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48.どう説得するか
俺の部屋より広いボスの部屋。そんな部屋で俺はボスの予備のお布団を貸してもらい、床に広げて寝る準備を整える。あとは枕を添えれば完成だ。でも……
……む~ボスの部屋でのお泊まり久しぶりっすね。ついここまで来ちゃったっすけど大丈夫っすかね……。
持って来た枕を持ち睨みつけた。
……まぁ、この間は大丈夫だったっすもんね。
「はぁぁぁ……ツキお前なぁ」
「?」
聞こえた溜息に枕を睨むのをやめ、ボスを見上げた。ボスはベッドに座って呆れたように片足を組み俺を見下ろしていた。
「どうしたんっすか?」
「…………お前はそうなんで警戒心なくフレイを部屋に連れ込むんだよ」
「だってお疲れ様会したかったんっすよ。ボスまだフレイ君のこと疑ってるんっすか?」
あれだけ散々フレイ君を餌にしたのにっすか?
「当たり前だろ。フレイは得体の知れねぇ存在なんだぞ。お前もそれくらいわかってんだろ?」
「存在って……でもフレイ君、晴天族だって言ってたっすよ?」
「だからんな種族聞いたことがねぇって」
「往生際が悪いっすね~」
「……」
天候を操るところをボスも見たのにと思って言えば、ボスがイラッとした顔をした。それにヤバいヤバいとボスから視線を逸らし、俺は持っていた枕をポスッと布団の上へ置いた。
「……晴天族についてはあれからレーラにも力を貸りて調べてみた。けど、んな種族どこにも存在しねぇんだよ」
「未知の種族っすね!」
心躍るっすね! 大発見っすね!
「…………。未知っつぅんならなんで街でお前らを追いかけた連中も、今日捕まえた奴等も全員フレイの種族を知ってんだよ」
「それはフレイ君を攫った連中の仲間だからっすよね?」
ボスそう言ってたっすよ?
「違げぇよ。そもそもその言葉をあいつらが知ってること自体がおかしいって話だ。……フレイの見た目は完璧人族と一緒だ。なのにどの文献にも載ってねぇ、誰も知らねぇような晴天族とか言う名前を知ってんのはフレイがそいつらに言ったからじゃねぇのか? ……端的に言えば、フレイはわざと自分の価値を示して奴隷商の人間に捕まったんじゃねぇのか?」
「え!? なんでっすか!? そんなことする意味あるっすか?」
わざと捕まった? フレイ君がどうして……。
「目的はわからねぇが……お前が俺に街に行くことを喋れなかったのもフレイがなんかしたからだろ」
「……そうなんっすかね?」
「そうとしか考えられねぇだろうが」
「……」
ボスの言葉に目を落とした。ボスには謹慎前の療養中に街に行った経緯から何やらを全て話していた。「街に行く」その言葉を話そうとすると声が出なくなるなんて、そんな話信じてもらえるかはわからなかったが、ボスはすぐに信じてくれてフレイ君を呼び出し尋ねていた。
「……でもフレイ君何もしてないって、知らないって言ってたっすよ?」
「ありゃ嘘だな。絶対なんかした。一瞬顔が引き攣ってたし」
「……そうっすかぁ」
フレイ君が俺に……
「けどそこからは全く顔に出さずに知らぬ存ぜぬだったからな」
ボスが忌々しそうに言葉を吐き出す。
「本当なら直ぐにでもあのガキをここから放り出したいくらいだ」
「……散々フレイ君扱き使ってたくせに鬼っすね……」
「あ゛あ?」
「……」
スッとボスから目を逸らす。
本当のことっすのに凄むのやめてほしいっす。
……でも、街のことがあって、ボスがフレイ君をここから追い出してしまうかもしれないとは薄々思っていた。ボスはフレイ君のことを初めから警戒し、追い出したがっていたし、ボスの言う通りフレイ君には謎が多すぎる。俺が陥ったあの現象、ボスに何も言えず、フレイ君の言う通りにしなければと思ったあの感情。あれは催眠か、人を操る力かそんな類いのものをフレイ君が持っているからだったのかもしれない。
ボスの勘はよく当たる。だからこそ、ボスがフレイ君に向ける疑いの目に仲間達が和気藹々としているように見えてずっとフレイ君を見張り、警戒していることを知っている。最近はフレイ君の頑張りでここに馴染んできているように見え、警戒の糸も少し弛みかけていたが、そんな中でフレイ君の怪しさを増すような出来事が起こってしまったのだ。警戒の念が、それ以上のフレイ君を危険視する思いが強まり、追い出すという結論に至ってしまっても無理はないのかもしれない。だけど……
「……フレイ君いい子っすよ?」
そっとボスを窺いながら言う。
フレイ君は確かに秘密が多く、何も言わないかもしれない。だけど街でのことは本当に反省していて、ボス達の言うことをずっとよく聞いて頑張っていた。今日だって、怖い奴等の前に何度もボスに放り出されて、転移でアジトやあっちやこっちや働かされても文句も「嫌」の一言すら言わずに飛び回ってくれた。ボスもそんなフレイ君の頑張りと姿を見て、大丈夫だと思ったからこそフレイ君が一人で眠ることを許したのではないのだろうか?
……じっと見上げ続けるもボスは何も言わない。難しそうに眉間に皺を寄せ、俺を見下ろすだけ。
「……フレイ君とお別れっすか?」
頭の中ではすでにどうやってボスを説得させるかでいっぱいだった。
フレイ君、俺にちゃんと謝ってくれたっすもん。
本当にごめんなさいと。あの言葉に嘘はないはずだ。たまに黒いオーラを発しぶつぶつと何やら呟いているが、フレイ君はいい子だ。街に出た時のフレイ君だって純粋に街を楽しんでいただけで悪いことを企んでるようには見えなか……
……ん? あれっす? そう言えば結局お姉さんへの手紙ってどうなったんっすかね?
「……」
……うん。まぁそんなこともあるっすよね。
ちょっと引っかかるところはあれど、全体を通して考えると俺の中ではやはりフレイ君は悪い子ではないとの結論に至り、追い出すことには反対だ。あとはどうボスを説得するかだが……
「……いや、追い出さねぇよ」
「え?」
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