70 / 150
69.なんなんっすかね?
しおりを挟む「――もう! 最近ボスおかしいっすよね!? ベタベタしてきすぎっすよ! そう思わないっすかフレイ君!!」
浴場で泥を流し、脱衣所で着替え終えたところでフレイ君にそう問いかけた。
「おかしいと言うよりなんだかおっさんっぽいですよね」
「おっさん?」
それは老けたということか? ボスはまだピチピチの十九歳、もうすぐ二十歳になって歳を重ねることになるとはいえ特に老けたようには思わない。
「別に見た目の話じゃないですよ?」
「?」
じゃあどう言う意味? と首を傾げた。最近のボスはすぐに距離を詰めてきたり、急に抱きついてきたり、耳元で囁いてきたり、見つめてきたりと忙しい。
「…………」
……いや最後の見つめてくるのはたまにあったっすね。
最後だけじゃない。他のも前からちょくちょくとあった。あったがなんか最近のは違うのだ。最近のはこう……なんだか妖しい感じがするのだ。色気が混じったような喋り方をしたり、触って来た時に変な触り方をしたり……なんかゾクゾクするような恥ずかしいことばかりしてくるようになってしまった。
「…………」
……あれ? なんかこれもたまにあったような気がするっすね。
だが、その頻度が確実に多くなった。嫌だと言っているのにしつこい。しまいには「慣れろ」と言って決して自分の行動を改めようとはしない。
「……俺が意識しすぎなんっすかね?」
溜息を吐いた。告白されて、振って、それで終わりだといつも通りに振る舞っているつもりが、無意識にボスを意識してしまっているからこそいつもと変わらないボスを変だと、ボスの一挙一動を過剰に反応してしまっているのだろうか?
「絶対違いますよ。ボスさん前よりツキさんにくっつくの酷くなってますもん」
「……やっぱりっすか?」
フレイ君もそう思うっすか……。
なら勘違いとかではないのか。
「はぁぁ……ほんとうになんなんっすかね……」
なんで急にああなっちゃったんっすかね……。
「ほんっと鬱陶しいですもんね。僕の目の前でしょっちゅうとさ」
「え?」
なんてっす?
「今度イーラさんとモー達に言っときます」
呆気に取られる俺にフレイ君はニッコリと笑う。
「……そうっすね」
流石フレイ君っす。言えばボスが言うことを聞くであろう人物達の名前が出てきたっす。
よく見ているなぁと感心しつつ、お昼ご飯にしようと脱衣所から外に出れば、まさかのボスに待ち伏せされていた。
「よし捕まえた」
「ぎゃっ!?」
「今から飯だろ? 一緒に行くぞ~」
「え!?!???」
宙に浮いた体に理解が追いつかないままボスに横抱きに抱えられた状態で運ばれる。
「お、下ろしてっす!」
「え? 落とせって?」
「ひっ!?」
ボスが俺を持つ手を緩めた。落ちそうになる体に俺は慌ててボスにしがみついた。
「そのままくっついとけよ」
「……」
これはマジで落とされるっす。お尻痛くなるの嫌っすよ……。
シクシクと泣きながら上機嫌なボスに食堂まで運ばれる。くそぅ……、捕まってしまった……無念……。
ボソ
「……チッ……なんか腹立つなラックの顔。なんでこんなムカつくんだろ」
「ん? フレイ君何か言ったっすか?」
「え? 何も?」
「文句があんなら直接言えよ? フレイ」
「…………」
73
あなたにおすすめの小説
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
転生DKは、オーガさんのお気に入り~姉の婚約者に嫁ぐことになったんだが、こんなに溺愛されるとは聞いてない!~
トモモト ヨシユキ
BL
魔物の国との和議の証に結ばれた公爵家同士の婚約。だが、婚約することになった姉が拒んだため6男のシャル(俺)が代わりに婚約することになった。
突然、オーガ(鬼)の嫁になることがきまった俺は、ショックで前世を思い出す。
有名進学校に通うDKだった俺は、前世の知識と根性で自分の身を守るための剣と魔法の鍛練を始める。
約束の10年後。
俺は、人類最強の魔法剣士になっていた。
どこからでもかかってこいや!
と思っていたら、婚約者のオーガ公爵は、全くの塩対応で。
そんなある日、魔王国のバーティーで絡んできた魔物を俺は、こてんぱんにのしてやったんだが、それ以来、旦那様の様子が変?
急に花とか贈ってきたり、デートに誘われたり。
慣れない溺愛にこっちまで調子が狂うし!
このまま、俺は、絆されてしまうのか!?
カイタ、エブリスタにも掲載しています。
聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています
八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。
そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。
秘匿された第十王子は悪態をつく
なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。
第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。
第十王子の姿を知る者はほとんどいない。
後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。
秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。
ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。
少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。
ノアが秘匿される理由。
十人の妃。
ユリウスを知る渡り人のマホ。
二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる