4 / 150
3.役に立ちたいんっす!
しおりを挟む「……」
木の根元で膝を抱えて座りながら、足元に転がる石ころを恨みがましくえいっと蹴った。結局またボスの説教が始まってたくさん怒られた。仲間達ももう誰も助けてくれず、薄情な奴らだ。
「おい、いつまで拗ねてんだ」
「……拗ねてないっす」
説教を終え、指示を出しに行っていたボスが俺の元に戻ってきた。
「見るからに拗ねてる奴が何言ってんだ。ほら機嫌なおせ」
「……ポロ……うゔ~~」
頭撫でるのやめてほしいっす。なんか悲しくなってくるじゃないっすか~。
「泣くなって」
「だっ、だってお、俺も゛ボズのやぐに立ぢだがったんずっ」
泣きながら訴えた。
ボスは俺にとって命の恩人。ボスのお陰でこんな不幸体質を持つ俺でも優しい仲間達に恵まれ、楽しく毎日を過ごせているのだ。だから少しでもボスに恩を返したくて役に立ちたいと思うのに、俺にできることといえばさっきみたいにボスに石をぶつけたり、崖を崩してボス達を落とすことくらい。恩以外にも俺はかっこいいボスの役に立ちたいと思う気持ちがあるのだ。みんなみたいにかっこよく並び立ちたいのだ。なのに俺だけなんか違う。いつも邪魔ばかりしてしまうし、これで泣くなと言う方が無理がある。
「はぁぁ……あのな。そんな気張らなくていいっていつも言ってんだろ?」
「でもっでも゛ぉ~」
「でもじゃねぇよ。俺はお前が側にいるだけでいいって言ってんだろ?」
「ボズ……ズズ」
鼻水を啜っているとボスが俺の隣に腰を下ろす。側にいるだけでいいと言いながら俺を置いていったくせに、とジトーッと恨みがましくボスを見た。そんな俺に、ボスはふっと笑って俺の顎をクイっと持ち上げる。
「……ボス、なんっすかこの手?」
「なんだと思う?」
「…………」
「……おい、ツキ。この手はなんだ?」
「ボス近いっす」
徐々に顔の距離を詰めてくるボスの顔を、俺は両手で押しやった。だが、ボスも負けずに力を入れてくる。
「何抵抗してんだお前?」
「ボスが顔を近づけてくるからっす! 何でそんな近づけてくるんっすか!!」
頭突きっすか! 頭突きするつもりっすか!!
「ああ? ここまで近づけたらやることは決まってんだろ?」
「なっ⁉︎」
押しのけていた手をサッと取られたかと思うと甲に軽く唇を落とされた。そしてボスは色気を含ませた目で俺を見てくる。……カッと頬が熱くなった。
なんっすか!? 頭突きじゃなくて噛む気っすか!? 舐めるんっすか!? ばっちぃっすよ!?
また口が近づいてくる。
やっぱり噛むんっすか!?
「っおちょくるのやめて下さいっす!!
抵抗しようにも力の差でボスに負ける。ボス! と、叫ぼうとしたところで……
「ボっ――」
「ボスー! ちょっとこっち来てもらっていいですかぁー!」
「!? くっ!! 離れてくださいっす!!!!」
バキッゴッ
「ぐッ!?」
「あ」
聞こえた仲間の声に渾身の力でボスを突き飛ばした瞬間、太い木の枝が落ちてきてボスに当たった。
うわ~またいい音鳴ったっすね……これも痛いっすよ?
「っ~ツキ!! てめぇ何すんだよ!!」
「ええー!? やっぱり俺っすか!?」
「ボス! もういいから早く来てくださいよ!! んなとこでイチャつこうとするボスが悪いんですから!!」
「うっせぇ!!」
コソコソ……
「ボスってなんか空気読めないよな?」
「な。何で今ここでなんだよ。俺らも見てんのにさ」
「ほらあれだよ。見せつけたいんだよ」
「嫌がられてんのに?笑」
「誰だ今笑った奴!?」
コソコソと話す体をとっていながらも全くコソコソした声で話していない仲間達に向かって、ボスが叫び歩いていく。
ふー……危なかったっす。
額の汗を袖で拭い、あとをついて来るなと言われていないことをいいことに俺はボスのあとをトコトコとついて行った。
「……何だこれ?」
「?」
ボスの後ろからひょっこりと覗くと、ボスの視線の先には人が一人入っているほどの膨らみと大きさのある布袋が転がっていた。だが、その布袋は所々赤黒く滲んでいて嫌な想像を掻き立てるものだった。
中身を尋ねたボスに、仲間の一人が答える。
「一番前走ってた馬車の荷台の木箱の中に隠すように入ってたんだよ」
「へーそう。中身見たのか? 何で俺を呼んだんだよ?」
「え? ボスに開けてもらおうと思って見てないぜ?」
「は? なんで?」
「だってなんか怖いだろ?」
「「「「コクコク」」」」
みんな恐る恐る袋から距離をとり、頷きながらボスを見た。
「……てめぇら」
その様子にボスの額に青筋が浮かぶが、俺はうんうんと頷いた。
そりゃそうっすよね~。みんな顔は強面とか凶暴というに相応しい連中ばっかっすけど心の優しい奴らばっかりっすからね。仕方がないっすよね。
そんなみんなの懇願の視線に、ボスが頭を痛そうに片手で抱えるのを横目に見つつ、俺は袋に近づきその辺の枝を拾ってつんつん突いてみた。
これ何が入ってるんすかね~? まさか本当に人だったりするんっすかね? でもそう言う時に限って違ってたりするもんっすしまさかっすよねー。……ん?
「ギャっ!?」
「っツキ? お前そこで何してんだ。そんなのに簡単に近づくなっ」
「ボ、ボス、こ、これゴソッってなんか動いたっす!」
まさかのこれ本当に人っすか!? 突いてごめんなさいっす!!
驚いた拍子に抜けた腰で、何とかボスの元に這って行き足に引っ付いた。
「本当か?」
「コクコクコク!!」
高速で頷く俺にボスは眉を顰め、俺を後ろに隠すと警戒しつつ袋に近づいた。俺も腰が抜けながらもなんとかついていき、ボスが剣で袋を破いていくのを見ていると……
「これは……」
「? ……男の子っすか?」
袋からめちゃくちゃ可愛い男の子が出てきた。
195
あなたにおすすめの小説
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる