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21.嫌な男
しおりを挟むもうすっごく嫌なものを見た。今の俺は、声や態度や表情でも「げッ!」という言葉を表現し、前面に押し出しているだろう。
……流石ボスっすね。嫌な予感当たったっすよ。
そんな全身で拒絶を示しているのに目の前の男は感激! というように手を前で組み、バッと広げてこちらに近づいて来た。
「ツキさん会いたかったですよ!」
「ひっ! ち、近寄るなっす!」
俺は慌ててソファから立ち上がりフレイ君の後ろに隠れようとした。だが、こんな変態を前にフレイ君を矢面には立たせられない、というかフレイ君の先輩として……お兄ちゃんとしてそんな情けないことは出来ない! とすんでのところで思い止まり、逆にフレイ君を隠すように前に立った。……もう一つ、フレイ君とこいつを合わせるわけにはいかない理由も思い出したからだ。
苦手な相手だから、ちょっと腰が引けてしまっているが、男は気にした素振りも見せずに俺の手を両手でヒシっ! と握ってきた。しかも――
「もう逃げようとしないで下さいよツキさん」
「ひぃ~!」
触られたっす~!!ばっちいっす!! ……って!
「いだだだだだだだっ!! 刺さってるっす!!」
思いっきり怪我に爪を刺さしてきた。
もう! だからこいつ嫌なんっすよ!!
……この男、名をバーカルと言ってアクル商会という店を運営している男だ。見た目は二十代半のまぁまぁ整っている容姿をしている、頭のてっぺんが焦茶で下に行くほど黄色い髪のショート髪の男。話し方は明るいが、目敏くどこかで引っ掻いたのかぶつけたのかした俺の手の甲にある傷にわざと爪を立ててきて、それに痛がる俺を見てうっとりとするような酷い男でもある。
ボスが言ってたっす。こいつは嗜虐趣味を持つ、人を虐めて楽しむような最低な野郎だっすって!
「あぁ! すみません! ツキさんに会えた感激のあまり力みすぎていたようですね」
バーカルはそう言うものの握っている手は離さず、スリスリと俺の手の甲を撫でてくる。
ひぃ~!!! 撫でられたっす~。ばっちぃっすー!!
体中が一気に鳥肌立った。バーカルの手から逃げようと一生懸命自分の手を引っ張ってみるも予想以上に力強く握られているため全然抜けない。というか爪の次は握る握力が強くなってきた。
「ッいだだだだだ痛いっす!! まだ力んでるっすよ!? いい加減離せっす!!」
「ええ~だって離したらツキさん逃げちゃうじゃないですか。そんなの僕悲しいですし……」
「~~」
困ったというような顔をしながらも目の奥は笑っている。こいつは人の嫌がる姿を見るのも大好きな変態なのだ。
「っいいから離っ――」
「っあの! 離してあげて下さい! ツキさん嫌がってるじゃないですか!」
「うわっと……君は……」
「フレイ君!」
なんと、フレイ君が俺を助けにバーカルとの間に入って来てくれた。そのお陰でやっと俺の手からバーカルの手が離れる。キッとバーカルを睨むフレイ君は可愛いのにかっこいい。だけどフレイ君のフードが外れてしまっている。その姿をバーカルがバッチリ見ている。
……っあ~どうしようっす! 売り飛ばされかけた本人と売り飛ばそうと(たぶん)してた本人鉢合わせしちゃったっすよっ。
「……!」
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