不幸体質っすけど、大好きなボス達とずっと一緒にいられるよう頑張るっす!

タッター

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49.わかってるじゃないっすか!  

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 『追い出さねぇよ』


 長い沈黙のあと、予想外のボスからの言葉にパッとボスを見上げれば、ボスは苦虫を噛み潰したような顔をしていた。


「今日のあいつを見ただろ? ……転移が厄介するぎる。街に行くのも帰ってくんのも自由に出来て、場所すら知らねぇくせにここと地図で示せば簡単に転移しやがった。それは追い出してもいつでもここに帰ってこられるってことだ。……転移を何回使わせても人を増やしても疲れた様子も全く見せねぇし、どれだけの距離を、どれだけの人数を連れて何回使えるのかも不明のなか、ツキを操ったこともそうだがわからねぇことだらけのままあいつを外に放り出すのは危険すぎる。なにされるかわかったもんじゃねぇ。なら、内に置いて見張りをつけてる方が何倍も安心できる」


「そ、そうっすね!」


 もしかして、今日ボスがフレイ君を扱き使っていたのはフレイ君の転移がどこまで使えるのかを調べるためでもあったのか。


 そうっすよそうっすよ! フレイ君を追い出すより側に置いてた方がいいっすよ!


 ちょっとテンションが浮上した。そんな俺にボスは呆れた目を向け、息を吐き出すよう軽く肩をすくめた。


「……それにまぁ、得体の知れない奴ではあるがたぶん俺達の敵ではねぇだろうしな。あいつからは俺達に対する敵意を感じねぇ。敵意ってよりなんかあいつの場合愉快犯っぽい感じがする」


「愉快犯っすか?」


 愉快犯……愉快犯……ん? 愉快犯??? フレイ君がっすか??? あんな純真なぽわぽわんってした子っすのに???


「ああ。あと……」


「? あと?」


 頭の中でフレイ君が愉快に笑っているのを想像しているとボスが言い淀んだ。


 そんな途中で止められると気になるんすけど?


 じっとボスを見ていれば、ボスは仕方なさそうに話しだす。


「……お前らが街に行った日、お前には簡単にフレイが怪我したお前を転移で連れて帰ってきたとしか言ってなかったけど……フレイの奴、今まで見たことないくらい焦って『ツキさんは大丈夫か』っつって泣きながらずっとお前にひっついてたからな」


「え?」


「まぁ、それには少しばかりなーんか裏がありそうな気はしたけど……反省は十分したみてぇだし、罰で与えた雑用(という名の酷使)も今日の餌係も真面目にこなしてたからな」


「そ、そうだったんっすね!」


 気持ちがグンッ! と上昇した。


「くぅっ~~!」


 フレイ君!! そんなに俺を心配してくれてたんっすね! それにボス! なぁんだちゃんとわかってるじゃないっすか! いや、わかってたっす、わかってたっすよ俺は!! じゃないとフレイ君に一人寝許可したり「頑張った」って褒めたりしないっすもんね! ほら、俺の思った通りだったっす! もうっボスは! フレイ君のこと怪しいとか言いつつ敵じゃないってもうちょっとフレイ君のこと認めてるじゃないっすか! なのに追い出しそうな雰囲気見せるなんて意地悪っすよね! 


 ボスのこの感じ、だいぶフレイ君に対し敵意を緩めた感じだ。不審者に対する警戒心はまだ強いようだが街での件もあった上でのこれは素晴らしいの一言だ。フレイ君がボスと仲良くなれるための大きな一歩とも言える。だが、またボスがフレイ君を追い出そうとすることがないようにも、もう一押しここで押しておこう。


「いや~そうっすよね! フレイ君本当にいい子っすよね! ボスの言った通りすっごく真面目な子っすし、すっごく反省してたっすもん! さっきも俺謝られたんっすよ? 今日だって、魔突兎マトツウに突進された時フレイ君俺の服引っ張って助けてくれたっすし、いっつも魔蚯蚓マミミズに土の中に引き摺り込まれそうになっても泥だらけになりながらフレイ君引っ張って俺を助けてくれるっす! 他にも急に突風が吹いて小枝の束が矢みたいに飛んできても、さぁ掃除しようって箒を構えた瞬間同時に持ち手が折れても、窓から入ってくる鳥軍団に追いかけ回されてもフレイ君、俺といて全然文句言わないっすし怖がらないっすし、めちゃくちゃフォローしてくれるいい子なんっすよ! 俺、フレイ君のおかげですっごく毎日助かってるんっすよ!!」


 ここぞとばかりにフレイ君の有能さや素晴らしさ、またどれだけ助かっているのかをアピールした。思い出しながら話していれば自然と興奮したような話し方になってしまう。でもこれは仕方のないことだと思う。だって初めのうちはみんな俺のことを怖がるものなのだ(ボスだけは違ったがそれは例外)。


 そりゃあただ歩いてるだけで物が飛んできたり、使っていた道具が壊れたり何かに襲われたりと大なり小なりいつも不幸に見舞われていれば仕方のないことだ。


 そう仕方のないことなのだが、怖がられたり泣かれたりするのはわかっていても結構辛く悲しいものだ。でも、フレイ君は最初からこんな俺を受け入れてくれて、多少顔を引き攣らせることはあれど俺から離れようとしたり怖がったりしない。こんな俺と仲良く、一緒にいてくれる子なのだ!


「あとはっすねー!」


 俺、フレイ君大好きなんっす!


 だから、ボスにフレイ君の素晴らしさを伝える。フレイ君と離れないためにも。でも説明すればするほどボスの目が据わっていく。


「……もういい。もうわかったから喋るな」


「えぇ? まだまだあるっすのに?」


「もういいっつってんだろ」


 ボスはそう言うと、何かを堪えるよう重たい溜息を吐きだす。俺は俺で話してる途中で止められて、しかもボスがどことなく不機嫌になっていてちょっと不満だ。


 なんでそんな不機嫌そうな顔するんっすかね?


 「むぅ~」と不貞腐れているとボスは胡座をかき、その足に腕を乗せた。そして、一度目を閉じ次に開いた時には……


「……っ」


 その金の瞳の奥に、俺を見極めるかのような鋭い光を宿していた。



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