不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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3.役に立ちたいんっす!

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「……」


 木の根元で膝を抱えて座りながら、足元に転がる石ころを恨みがましくえいっと蹴った。結局またボスの説教が始まってたくさん怒られた。仲間達ももう誰も助けてくれず、薄情な奴らだ。


「おい、いつまで拗ねてんだ」


「……拗ねてないっす」


 説教を終え、指示を出しに行っていたボスが俺の元に戻ってきた。


「見るからに拗ねてる奴が何言ってんだ。ほら機嫌なおせ」


「……ポロ……うゔ~~」


 頭撫でるのやめてほしいっす。なんか悲しくなってくるじゃないっすか~。


「泣くなって」


「だっ、だってお、俺も゛ボズのやぐに立ぢだがったんずっ」


 泣きながら訴えた。


 ボスは俺にとって命の恩人。ボスのお陰でこんな不幸体質を持つ俺でも優しい仲間達に恵まれ、楽しく毎日を過ごせているのだ。だから少しでもボスに恩を返したくて役に立ちたいと思うのに、俺にできることといえばさっきみたいにボスに石をぶつけたり、崖を崩してボス達を落とすことくらい。恩以外にも俺はかっこいいボスの役に立ちたいと思う気持ちがあるのだ。みんなみたいにかっこよく並び立ちたいのだ。なのに俺だけなんか違う。いつも邪魔ばかりしてしまうし、これで泣くなと言う方が無理がある。


「はぁぁ……あのな。そんな気張らなくていいっていつも言ってんだろ?」


「でもっでも゛ぉ~」


「でもじゃねぇよ。俺はお前が側にいるだけでいいって言ってんだろ?」


「ボズ……ズズ」


 鼻水を啜っているとボスが俺の隣に腰を下ろす。側にいるだけでいいと言いながら俺を置いていったくせに、とジトーッと恨みがましくボスを見た。そんな俺に、ボスはふっと笑って俺の顎をクイっと持ち上げる。


「……ボス、なんっすかこの手?」


「なんだと思う?」


「…………」


「……おい、ツキ。この手はなんだ?」


「ボス近いっす」


 徐々に顔の距離を詰めてくるボスの顔を、俺は両手で押しやった。だが、ボスも負けずに力を入れてくる。


「何抵抗してんだお前?」


「ボスが顔を近づけてくるからっす! 何でそんな近づけてくるんっすか!!」


 頭突きっすか! 頭突きするつもりっすか!!


「ああ? ここまで近づけたらやることは決まってんだろ?」


「なっ⁉︎」


 押しのけていた手をサッと取られたかと思うと甲に軽く唇を落とされた。そしてボスは色気を含ませた目で俺を見てくる。……カッと頬が熱くなった。


 なんっすか!? 頭突きじゃなくて噛む気っすか!? 舐めるんっすか!? ばっちぃっすよ!?


 また口が近づいてくる。


 やっぱり噛むんっすか!? 


「っおちょくるのやめて下さいっす!!


 抵抗しようにも力の差でボスに負ける。ボス! と、叫ぼうとしたところで……


「ボっ――」


「ボスー! ちょっとこっち来てもらっていいですかぁー!」


「!? くっ!! 離れてくださいっす!!!!」


 バキッゴッ

「ぐッ!?」


「あ」


 聞こえた仲間の声に渾身の力でボスを突き飛ばした瞬間、太い木の枝が落ちてきてボスに当たった。


 うわ~またいい音鳴ったっすね……これも痛いっすよ?


「っ~ツキ!! てめぇ何すんだよ!!」


「ええー!? やっぱり俺っすか!?」


「ボス! もういいから早く来てくださいよ!! んなとこでイチャつこうとするボスが悪いんですから!!」


「うっせぇ!!」


 コソコソ……

「ボスってなんか空気読めないよな?」


「な。何で今ここでなんだよ。俺らも見てんのにさ」


「ほらあれだよ。見せつけたいんだよ」


「嫌がられてんのに?笑」


「誰だ今笑った奴!?」


 コソコソと話す体をとっていながらも全くコソコソした声で話していない仲間達に向かって、ボスが叫び歩いていく。


 ふー……危なかったっす。


 額の汗を袖で拭い、あとをついて来るなと言われていないことをいいことに俺はボスのあとをトコトコとついて行った。


「……何だこれ?」


「?」


 ボスの後ろからひょっこりと覗くと、ボスの視線の先には人が一人入っているほどの膨らみと大きさのある布袋が転がっていた。だが、その布袋は所々赤黒く滲んでいて嫌な想像を掻き立てるものだった。


 中身を尋ねたボスに、仲間の一人が答える。


「一番前走ってた馬車の荷台の木箱の中に隠すように入ってたんだよ」


「へーそう。中身見たのか? 何で俺を呼んだんだよ?」


「え? ボスに開けてもらおうと思って見てないぜ?」


「は? なんで?」


「だってなんか怖いだろ?」


「「「「コクコク」」」」


 みんな恐る恐る袋から距離をとり、頷きながらボスを見た。


「……てめぇら」


 その様子にボスの額に青筋が浮かぶが、俺はうんうんと頷いた。


 そりゃそうっすよね~。みんな顔は強面とか凶暴というに相応しい連中ばっかっすけど心の優しい奴らばっかりっすからね。仕方がないっすよね。


 そんなみんなの懇願の視線に、ボスが頭を痛そうに片手で抱えるのを横目に見つつ、俺は袋に近づきその辺の枝を拾ってつんつん突いてみた。


 これ何が入ってるんすかね~? まさか本当に人だったりするんっすかね? でもそう言う時に限って違ってたりするもんっすしまさかっすよねー。……ん?


「ギャっ!?」


「っツキ? お前そこで何してんだ。そんなのに簡単に近づくなっ」


「ボ、ボス、こ、これゴソッってなんか動いたっす!」


 まさかのこれ本当に人っすか!? 突いてごめんなさいっす!!


 驚いた拍子に抜けた腰で、何とかボスの元に這って行き足に引っ付いた。


「本当か?」


「コクコクコク!!」


 高速で頷く俺にボスは眉を顰め、俺を後ろに隠すと警戒しつつ袋に近づいた。俺も腰が抜けながらもなんとかついていき、ボスが剣で袋を破いていくのを見ていると……


「これは……」


「? ……男の子っすか?」


 袋からめちゃくちゃ可愛い男の子が出てきた。

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