ?」

タッター

文字の大きさ
31 / 31

13 終

しおりを挟む


 ーー翌日


 昼過ぎ、王城から戻ったイアンはこの後に待っているアリスとの時間見合いに内心複雑な思いだった。


 あの日からイアンの頭はアリスのことでいっぱいになり、心臓が不整脈を起こすのだ。伴侶としてあり得ないと思っていた相手であり、年齢も一回り離れている相手であるのにまさかこの自分が?そう思うもののアリスのあの目が忘れられない。それによくよく考えれば自分を不快に思わず嬉々として触れ、又会話が弾み話していてこれ程楽しいと思える女性などアリス以外に出会った事がなかったことに気がついた。だがそれでも…


 イアンは整理がつかない初めてのこの気持ちに悩みに悩んでいた。


「……ふ。何を深く考えておるのだろうな。別に深く考える必要などないであろう。平常心である。いつものように普通に接すればいいだけである」


 そう気持ちを持ち直し玄関を開けた所…


「イアン様ぁ~!お帰りなさぁ~い!」


「ぐふっ!?な、なっ!?」


 予想だにしないまさかの人物がおり、自分に飛びついてきた。宰相ともあろう者がこんなにも狼狽えてしまうなど情けないと思いつつも動揺を隠せずイアンは目の前の存在を確認する。


「な、なぜここにいるのだねアリス嬢」


「イアン様の帰りを待ってたんですぅ~」


「だが時間まで…」


 アリスとの時間までまだ2時間以上もある。その間に落ち着こうとの計画が台無しだ。そこへ上機嫌な執事長がやってきた。


「旦那様お帰りなさいませ」


「あ、ああ。今帰った。何故ここにアリス嬢がおるのだね?」


「アリス様は昨日私達と話をするためお屋敷に来てくださったのですよ」


「は?」


「そうなんですよ。朝方までたくさんお話を致しましたわ」


「よかったなイアン様!」


「……は?」


 イアンは理解が追いつかない。何故かあまりアリスに対して良い感情を抱いてなかったはずの執事長やメイド長、護衛長のアリスへの態度が軟化している。いや、この3人だけではない。屋敷にいる者達が皆、微笑ましげに自分達を見てアリスを歓迎している雰囲気があるのだ。


「……お前達はあまりアリス嬢のことを…」


「ええ。あまり良い感情を抱いておりませんでしたが昨日アリス様と話し、これ程まで素晴らしい方はいらっしゃらないと思い至りました。全く…こんな素晴らしい方を排除しようとしていたなど執事長として恥ずべきことです」


「ええ、ええ本当に…イアン様の素晴らしさを理解し、こんなにもイアン様のことを想い恋慕っていた方になんて酷いことをしてしまったのでしょう」


「よかったなイアン様!アリス様と幸せになれよ!」


「…………」


 全く持って訳がわからない状況にイアンは唯一この中でまともであろう執事見習いの方を見るも苦笑して頭を振るだけ。


「さぁ旦那様。お食事の用意はできております。奥様と共に召し上がってはいかがでしょうか?」


「…ぬ、ぬぅ?奥様?」


「ええ。さぁどうぞ」


「わぁ!イアン様ぁ~早く食べに行きましょう~」


「…………」


 何故か執事長がアリスのことを奥様と呼び出した。そして、そのことに誰も突っ込まない。イアンは愕然としつつニコニコと笑顔で自分の腕を引くアリスを見つめる。


 …着々と外堀を埋められている。


 この状況に抗おうと思えばいくらでも抗う手段はある。だが、何故か抗おうなどという気は起こらず、嫌な気分にもならない。逆に感心してしまうほどである。


(仕方あるまいな…)


 イアンはアリスを受け入れかけていた。それはイアンを見るアリスの目がどこまでも真っ直ぐだったからだ。


「なんですかぁ?イアン様ぁ?」


「………いや、なんでもない」


 イアンが完全に落とされるまで後…ーー

しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

短編)どうぞ、勝手に滅んでください。

黑野羊
恋愛
二度も捨てられた聖女です。真実の愛を見つけたので、国は救いません。 あらすじ) 大陸中央にあるルオーゴ王国で、国を守る結界を維持してきた聖女ロザリア。 政略のため王太子と婚約していた彼女は、突如『真の聖女』が現れたとして婚約を破棄され、聖女の座を追われてしまう。さらに、代わりに婚姻しろと命じられた聖騎士からも拒絶され、実家にも見捨てられたロザリアは、『最果ての修道院』へと追放された。 けれど彼女はそこで、地位や栄光、贅沢などとはほど遠い、無条件に寄り添ってくれる『真実の愛』と穏やかな日々を手にいれる。 やがて聖女を失った王国は、崩壊へ向かっていき――。 ーーー ※カクヨム、なろうにも掲載しています

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのはあなたですよね?

長岡更紗
恋愛
庶民聖女の私をいじめてくる、貴族聖女のニコレット。 王子の婚約者を決める舞踏会に出ると、 「卑しい庶民聖女ね。王子妃になりたいがためにそのドレスも盗んできたそうじゃないの」 あることないこと言われて、我慢の限界! 絶対にあなたなんかに王子様は渡さない! これは一生懸命生きる人が報われ、悪さをする人は報いを受ける、勧善懲悪のシンデレラストーリー! *旧タイトルは『灰かぶり聖女は冷徹王子のお気に入り 〜自業自得って言葉、知ってますか? 私をいじめていたのは公爵令嬢、あなたですよ〜』です。 *小説家になろうでも掲載しています。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

石塔に幽閉って、私、石の聖女ですけど

ハツカ
恋愛
私はある日、王子から役立たずだからと、石塔に閉じ込められた。 でも私は石の聖女。 石でできた塔に閉じ込められても何も困らない。 幼馴染の従者も一緒だし。

婚約破棄された私は、処刑台へ送られるそうです

秋月乃衣
恋愛
ある日システィーナは婚約者であるイデオンの王子クロードから、王宮敷地内に存在する聖堂へと呼び出される。 そこで聖女への非道な行いを咎められ、婚約破棄を言い渡された挙句投獄されることとなる。 いわれの無い罪を否定する機会すら与えられず、寒く冷たい牢の中で断頭台に登るその時を待つシスティーナだったが── 他サイト様でも掲載しております。

あなたが婚約破棄したいと言うから、聖女を代替わりしたんですよ?思い通りにならなくて残念でしたね

相馬香子
恋愛
わたくし、シャーミィは婚約者である第一王子のラクンボ様に、婚約破棄を要求されました。 新たに公爵令嬢のロデクシーナ様を婚約者に迎えたいそうです。 あなたのことは大嫌いだから構いませんが、わたくしこの国の聖女ですよ?聖女は王族に嫁ぐというこの国の慣例があるので、婚約破棄をするには聖女の代替わりが必要ですが? は?もたもたせずにとっととやれと? ・・・もげろ!

処理中です...