不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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47.嫌っすよ?  

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 そーっと後ろを振り向けば、弧を描いた口元に笑っていない目、その額には青筋立てたボスがいた。


「菓子広げて、飲みもん用意して、しかもんな所にフレイ連れ込んで何してんだお前?」


「…………」


 そーっとボスからお菓子へと視線を戻し、広げたお菓子を毛布の中へと隠した。そして、何食わぬ顔で振り返りボスを見上げる。


「どうしたんっすかボス? 何かフレイ君に用事っすか?」


「そう見えるか?」


「俺達今から寝るんっすから邪魔しないで下さいっす。おやすみっすフレイ君」


「え? お、おやすみなさい?」


 ペコリと座ったままお辞儀をし、いそいそと俺は布団の中に入って目を瞑った。


「………………何遊んでんだこのあほ」


 ガッ

「いだっ!?」


 横顔を踏まれてギリギリと力が込められる。


 うわ~ん!! このノリで逃げられないっすか? やっぱり無理っすか? ごめんなさいっす!!


 シクシクと泣きながら起き上がり、枕を片手に座る。来るとは思っていたが予想以上に来るのが早く怖かった。それでも文句は言いたい。


「ボス~……俺達まだ乾杯しかしてないんっすよ? 乾杯したのに飲んでないんっすよ? 来るの早過ぎっすよぉ……」


 せめて乾杯して、ジュース飲んでお菓子を食べて、寝てから来てほしかったっす……。それでそのまま眠らせてくれたら……


「なぁなぁで全部許してもらおうとしてんじゃねぇよ」


 またボスに心を読まれ睨まれてしまった。そんなボスに不貞腐れる。


「だってボス、フレイ君疲れてるんっすよ? あんな筋肉ムキムキ達が詰まった熱気放つ部屋でゆっくり眠れるわけないじゃないっすか。今日くらいいいじゃないっすか……」


「…………ったく。寝る前に菓子を食うなっつっただろ?」


「……。スルーっすか」


 ボスは無言で毛布に隠したお菓子を回収していく。


「菓子は没収な」


「うぅ……」


 ボス酷いっす……。俺のお菓子ちゃん達さらばっす。絶対後で取り返すっすからね。


「ほら、フレイ。お前もさっさと部屋に戻る準備を――」


「ダメっすよ!」


 ボスの言葉をピシャリと遮った。


 ボス、俺のこと無視してフレイ君を促さないでほしいっす! なぁなぁではダメっすよ!


「フレイ君部屋戻るの嫌っすよね!? ここで寝るっすよね!? 寝たいっすよね!?」


「え゛? ああ、そうですね」


 ……ん? なんかこっちに振るなよ的な「え゛」だったっすね? でも、そうだっすって!


「じゃあボスおやすみっす!」


「おやすみじゃねぇよ。…………お前、俺以外の男と一緒に寝るつもりか?」


「? そんなのよくしてるっすよ?」


 よくモー達と一緒に寝たり、全員遊戯室に集まって雑魚寝してみたり色々してるっすけど? 何言ってんるんっすか?


 じーっとボスと睨み合う。


「ツキ」


「嫌っすよ?」


「………。……わかった。じゃあフレイはここで寝ろ」


「え? いいんですか?」


「やったっすねフレイ君!」


「その代わりツキ。お前は俺の部屋で寝ろ」


「え? 嫌っすよ」


 なんっすかその交換条件。なんでフレイ君がここで俺がボスの部屋で寝る話になってるんっすか? 


「…………」


「ぶふッ!」


「「「「「ぶッ!!」」」」」


「?」


 吹き出す声に横を見てみると、フレイ君がそっぽを向き震えていた。だが、他にも声がしたぞと、もう一方の方を見てみると、ボスの後ろ、扉の影からこちらを窺うようにひょっこりとレト兄とモージーズー達が覗いていた。


「ぶッふ! 即答っ。ボス可哀想にっ」


「や、やべぇ俺憐れすぎてボス見れねぇよ!」


「誰か! 今のツキの返しにお菓子をやってくれ!」


「ぐッぶッぶふふッ! 腹いてぇ!!」


「…………」


「「「「いでっ!?」」」」


「あー! 俺のお菓子投げないで下さいっすよ!!」


「っうっせぇツキ!! お前、んなにも俺と一緒に寝てぇんなら一緒に寝てやるからさっさとこっちにこい!」


「そんな話してないっすよね!?」


 俺は寝ないって言ったんっすよ?


 ボスの耳は何を聞き取ったのだろうと不思議に首を傾げた。


「ぶっ……ふ……ボス、別にいいだろ? フレイ君も今日は頑張ってくれたんだし、ツキも一緒がいいっていうんならこれくらい許してあげれば。俺以外の男と寝る気かって十四歳の子に嫉妬って、もう……っ」


「ぶはッ! ちょっや、やめてやれよレト! お、俺はもう憐れすぎて言葉がでねぇよっ」


「ツキ! もっとボスを構ってやれよ!!」


「ボスはもっと広い心持てよ! そんなんだからここアジトにいる連中から(色んな意味で)可哀想って言われんだぜ!」


「黙れ外野共!! ほら行くぞツキ!」


「えぇ? だからいいっすよ俺。フレイ君とダメって言うんなら俺モー達のとこ行って寝るっすし」


「うっせぇ! いいから行くんだよ!!」


「え~」


 座って枕を抱きしめたまま動かない俺に、ボスは痺れを切らしたように俺の首根っこを引っ掴んだ。そして、そのままズルズルと部屋の外へと連れ出されてしまう。


「ムー……フレイ君。俺はどうやらここまでのようっす。お疲れ様会はまた明日やろうっすね。おやすみっす」


「ふっはい、おやすみなさい」


 俺の部屋から覗くフレイ君に引き摺られながら小さく手を振り、無念……とガクリと身体の力を抜いた。


「フレイ」


 急にピタリとボスが足を止める。


「……今日は助かった。ゆっくり休め」


 そしてまた歩き出す。


「え? あ、はい」


 フレイ君が目をまん丸くする。ボスを見上げればムスッとした顔をしていた。


 ぷぷぷぷぷっ! ボス、珍しくフレイ君に素直になったっすね。


「…………」


 ガッ

「痛!? なんで殴るんっすか!」


「ムカつく顔してたからだ」


「……」


 ……顔してたって失礼っすね。笑ってただけっすのに。


 ジトーとボスを見上げるも、ずんずん廊下を歩いていくボスに、俺は遠ざかるレト兄達に顔を戻し手を振った。


「みんなおやすみっす~」


「「「「おやすみ~」」」」




「…………って、なんか普通に返しちまったけどボスの奴、ツキ連れてっいっちまったな」


「あ、憐れすぎてて普通に見送っちまったわ」


「え? おいどうするっ? ボス信じて許すか? 許さねぇか!? レト!」


「んー……悩むところだな。ボスの奴手を出しそうだけどいつもの調子でいけばまぁ、大丈夫な気もするけどなぁ。前回は大丈夫だったし今回も……んーいやでもなぁ……なんかなぁ……ボスも可哀想だしなぁ……どうする?」


「よし! んじゃあ会議しようぜ! 今すぐに暇な奴ら全員遊戯室に集めろ! ツキをボスの部屋に泊まらせてもいいか審議しようぜ!」


「「「そうだな!」」」


 んん?


 何やらモー達が張り切ってどこかに向かい出した。遊戯室? 全員?


「……ボス……なんかあっち楽しそうな話してる気がするっす。俺もあっちに……」


「ダメに決まってんだろ。さっさと部屋行って寝てそのままあいつらをやり過ごすぞ」


「……」


 ……ボス、それさっき俺がしようとしてたこととほぼ一緒じゃないっすか? 


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